【完結】私が奏でる不協和音

かずきりり

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「智ちゃんは、まだ何も戦ってないよね」

 心に更なる衝撃が走る。
 高校に行く事が全てではないし、親の庇護下に居る事もまた自分で選び取れば良いのかと。

 ――でも、私が本当にやりたい事は何なのだろうか。

 心が葛藤する。
 試したい、探したい。だけど親の庇護下を離れてしまう怖さもある。
 ちゃんと自立できるのだろうか。正社員でなくても大丈夫なのだろうか。
 ……明里さんはバイトだと言っていたから、それでも大丈夫なのだろうけれど、私は社会を知らなさすぎる。

「まぁ物は試し! 一回ここで歌ってみたら?」

 今までの話は終わり! と言わんばかりに明るい声を出した明里さんは、私のスマホにアプリをダウンロードするように勧めてくる。
 連絡先を交換してアプリの招待を受ければ、そこに表示されているのは「明音」という名前。

「……明音?」
「ハンドルネームみたいなもの! 私の歌ってみた活動での名前だよ」

 言って見せられた明里さんのスマホ画面には動画配信サイト。そこには明音という名前のチャンネルがあった。

「配信とかで少しずつでも稼げるようになってきたし、もっと有名になって歌一本で生計立ててやるんだから!」

 きらきらと輝くように話す明里さん。
 その姿は眩しすぎて……明確にある夢が羨ましくて。私もそうなりたいと願う程だ。
 ……親の引いたレールの上ではなく、自分で望み、楽しんで、掴み取る。

 ――好きな事でお金を稼げたら、どれだけ素敵な事だろう。

 心を病んでいく人や社畜、ブラックという会社形態を考えれば、この先に広がる未来なんて絶望しか描けない。
 彼氏いない歴年齢の私に結婚なんて夢もなければ、低賃金で共働き、挙句保育園不足のニュースを聞けば子どもが欲しいとも思えない。
 早期退職なんて言葉も良く聞くし、自給自足やIターンなんて言葉も聞けば、どれだけ社会に闇が広がっているのかとさえ思えるのだ。
 それに比べて……ただ好きな事を行うだけで自立した生活が出来る程に稼げるのならば……。
 心が挑戦を渇望するがまま、私はアプリの登録をしていけば、ある項目でふと手が止まった。

「名前……?」
「私の明音みたいなものだね~」

 名前……名前。
 自分で自分の名前を決めるのは、結構難しいというか気恥ずかしいものだなと思いながら、私は思案する。
 明里さんのように本名を少し変えるのも良いだろうけれど、智子なんて名前はなかなかいじりにくいものだ。

「所詮、ネットは嘘ばかりの世界だから難しく考えなくても」
「それだ……」
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