【完結】ネットゲームで知り合った配信者に恋をした

かずきりり

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「詩帆!」

 最寄り駅まで来てくれたシンと合流する。
 普段はメッセージでもハンドルネームでやり取りするけれど、たまに本名で呼び合ったりもしているのでスムーズだ。

「あ、慎司! ごめんね、こんな所まで迎えに来てもらって」

 皆が居るグループメッセージでは、昔に自撮りを送りあった事もある。そのお陰で、パッと見ただけで、お互い分かった。
 彫りの深い顔、がっしりした体躯にベリーショートの髪。身長は178cmで、ラフな格好に身を包んでいる。

「いや、危なっかしいから」
「水族館って、港のやつで良いんだよな?」
「そーそー! 大きいところ! そしてお刺身でも食べる?」
「いや、肉が良い」

 ゲームでのノリそのままに、現実でも同じようフランクにやり取りが出来た。

「じゃあ動物園の方が良いかな」
「おい、やめろ」

 そんなやり取りに、思わず吹き出してしまう。

「おーおー、笑え笑え」

 唇を尖らせて駅構内へ向かう慎司の後を追いかける。
 電車の中でも会話は止まる事なく、文字だけのやり取りと変わらず、楽しい時間が過ぎる。違う事と言えば、そこに表情や声色があるから、感情が伝わりやすい事だ。

「チケット買ってくるわ~」
「あ、私の分……」
「飯は詩帆のおごりな!」

 素っ気ない会話でも、文字だけよりも安心感がある。声や態度に、シンの優しさが滲み出ているようだ。
 まぁ、シン相手ならぶっきらぼうなだけだと分かっているから、今更だけれど。

「うわぁ~すっごい!」

 入れば、イルカやサメの大きな水槽がお出迎えしてくれている。
 水族館なんて、どれくらいぶりだろう。自分の年齢も忘れて、私はイルカの水槽へ駆け寄る。

「イルカショーあるって」
「え! 見たい!」
「じゃあ時間まで他回るか」

 期待で頬が緩んでしまえば、それを見てシンは吹き出した。思わず、ジロリと睨み上げて言う。

「なに?」
「子どもっぽいなと」
「同じ年ですー!」

 じゃれ合いながらも、次々と見て回る。
 魚のトンネルに熱帯魚。カワウソやアシカ、それにアザラシ。熱帯魚のコーナーまで見た所でイルカショーの時間が迫ってきて、戻ろうとした時にスマホの通知音が鳴った。
 私かと思ってスマホを取り出そうと鞄を開ければ、シンの方が先に取り出して画面を見ていた。シンの音だったのかと思えば、シンは少し眉間に皺を寄せている。

「あいつら……わざわざグループメッセージで……」

 首を傾げていれば、シンはその画面を見せてくれた。そこには四人で作ったグループメッセージの画面が映し出されている。
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