【完結】異世界へ五人の落ち人~聖女候補とされてしまいます~

かずきりり

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第一章

08.帰れるのか

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「僕はウィル・ロステリア。ロステリア公爵家の四男で15歳! 一番年下同士だからと付けられたけれど、甘やかす気はないからね!」
「こら! ロステリア公爵令息!」
「僕はこれでも立派な騎士です。子どものお守をする為に居るわけではありません!」

 枢機卿のお叱りにもめげず、ふんっと鼻を鳴らすウィル。
 やはり年齢を考えてくれてはいるようだけれど、無くしたくない贈り人の護衛騎士だ。このウィルの実力もそれなりなのだろうとは思う。
 しかし……小学生相手に大人げないというか、希生は委縮してしまうのではと心配して視線を向けたが、希生はこちらの憶測とは反して堂々としていた。

「11歳、小6。小林希生。キィで良い。キラキラネームすぎて漢字嫌いなのって言っても日本人しか分からないだろうけれど」

 そう言い切ったキィは、溜息をつきながら生きる希望というなら希望で良かったのに、なんて呟いている。
 ……キラキラネームの基準はよく分からないけれど、本人がそう言うならそうなのだろう。

「そうか? まだ読める方だと思うけど」

 真が率直な意見を述べたが、キィはそれを睨みつけた。

「生きるって字が嫌なの! ナマって言って……あなたも生ごみとか言われてみる!?」
「それは……嫌だな」

 意外と……いや、かなり嫌なあだ名だ。
 真も少し引きつって謝罪の言葉を口にした。

「……無邪気で残酷……これだから子どもは……」
「漢字というのは異世界独特の文字ですね。こちらの世界ではありませんので」

 琴子の軽蔑した眼差しが気になったけれど、枢機卿がすぐにキィのフォローに入った。
 琴子は子どもが苦手、いや嫌いなのだろうか? 専業主婦というなら結婚していただろうし、29歳というなら子どもがいてもおかしくはないと思う。まぁ結婚年数しだいだとは思うけれど。

「俺はロラン・コントラー。コントラー公爵家の三男で22歳です」

 最後の一人が恵の方へ歩み寄って名乗る。
 青いショートの髪に緑の瞳をした大人しめの美形だ。186cmの身長に、それなりに鍛えられた体格をしている。

「……浦野恵、23歳OL。私に護衛騎士は要らない。今すぐ元の世界へ返して」

 食事を終えたのか、ナプキンで口を拭きながら恵は拒絶の言葉を口にした。
 恵はずっと帰る事を言い続けているし、ぶっちゃけ一番知りたい所といったらこれだろう。
 私も恵と一緒に枢機卿へと真剣な視線を向けるが、琴子やキィ、そして真はどうでも良さそうだ。
 ……帰りたくはないのだろうか。
 ふとした疑問が沸き起こる中、枢機卿も真剣な顔で私達に向き直った。
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