【完結】婚約破棄された地味令嬢は猫として溺愛される

かずきりり

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36.

 師匠は、とある魔法具を持っていた。それは、通信の魔法具のようなもので、一方向からしか届かないけれど……それでも、しっかりと声を届けていたのだ。

 ――国王陛下に。

 リムド・ハーバー公爵令息が呪いによって王太子殿下を殺そうとした事。それだけでなく、私達が魔物を屠りながら通ったこの道までも。
 あとしばらくすれば、私達の後ろをついてきていた騎士達が辿り着くだろう。向こうからの声が聞こえないので、今どうなっているのか分からないし、ただ独り言を言っているだけに聞こえるのが問題だけれど。
 ……帰ったら、改良が必須ね。

「いた」

 地下に作られた鉄格子の部屋。それだけで飽き足らず、二人には足かせまで繋がれていた。更に、周囲には増幅の魔法具等も置かれている。確実に王太子殿下を殺すという意気込みが伺える不気味さに、吐き気すら感じる。
 風魔法で鉄格子を切り裂き、中へと足を踏み入れ二人を見れば、虚ろな目で何かを呟いている。

「マーガレットのせいだ。全部マーガレットのせいだ」
「お義姉様さえ居なければ。お義姉様が全部悪いのよ」
「全てはマーガレットが原因なんだ」
「今こんな事になっているのも、お義姉様のせい」

 延々と吐き出される私への恨み言。
 正直、気持ち悪い。自分で選び、自分が望む事をして、私を傷つける事も考えず行動した結果、私のせいだなんて……責任転嫁も甚だしい。
 自分の考えを押し付ける気はないけれど、自分が選んだ道は自分で責任を持ち、後悔の感情も自分のものじゃないのか。私は、邸を出て、今こうして生きている事を誰の責任にもするつもりはない。

 バキッ! バキバキッ! パキンッ!

 魔法具を全て壊すけれど、二人の足枷は壊さない。……邪魔されても困るし、後は騎士達に任せよう。
 踵を返すと、私は急いで来た道を駆け戻る。

「師匠!」

 未だに二人は話していたのだろうか。膝から崩れ落ちているハーバー公爵令息と、それを見下ろす師匠。
 こちらに視線を向けた師匠に、終わったと言う合図で頷けば、いきなりハーバー公爵令息が頭を上げて、立ち上がった。

「お前のせいで!!」

 掴みかかろうとしてきたハーバー公爵令息を師匠は問答無用で眠らせた。
 ……私がやると後から不敬だと面倒くさいやつだ。

「後は騎士に任せて、急いで戻りましょう」

 師匠の言葉に頷いて、私達は王城へと戻る。
 途中、追いかけてきた騎士達に出会ったので、簡単に説明だけして……。
 しかし、誰かのせいにするのは流行っているのだろうか。
 ……確かに、ハーバー公爵令息の人生を終わらせたのは私達にあるけれど……原因を作ったのは自分なのに。

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