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緊張と混乱と心臓が掴まれたかのような苦しみに息が出来ないような感覚。
そんな初めてなる自分の状態にどう対処して良いか分からない私は、結局何も手につかず、夜になっても眠る事すら出来ず、そのまま朝を迎えてしまった。
起こしに来てくれた人が私の顔を見て真っ青になって慌てている程、酷い顔をしているらしい。
人を好きになると楽しくて苦しくて……何も手につかなくなる、夜も眠れなくなる。
なんて、小説や漫画で描写されているのを見て知識としては備わっているけれど、自分の現状がどうなのかが全く分からない。
昨日ロドさんに問いかけられた言葉は、自分の中で正解なのか……自分の想いなのに分からない。
結局答えなど出ない事を延々と悩み続けているだけだ。否、答えはすでに自分の中にあるのだろうけれど見つけられない……なんて、言い訳でしかないのかもしれない。
「ミオ!?」
慌てたように開け放たれた扉と呼ばれた声に身体をビクリと震わせた。
そこに立っていたのはロドさんで、その表情はとても心配そうに慌てていた。
「眠れなかったの?何か心配事?……それとも……」
その先に続く言葉をロドさんは躊躇い、そして一瞬辛そうに表情を歪めたのを見逃す事なく見つけ、そして罪悪感のような胸の痛みがこみ上げた。
「僕の想いは迷惑だった……?」
私は逃げている。
ずっとずっと、逃げる生き方しかして来なかったと思う。
誰にも正面から向き合わず、合わせてしまっていたのは結局そういう事なのではないのか。
真正面から向き合い、受け止めてくれるロドさんと一緒に居た事で、合わせるという事が……失礼な気がするのだ。
そうして合わせてもらうのは楽かもしれないが、結局私が壁を作っていただけだ。
そして何より……ロドさんが求める私は、お人形なんかではなく私自身に対してで、私の心でもあるのだろう。
「どうして……私なんでしょう?」
信用していないわけではない。だけれど……どうしても自分に対する劣等感の方が勝るのだ。
明確な理由がないと自信が持てない、確信が得られないなんて可笑しいとは自分でも思う。
自信なんてものは理由を持って持つものではないからだ。しかし今の私は理由がなければ自分に対して納得する事が出来ない。
身体が震えるけれど、勇気を持ってロドさんの目を見て訴える。
そんな私を見てロドさんは少し困ったように、でも優しく微笑み、ハイルさんに目配せした。
「まず、出会いから話そうか」
出会い?
そう思った瞬間、私はロドさんに抱き抱えられた。
そんな初めてなる自分の状態にどう対処して良いか分からない私は、結局何も手につかず、夜になっても眠る事すら出来ず、そのまま朝を迎えてしまった。
起こしに来てくれた人が私の顔を見て真っ青になって慌てている程、酷い顔をしているらしい。
人を好きになると楽しくて苦しくて……何も手につかなくなる、夜も眠れなくなる。
なんて、小説や漫画で描写されているのを見て知識としては備わっているけれど、自分の現状がどうなのかが全く分からない。
昨日ロドさんに問いかけられた言葉は、自分の中で正解なのか……自分の想いなのに分からない。
結局答えなど出ない事を延々と悩み続けているだけだ。否、答えはすでに自分の中にあるのだろうけれど見つけられない……なんて、言い訳でしかないのかもしれない。
「ミオ!?」
慌てたように開け放たれた扉と呼ばれた声に身体をビクリと震わせた。
そこに立っていたのはロドさんで、その表情はとても心配そうに慌てていた。
「眠れなかったの?何か心配事?……それとも……」
その先に続く言葉をロドさんは躊躇い、そして一瞬辛そうに表情を歪めたのを見逃す事なく見つけ、そして罪悪感のような胸の痛みがこみ上げた。
「僕の想いは迷惑だった……?」
私は逃げている。
ずっとずっと、逃げる生き方しかして来なかったと思う。
誰にも正面から向き合わず、合わせてしまっていたのは結局そういう事なのではないのか。
真正面から向き合い、受け止めてくれるロドさんと一緒に居た事で、合わせるという事が……失礼な気がするのだ。
そうして合わせてもらうのは楽かもしれないが、結局私が壁を作っていただけだ。
そして何より……ロドさんが求める私は、お人形なんかではなく私自身に対してで、私の心でもあるのだろう。
「どうして……私なんでしょう?」
信用していないわけではない。だけれど……どうしても自分に対する劣等感の方が勝るのだ。
明確な理由がないと自信が持てない、確信が得られないなんて可笑しいとは自分でも思う。
自信なんてものは理由を持って持つものではないからだ。しかし今の私は理由がなければ自分に対して納得する事が出来ない。
身体が震えるけれど、勇気を持ってロドさんの目を見て訴える。
そんな私を見てロドさんは少し困ったように、でも優しく微笑み、ハイルさんに目配せした。
「まず、出会いから話そうか」
出会い?
そう思った瞬間、私はロドさんに抱き抱えられた。
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