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「所詮、あんたなんて魔力ぼ……!」
「クレトン子爵令嬢!」
ヒロインが言いかけた言葉を遮るよう、私は声を荒げて名前を呼んだ。
誰が聞いているか分からないし、誰が通ってもおかしくない。そんな場所でルイスに対して何を言うつもりだったのか。
「少し戯れが過ぎるのではないですか?」
諫めるように声をかける。
自分が悪役令嬢になったかのような錯覚を起こすけれど、所詮私はモブでしかない。
きっと、私は大丈夫。
……大丈夫でないのは、ルイスなのだ。
「マリー!? 一体どうしたんだ?」
騒ぎの声が聞こえたのか、王太子殿下がサロンのある棟から足早にこちらへ向かってきた。
その後ろにはアールトン公爵令息とファミリア公爵令息も付き従っているのを見たヒロインは、にやりと不気味に口角を上げた。
「もうエンディングで良いわよね」
小さく発したヒロインの言葉に、私は目を見開いた。
「通常の逆ハーエンド位にはなるでしょ」
「何を言っているんだい? マリー」
側に寄って来た王太子殿下の問いかけに、マリーは瞳に涙を浮かべた。
一気に変わるその表情は、まるで舞台女優のように思えて、呆気に取られてしまう。
「この……この女が私に……っ」
「またお前か! セフィーリオ公爵令嬢!」
いきなり悲劇のヒロインと化し、私に冤罪を押し付けてくる事に、驚いた。
だって、エンディングって言ったよね? それなのに私を狙っている……?
わけがわからずに、ルイスの顔へと視線を向ければ、冷たく鋭い……視線だけで人を殺せるのではないかと思える表情をしていた。
ゾッとし、最悪の結末さえ思い起こされる。
魔力暴走を起こし、処刑されるルイス。
「私は何もしておりません!」
理由は分からないけれど、ヒロインの思い通りにさせてはいけないと、否定の言葉を投げる。
背筋を伸ばして、しっかりと目線を合わせて……。しかし、そんな私の様子を見たところで、王太子殿下の耳には全く入らないどころか、軽蔑した目が投げかけられた。
「っ!」
ビクリと背筋が震え、逃げるよう余計に背を反らせてしまった私に気が付いたルイスが、私に寄り添ってくれた。
それだけで心温かくなり、安堵の息を吐きそうになるけれど、今はこの状態を何とかしたい。
足を踏みしめ、一歩前に出て、ルイスを制する。ルイスが驚いていたけれど、このままヒロインの思う通りにさせてはいけない。
何を考えているのか分からないけれど、ルイスの魔力暴走を狙っているのだ。
「きゃあ! 怖いわ!」
たったそれだけの行動で、ヒロインは悲鳴を上げて王太子殿下の後ろへと隠れる。
「クレトン子爵令嬢!」
ヒロインが言いかけた言葉を遮るよう、私は声を荒げて名前を呼んだ。
誰が聞いているか分からないし、誰が通ってもおかしくない。そんな場所でルイスに対して何を言うつもりだったのか。
「少し戯れが過ぎるのではないですか?」
諫めるように声をかける。
自分が悪役令嬢になったかのような錯覚を起こすけれど、所詮私はモブでしかない。
きっと、私は大丈夫。
……大丈夫でないのは、ルイスなのだ。
「マリー!? 一体どうしたんだ?」
騒ぎの声が聞こえたのか、王太子殿下がサロンのある棟から足早にこちらへ向かってきた。
その後ろにはアールトン公爵令息とファミリア公爵令息も付き従っているのを見たヒロインは、にやりと不気味に口角を上げた。
「もうエンディングで良いわよね」
小さく発したヒロインの言葉に、私は目を見開いた。
「通常の逆ハーエンド位にはなるでしょ」
「何を言っているんだい? マリー」
側に寄って来た王太子殿下の問いかけに、マリーは瞳に涙を浮かべた。
一気に変わるその表情は、まるで舞台女優のように思えて、呆気に取られてしまう。
「この……この女が私に……っ」
「またお前か! セフィーリオ公爵令嬢!」
いきなり悲劇のヒロインと化し、私に冤罪を押し付けてくる事に、驚いた。
だって、エンディングって言ったよね? それなのに私を狙っている……?
わけがわからずに、ルイスの顔へと視線を向ければ、冷たく鋭い……視線だけで人を殺せるのではないかと思える表情をしていた。
ゾッとし、最悪の結末さえ思い起こされる。
魔力暴走を起こし、処刑されるルイス。
「私は何もしておりません!」
理由は分からないけれど、ヒロインの思い通りにさせてはいけないと、否定の言葉を投げる。
背筋を伸ばして、しっかりと目線を合わせて……。しかし、そんな私の様子を見たところで、王太子殿下の耳には全く入らないどころか、軽蔑した目が投げかけられた。
「っ!」
ビクリと背筋が震え、逃げるよう余計に背を反らせてしまった私に気が付いたルイスが、私に寄り添ってくれた。
それだけで心温かくなり、安堵の息を吐きそうになるけれど、今はこの状態を何とかしたい。
足を踏みしめ、一歩前に出て、ルイスを制する。ルイスが驚いていたけれど、このままヒロインの思う通りにさせてはいけない。
何を考えているのか分からないけれど、ルイスの魔力暴走を狙っているのだ。
「きゃあ! 怖いわ!」
たったそれだけの行動で、ヒロインは悲鳴を上げて王太子殿下の後ろへと隠れる。
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