【完結】異世界へ五人の落ち人~聖女候補とされてしまいます~

かずきりり

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第三章

05.真の見解

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「……どうしたのって聞いた方が良いやつ?」

 真を呼び出してのお茶会……なのだが、その空気は暗く、会話も弾んでいない。
 その様子に気が付いた真が申し出てくれた。

「キィも居ないし。あ、いつもの訓練か?」

 どこまで何を把握しているのか。いつも男と混じって訓練をしている真は私達とは別行動だからこそ、見えているものが分からない。
 というか、そこまで理解しているなら少しは汲んでくれと思う。
 まぁ、相談する為にも呼んだのだけれど……何とも言いにくい。

「優しさがあるなら聞いて」
「何か面倒くさそうだから聞かない」
「いや、聞かせる!」

 こんな冗談めいた、やり取りが出来る程には皆が心許せる存在というか、仲良くなってきてはいる。
 だけど……現状、キィだけが孤立しているのだ。
 もはやキィは私達と慣れあおうとするより、訓練一択なのだから。

「私達からも話があります」
「ウィルから色々と相談を受けていて……」

 デイルとアンドリューからも声があがった。
 護衛騎士達も集まって話す時があるのだろうか。……四六時中一緒に居る気がするんだけど、いつのまに……。
 疑惑の目でデイル達を見ていれば、真が小さく息を吐いた。

「で、どうしたの? あまりにも深刻そうだけど」
「実はね……」

 会話の糸口が出来た瞬間、私だけでなく琴子や護衛騎士からもキィの話が出た。
 やはり、ウィルの話からもキィが疲労困憊だと分かる。けれど、キィは話を聞く事なく、ただ一心不乱に勉強と訓練を続けているそうだ。

「……」
「真?」

 話を聞いた真は、顎に手を当てて何かを考えこんでいる。
 沈黙が長く続く真に、おかしな話でもしたのかと声をかけるけれど、真はどこか遠くを見つめるようにしばらく考えこんだ後、口を開いた。

「……放っておいたら?」
「……え?」

 まさかの言葉に、小さく驚きの声をあげる。

「子どもだからって思うけれど、それでも一人の人間で、自分で考えて行動する力を持っているわけだし。間違っている方向に進んで居たら正してあげるのが大人の役目だと思うんだけど……」
「だから、それが……!」

 激昂するよう声をあげる琴子に真が鋭い視線を向けた。

「出来ないし、話を聞ける関係性も築けていなかっただけだよね」

 あまりの言葉に、声も出ない。
 確かに、その通りかもしれない。
 私達はキィから何も聞いていないし、聞き出せても居ないのだ。

「大人に頼らず生きるしかなかったのか。間違っていても正す大人が居ない中で生きて来たのか分からない。……けれど、もう後はお父さん役に任せても良いんじゃないかな?」

 真の言葉に、私と琴子はキョトンとした顔を向けた。
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