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この世界に来てから、ロドさんの側を離れていると言えば、寝ている時間くらいだった。と言っても、部屋は隣だったりする。
今日はロドさんが王に呼ばれたという事で、初めて一緒に居ない日を過ごす事になった為、ならばこの機会に少し外を散策してみようと外へ出た。
知らない世界で一人というのは孤独感を感じるものの、やはりたまには一人の時間も大事な気がする。
外の空気を思いっきり吸って、久しぶりとなる一人の時間を満喫していた。少し離れた所に庭園のようなものが見えたのでそちらに向かい、植えてある花々を見ている時だった
「ちょっと!そこの貴女!」
甲高い声が庭園に響いた。
「そこの野蛮人!足が早いのよ!止まりなさい!!やっと一人になったというのに!!」
この世界で誰も知り合いが居ないので、まさか私の事だとは思っていなかったけれど、近づいてくる罵声と、やっと一人になった、という言葉に思わず立ち止まって、恐る恐る振り向いてみた。
私のこと?なんて自意識過剰な気がするけれど、もし私だったら無視してる事にもなってしまう。見るだけなら様子を見ているとも思われるだろう。
振り返ると、煌びやかなドレスのようなものを着た美しい女性が怒ったかのような表情で確実に私を睨みつけながら近づいてきていた。
「無視するとは良い度胸ですわ!異世界人の生贄の分際で!」
「……生贄……?」
目の前の女性が放った物騒な言葉を思わず呟くと、それに気がついた女性は面白いものを見つけたかのように微笑んだ。
「何?知らないの?ただ血肉を求められた生贄だって」
その言葉に、血の気が引いて全身が冷え、身体が小刻みに震える。
生贄……。
馴染みのない言葉だけれど、その意味はとても怖いという事は知っている。
怯えている私を見て楽しそうに目の前の女性は笑いながら話してくれた。
逃げ出さないようにずっと監視しているから、四六時中ロドさんが私を目の届く所に置いているのだとか、手の届くところに置いているのだとか。
呪術蔓延る世界だからこそ、呪いは呪いとして返すしかなく、その危険性から生贄が必要になるとか。
「生贄として使用する準備として溺愛されているだけなのに。あら?教えてあげた、わたくしって親切ね」
私が絶望に表情を歪め、女が高笑いをあげた瞬間、ハイルさんの声が響いた。
「そこで何をしているんですか!」
「チッ」
女性は舌打ちすると踵を返し、その場を立ち去っていく。残された私は顔をあげる事が出来ない。
「ミオ様、勝手に出ては困ります」
それは監視の為に必要だからですか。
「ごめんなさい……許可が必要な事を知らなかったんです……」
私は俯きながら、そう返すのが精一杯だった。
今日はロドさんが王に呼ばれたという事で、初めて一緒に居ない日を過ごす事になった為、ならばこの機会に少し外を散策してみようと外へ出た。
知らない世界で一人というのは孤独感を感じるものの、やはりたまには一人の時間も大事な気がする。
外の空気を思いっきり吸って、久しぶりとなる一人の時間を満喫していた。少し離れた所に庭園のようなものが見えたのでそちらに向かい、植えてある花々を見ている時だった
「ちょっと!そこの貴女!」
甲高い声が庭園に響いた。
「そこの野蛮人!足が早いのよ!止まりなさい!!やっと一人になったというのに!!」
この世界で誰も知り合いが居ないので、まさか私の事だとは思っていなかったけれど、近づいてくる罵声と、やっと一人になった、という言葉に思わず立ち止まって、恐る恐る振り向いてみた。
私のこと?なんて自意識過剰な気がするけれど、もし私だったら無視してる事にもなってしまう。見るだけなら様子を見ているとも思われるだろう。
振り返ると、煌びやかなドレスのようなものを着た美しい女性が怒ったかのような表情で確実に私を睨みつけながら近づいてきていた。
「無視するとは良い度胸ですわ!異世界人の生贄の分際で!」
「……生贄……?」
目の前の女性が放った物騒な言葉を思わず呟くと、それに気がついた女性は面白いものを見つけたかのように微笑んだ。
「何?知らないの?ただ血肉を求められた生贄だって」
その言葉に、血の気が引いて全身が冷え、身体が小刻みに震える。
生贄……。
馴染みのない言葉だけれど、その意味はとても怖いという事は知っている。
怯えている私を見て楽しそうに目の前の女性は笑いながら話してくれた。
逃げ出さないようにずっと監視しているから、四六時中ロドさんが私を目の届く所に置いているのだとか、手の届くところに置いているのだとか。
呪術蔓延る世界だからこそ、呪いは呪いとして返すしかなく、その危険性から生贄が必要になるとか。
「生贄として使用する準備として溺愛されているだけなのに。あら?教えてあげた、わたくしって親切ね」
私が絶望に表情を歪め、女が高笑いをあげた瞬間、ハイルさんの声が響いた。
「そこで何をしているんですか!」
「チッ」
女性は舌打ちすると踵を返し、その場を立ち去っていく。残された私は顔をあげる事が出来ない。
「ミオ様、勝手に出ては困ります」
それは監視の為に必要だからですか。
「ごめんなさい……許可が必要な事を知らなかったんです……」
私は俯きながら、そう返すのが精一杯だった。
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