【完結】異世界へ五人の落ち人~聖女候補とされてしまいます~

かずきりり

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第四章

26.処刑宣告

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 今回は着替えさせられる事もなく、ただ真っすぐに謁見の場へと連れて行かれる。
 今までの長ったらしい準備は一体何だったのだと思わずにはいられない程だ。
 後ろ手を拘束されて、半場引きずられるようにして歩かされている真なんて、言うなれば汚いのだ。それならば、せめて普段通りでも良いじゃないかと声を大にして言いたい。言わないけど。

 ――ギィイイイッ!

 大きな音を立てて扉が開く。
 既に前触れがされていたのか、レッドカーペットの両脇には、前見たように貴族と思わしき人々がこちらに対して軽蔑した瞳を向けている。
 臆する事なく近衛騎士達は真を連れて国王の前にまで歩いて行くのを、私達も後に続く。
 そして、国王の前に出された真の側に寄り添うよう、私達も並んだ。

「この忌々しい悪魔めが!」

 憎しみや怒りに震えた目をする国王が、唇を噛みしめながら言った。
 こいつ等には何の言葉も通じないんだと、今更ながらに諦め以上の……虚無だ。もはや何も感じない。
 どうでも良い相手には何も思わないというけれど、本当にその通りだと言わんばかりに、何か煩わしいものが其処にあるという感覚しかない。
 何かあるとするならば……「うるさい」程度のものだった。

「真……」

 どうするのか。
 何を思っているのか。
 私は真へと視線を向ければ、真は堂々と立ち、国王を見据えており、その口角は少し上がっているように見えた。
 しかし、そんな真の余裕な態度すら、国王の逆鱗へと触れるには十分だったのだろう。

「贈り人達を誑かし洗脳する悪魔に追放なぞ生ぬるい! 処刑だ!」
「は」
「え」
「そんなっ!」

 真がその気になれば、抗う事くらい簡単だと思って、気が抜けた声を出してしまう。
 けれど、もし真に抵抗する気がなかったら……。それを想像したのだろう、琴子が顔を青く染めていた。
 いや……でも……。真が自ら、処刑を受け入れる……?
 チラリと横目で真を見れば、いつもと変わらない凛とした佇まいと表情。処刑を言い渡されたとは思えない程だけれど、表情の裏に隠されている感情を読み取る事など出来ない。
 ……この表情がまさに真のポーカーフェイスなのかもしれない。

「牢にでも繋いでおけ」

 自分がやるわけではないからか、簡単に言葉を口に出す国王。だが、側に居た近衛騎士は違う。真の実力を知っている為か、少しジッと真を見つめて様子を伺っているようだ。
 まぁ、抵抗されたらかなわないと理解しているからだろう。

「返事は!」
「じゃーテメェで捕まえろよ」

 痺れを切らして近衛騎士に怒鳴る国王へ、煽る言葉を放ったのは真だった。
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