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第三章
22.恵のやった事が
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恵がやった事だからと他人事ではいられない。
あれだけの事が起こせるのだ。
騎士団長からすれば、同じ贈り人で警戒する人物と思われても仕方ないだろう。
所詮、同じ異世界人とでも思われているかもしれない。
「ここしばらく戦争はなかったというのに……また多くの騎士達が……」
「あ……あの……」
苦しそうな声で言う騎士団長に、おずおずとキィが口を開いた。
「どうして隣国は攻めてくるのですか?」
「!!」
キィの言葉に王太子が不味いといった表情で顔を上げるが、時は既に遅いのだろう。騎士団長はその表情を怒りに歪めた。
「騎士団ちょ……」
「それはお前等、贈り人のせいだろう!!」
王太子が止める間もなく、騎士団長の口から放たれた怒声に、私達は固まってしまった。
「周辺国には贈り人ではなく魔女が落ちてきたと噂になっているんだぞ!!」
「そんな!」
魔女とは人聞きが悪い。
けれど、私達は贈り人だという自覚なく、ただこの世界に来ただけなのだ。
魔女……と言われれば、そうなのか? と思えるが、良い印象を抱かないので陰謀論ではないかと呆れたが、次に放たれた王太子の言葉で絶句した。
「……メグミが辺境を枯らしたからだ……」
原因、あったわ。
滅ぼそうとする魔女とでも思われたのだろうか。
「自国をも枯らされる前に討伐しようと仕掛けてきたようだ……ついでに、この国も欲しいのだろう。贈り人が落ちてくる土地があるからな」
「……それ、狙いは私達なの……?」
琴子が震えた身体で呟いた。
キィも恐怖で膝をつく。
……いっそ私も腰を抜かしたかったけれど、どこか他人事というか現実味がないから立っていられるのだろう。
自分が狙われていると目の前にナイフでも突き出されたら話は別だろうけれど、こうして安全な場所で言われているだけなのだ。いっそ冗談キツイって! と笑い飛ばしたくなる。
……だけれど、ここは学校の教室でもなく、話しているのは同じ年のクラスメートというわけでもない。
でも現実味が起こらない。否、現実だと思いたくないのかもしれない。
「後方支援に特化した贈り人以外は前線へと立ってもらう」
「騎士団長!」
王太子の止める声にも動じず、騎士団長は決定だと断言した。
この場では騎士団長の方が権限を持っているのだろう。
……私達の気持ちなど無視した、最適な判断なのだろうけれど、恐怖が勝る。
「どっちにしろ、領土も狙われてるなら一蓮托生だろ。いがみ合う必要はないんじゃないか」
真が騎士団長へと鋭い視線を向けて言い放ち、しばらく睨み合っていたが騎士団長の方が「ふんっ」と鼻を鳴らし、話は終わったと部屋から出ていってしまった。
あれだけの事が起こせるのだ。
騎士団長からすれば、同じ贈り人で警戒する人物と思われても仕方ないだろう。
所詮、同じ異世界人とでも思われているかもしれない。
「ここしばらく戦争はなかったというのに……また多くの騎士達が……」
「あ……あの……」
苦しそうな声で言う騎士団長に、おずおずとキィが口を開いた。
「どうして隣国は攻めてくるのですか?」
「!!」
キィの言葉に王太子が不味いといった表情で顔を上げるが、時は既に遅いのだろう。騎士団長はその表情を怒りに歪めた。
「騎士団ちょ……」
「それはお前等、贈り人のせいだろう!!」
王太子が止める間もなく、騎士団長の口から放たれた怒声に、私達は固まってしまった。
「周辺国には贈り人ではなく魔女が落ちてきたと噂になっているんだぞ!!」
「そんな!」
魔女とは人聞きが悪い。
けれど、私達は贈り人だという自覚なく、ただこの世界に来ただけなのだ。
魔女……と言われれば、そうなのか? と思えるが、良い印象を抱かないので陰謀論ではないかと呆れたが、次に放たれた王太子の言葉で絶句した。
「……メグミが辺境を枯らしたからだ……」
原因、あったわ。
滅ぼそうとする魔女とでも思われたのだろうか。
「自国をも枯らされる前に討伐しようと仕掛けてきたようだ……ついでに、この国も欲しいのだろう。贈り人が落ちてくる土地があるからな」
「……それ、狙いは私達なの……?」
琴子が震えた身体で呟いた。
キィも恐怖で膝をつく。
……いっそ私も腰を抜かしたかったけれど、どこか他人事というか現実味がないから立っていられるのだろう。
自分が狙われていると目の前にナイフでも突き出されたら話は別だろうけれど、こうして安全な場所で言われているだけなのだ。いっそ冗談キツイって! と笑い飛ばしたくなる。
……だけれど、ここは学校の教室でもなく、話しているのは同じ年のクラスメートというわけでもない。
でも現実味が起こらない。否、現実だと思いたくないのかもしれない。
「後方支援に特化した贈り人以外は前線へと立ってもらう」
「騎士団長!」
王太子の止める声にも動じず、騎士団長は決定だと断言した。
この場では騎士団長の方が権限を持っているのだろう。
……私達の気持ちなど無視した、最適な判断なのだろうけれど、恐怖が勝る。
「どっちにしろ、領土も狙われてるなら一蓮托生だろ。いがみ合う必要はないんじゃないか」
真が騎士団長へと鋭い視線を向けて言い放ち、しばらく睨み合っていたが騎士団長の方が「ふんっ」と鼻を鳴らし、話は終わったと部屋から出ていってしまった。
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