【完結】異世界へ五人の落ち人~聖女候補とされてしまいます~

かずきりり

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第一章

02.贈り人と言われたが

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 頬に走る痛みから、夢ではない事と、私は確かに先ほどまで理沙と一緒に居たのだと理解はする。
 理解はするけれど……ここはどこ?
 周囲を見渡せば、ふと近くに私と同じように戸惑っている人が四人居た。

「異世界からレキソングス国へようこそ。我は国王のアルフレッド・レキソルスという」

 金の短髪に碧眼、厳しい目つきに威圧感のある男性が言葉を放った。
 国王!?
 つまりは国のトップという事なのはわかるけれど、全くもって馴染みがない。
 というか、異世界とは?

「私は枢機卿のソウラと申します。いきなりの事で驚かれていらっしゃるでしょうが、皆さま方の生活は神殿の方で保証させて頂きますのでご安心下さい。」

 今度は肩まであるシルバーアッシュの髪をひとつに束ね、赤い瞳の穏やかな顔をした、白い神官のような服を着た人が声をかけてきた。
 またも馴染みのない言葉だ。
 宗教的なものという事だけは分かっているけれど、それがこの世界でどういった立ち位置にあるのか全くもって分からない。
 だって、異世界と言ったのだ。
 今まで持っていた常識や知識が通用するなんて思えない。

「衣食住にかかる費用は国が持つ。ただ……その贈り人としての力を国へ貢献してもらいたい。あとで護衛も付けよう」

 何か変な条件が付けられた。
 そしてまた新しい言葉が出て来た。
 てか護衛って何……。SPみたいなものを想像するけれど、そんなのは国の偉い人にだけだろう。一般市民であった私には映画の中でしか見た事のないような存在だ。
 もうお腹いっぱい……いや、脳がいっぱいだ。情報過多すぎる。
 だけれど周囲を囲っている人々は、わっと歓声の声を上げた。

「国の繁栄だ!」
「聖女様が誕生される!」
「安泰な国の世になるぞ!」

 国王に枢機卿とくれば、囲っている煌びやかな衣装を着ている群衆は、いわゆる貴族というものなのか。
 まさに見世物状態な現状に、頭が痛くなってきた。
 こんな風に晒される事なんて、たった16年しか生きていない小娘な私の経験にはない。というか、一生経験する事ではないのだろうか?
 思わず半歩後ずさった時、同じ年くらいで、襟足長めの金髪に碧眼をした綺麗な顔立ちの男性がこちらに向かってきた。

 「俺はレイモンド・レキソルス。王太子だ。良ければ名前を聞いても?」

 歩み寄るような言葉だが、とても上から目線だ。
 王太子という身分から考えれば当然なのかもしれない。
 名前を名乗るべきなのだろう。けれどどこか疑心暗鬼な自分が居る。
 どうしようかと思っていれば、誰かがスッと前へ出た。
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