【完結】異世界へ五人の落ち人~聖女候補とされてしまいます~

かずきりり

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第四章

30.アンドリュー

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「頼む……頼む! 周辺国への牽制が……」
「却下だ」

 バタンッ!

 懇願する国王だが、結局は自国というか欲の為なのだろう。
 それを一刀両断した真は、扉を無情にも閉めた。
 落ち人が落ちてくる場所があるからと、今まで好き勝手やっていそうな国王ではあるし。これから何が起こっても自業自得だろう。私達には関係ない。

「……コトコ様」

 扉の前に待機していたのだろう、護衛騎士の三人が其処には居た。
 アンドリューは悲し気な表情で琴子の名前を呼ぶ中、デイルとウィルは私達の側に来てくれた。私達に着いてくるという意思をちゃんと見せてくれて嬉しく思う。
 その反面、アンドリューは琴子の意思に背いた事をしたのだ。今更感しかないし、側に来ないだけ自分がやった事を理解しているのだろう。

「私の幸せは皆の側に居る事なの」

 琴子はキッパリとアンドリューに向かって言い放ち、アンドリューは苦しそうに顔を歪める。

「……あなたはどうするの」

 ハッとアンドリューは顔を上げた。琴子は何とも言えない表情で、ただアンドリューを見つめているだけだ。
 ……今までずっと一緒に居た人を簡単には切り捨てられないだろう。琴子の意思とは全く反した行動をしていたと言っても、それは琴子の為だという思いから行った事なのだから。
 しかし、アンドリューは少し迷った表情をした後に首を振って、琴子の前へと膝を付いた。

「俺にコトコ様の側に居る資格はありません」
「……そう」
「けれど!」

 アンドリューの言葉に、目を伏せて立ち去ろうとした琴子へと力強い声が返ってきた。

「許してもらえるなら! 俺は俺で、次の贈り人が落ちて来た時の為に、あの場所の番人となりましょう」
「……それは、この国を捨てるという事だけど?」

 まさかの申し出に、真は確認の言葉を発した。
 あの場所は、私達がこの国から奪うと言っているのだから。

「所詮、平民となる身。ならば自分の信念を持った生き方をしたい」

 穏やかな表情で答えるアンドリュー。それは本心なのだろう。
 私達が居なくなれば平民に落ちるのも事実だろう事は、小さく頷いたデイルとウィルの反応からも理解出来た。
 琴子は申し訳程度に私達へ視線を向ける。きっと返事が欲しいのだろう。というか嫌ならキッパリと断るだろうし、後押しが欲しいのだろうと思い、小さく頷いた。それは皆も同じだった。

「なら行きましょう」

 小さく微笑み、アンドリューへと手を差し伸べる琴子。その手をはにかみながらも取るアンドリュー。
 完全に敵対する事もないし、会いたいと思えば会える距離だと思えば、少し安心した気持ちになり、私達は一緒に神殿へと戻った。
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