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第一章
26.さよなら恵
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つまり、恵に国を滅ぼせるだけの神力があるとしたら……使い方を間違えたら……危険でしかないのだ。
その思考に同意してしまい力を使った私達の中に、それだけの神力を持つ者が居ても……危険なのだ。
恵にそれを説明したところで言う事なんて聞かないのは、一緒に居た私達は分かっている……分かっているけれど。いきなり辺境へ送る必要なんてあるのか。
王都よりはマシだとでも言うのだろうか。
「あ!」
「あ」
話は終わったと言わんばかりに退室させられた私達は、旅行鞄のようなものを持った恵と鉢合わせた。
「恵、もう行くの?」
「うだうだしている時間が惜しいもの。早く向こうへついて色々と実験したいしね」
こうなっても変わらないのは恵らしい。
「……名前の通り、辺境でしょう? ……図書館とかあるのかしら」
危険と言われたけれど、恵の勤勉さは私達がよく知っている。それを無碍にするのは勿体ないとも。
だから表立って協力は出来なくなるし、私だって我が身が可愛い。そんな追放扱いされたくはないけれど、やはり心のどこかでは応援したくなるものだ。
頑張っている人を助けたくなるような。だけれど、そんな心配は無駄だと言わんばかりに恵は首を傾げた。
「もう覚えてるから問題ないけど?」
「え?」
あの蔵書量を……? 覚えた……?
恵ハイスペックな脳すぎるだろ! いや確実に優秀! 帰りたいとか言ってなかったら聖女になっていたんじゃ!?
なんて事がぐるぐると脳内を駆け巡るけれど、それを気に入らないのはキィだ。
「ふんっ! くだらない! 体のいい厄介払いか追放みたいなものじゃない! 帰る事ばっか考えて恥ずかしい」
子どもの言う事だろうか。
なんて思うけれど、恵はただ呆れたような、冷ややかな視線をキィに向けて溜息を吐いた。
「子どもには分からないでしょうね。積み重ねたものがないんだから」
「なっ!」
「せいぜいあっても親への恋しさとかでしょ」
「!」
キィは屈辱に顔を歪めたが、言い返す事なんて出来なかった。
小学生と、結婚を控え、仕事も充実している社会人なのだ。
歳と共に何かを積み重ねるというのは大切なのだろう。……ならば琴子は?
ふと一番最年長である琴子が気になって視線を向けたけれど、ただ俯いて手をギュっと握りしめている。
「じゃ、行くわ。お先に帰らせてもらうと思うけど」
絶対に帰るんだと信じている恵。だからこそ、また、とは言わない。
「元気でね」
「さよなら」
別れの言葉を口にし、馬車へと向かう琴子を見送る。
その後ろについて行くロランの表情が恨み籠っているようで気にはなったけれど。
その思考に同意してしまい力を使った私達の中に、それだけの神力を持つ者が居ても……危険なのだ。
恵にそれを説明したところで言う事なんて聞かないのは、一緒に居た私達は分かっている……分かっているけれど。いきなり辺境へ送る必要なんてあるのか。
王都よりはマシだとでも言うのだろうか。
「あ!」
「あ」
話は終わったと言わんばかりに退室させられた私達は、旅行鞄のようなものを持った恵と鉢合わせた。
「恵、もう行くの?」
「うだうだしている時間が惜しいもの。早く向こうへついて色々と実験したいしね」
こうなっても変わらないのは恵らしい。
「……名前の通り、辺境でしょう? ……図書館とかあるのかしら」
危険と言われたけれど、恵の勤勉さは私達がよく知っている。それを無碍にするのは勿体ないとも。
だから表立って協力は出来なくなるし、私だって我が身が可愛い。そんな追放扱いされたくはないけれど、やはり心のどこかでは応援したくなるものだ。
頑張っている人を助けたくなるような。だけれど、そんな心配は無駄だと言わんばかりに恵は首を傾げた。
「もう覚えてるから問題ないけど?」
「え?」
あの蔵書量を……? 覚えた……?
恵ハイスペックな脳すぎるだろ! いや確実に優秀! 帰りたいとか言ってなかったら聖女になっていたんじゃ!?
なんて事がぐるぐると脳内を駆け巡るけれど、それを気に入らないのはキィだ。
「ふんっ! くだらない! 体のいい厄介払いか追放みたいなものじゃない! 帰る事ばっか考えて恥ずかしい」
子どもの言う事だろうか。
なんて思うけれど、恵はただ呆れたような、冷ややかな視線をキィに向けて溜息を吐いた。
「子どもには分からないでしょうね。積み重ねたものがないんだから」
「なっ!」
「せいぜいあっても親への恋しさとかでしょ」
「!」
キィは屈辱に顔を歪めたが、言い返す事なんて出来なかった。
小学生と、結婚を控え、仕事も充実している社会人なのだ。
歳と共に何かを積み重ねるというのは大切なのだろう。……ならば琴子は?
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「じゃ、行くわ。お先に帰らせてもらうと思うけど」
絶対に帰るんだと信じている恵。だからこそ、また、とは言わない。
「元気でね」
「さよなら」
別れの言葉を口にし、馬車へと向かう琴子を見送る。
その後ろについて行くロランの表情が恨み籠っているようで気にはなったけれど。
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