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第5章 ファイナイト
5-15 友情力
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レグネッタさんの黒い拳銃――「バブーン」から放たれた黄光のビームはセキュリティマシンのボディを貫通していた。だが、それでも鋼鉄の身体は倒れず、右手に持つ電流棒をレグネッタさんへと振り下ろしていた。
「しぶといな」
レグネッタさんのバブーンから放たれた黄光のビームはそのまま屈折し、セキュリティマシンの背後からレグネッタさんの前まで回り込み、マシンの電流棒を受け止めていた。
そして、そのままセキュリティマシンの鋼のボディに巻き付くと、あの巨体を持ち上げ、ホールのフロアへと叩き付けた。
鋼の巨体がバウンドし、火花を散らしている。
「なんだあの銃は? 世界を旅してきたが、あんなもん初めて見るぜ?」
トロイが笑いながら僕に言ってきた。僕も呆気に取られながら眺めていた。幽霊を倒すために使ってきたらしいが、その場の状況に適応した攻撃パターンを展開している。それを使いこなすレグネッタさんもすごい。
「しっかし、こいつはかなり頑丈だ。ゼブルムはまた厄介なもんを作ってくれたな」
ドドがセキュリティマシンを囲むように位置取る。彼の言葉通り、頑丈なセキュリティマシンが再び起き上がり、その近くに倒れていた隊員のアサルトマシンガンを左手に持ち、構えようとしていた。
「銃も扱えますの!? いけませんわ!」
危機感を察知したミルが叫ぶ。
「手間かけさせやがって」
僕達の前に飛び出たレグネッタさんが2挺の拳銃をクロスし、防御壁を展開してくれた。セキュリティマシンが連射した銃弾が見えない壁に弾かれていく。
「うし、まかせろ」
ドドが飛び出す。セキュリティマシンの死角から回り込み、素早く奴の足下にダイブする。そのまま床に手をつき、腕のバネを使って爪先から飛び上がる。セキュリティマシンの腕を蹴り上げ、アサルトマシンガンはホールの天井を撃っていた。
「僕も少しは働かないとね」
そう言って、僕は近くにあった自販機をグラインドでもぎ取り、それをセキュリティマシンの右側からぶつけた。
「いいねいいねー! これぞチームプレイだ!」
と、僕が飛ばした自販機の上にトロイのドッペルが2人乗っていた。1人がマシンの頭部をガシガシと蹴り、もう1人はマシンの右腕にしがみつきながら、そのボディを蹴っていた。
一見子供じみた攻撃だったが、セキュリティマシンは混乱しているのか、身体を振り回すことしか出来なかった。
「よし、死ね」
レグネッタさんはトロイのドッペルを巻き添えにしながら2挺の拳銃を連射した。近くにいたドドも慌てて退避する。
「おーい!? チームプレイだっつったろ!? なんてひでぇ事すんだ!?」
「あぁ? ドッペルなんだからいいだろ? 文句あるか?」
レグネッタさんはどこか鬱憤を晴らすように拳銃を撃っていた。あれは、絶対に楽しんでる。
反論しようとしたトロイだったが、レグネッタさんの剣幕に押され、言葉を濁して納得してしまった。
その時、セキュリティマシンが今までにない駆動音を上げ、肩や胸のパーツが浮き上がり、その身軀から蒸気を排出し出した。
「何か危なそうですわ! 皆さん、お下がりくださいませ!」
ミルはそう言うと、セキュリティマシンの頭上からガソリンを落とし、マッチの火を投げた。以前、冥片でもやっていた技だ。
鋼鉄の身体が燃え始めた。だが、それをものともせずにセキュリティマシンが走り出した。その先にはミルがいた。
「危ない!」
「想様!?」
僕は咄嗟にミルの前に飛び出していた。そこに、セキュリティマシンが火花を散らした拳を僕の腹に打ち込んできた。
「ぐっぐはあっ!」
僕の身体は宙を舞った。だが、ただやられる訳にはいかない。近くにあった椅子を2つ飛ばし、それでマシンの両腕を固定する。
腹部の痛みに耐えながら、僕はホールの床に着地する。集中しろと自分に言い聞かせ、顔を上げる。
床に転がっていたアサルトマシンガンを飛ばし、それでマシンの頭部を殴打する。
「まだだ。こいつも捩じ込んでやる」
フロアに転がっていた特殊部隊のナイフをグラインドで飛ばし、それを鋼鉄ボディの腹部へと捩じ込む。金属が擦れる嫌な音を立てながらも、グラインドの力をフル発動し、あの強靭なボディを引き裂くようにナイフはめり込んでいく。
「ギガガガガシューッ!」
マシンが傷つく音なのか、それとも駆動音なのか、けたたましい音を発したかと思ったら、セキュリティマシンは両腕に纒わり付いていた椅子を弾き飛ばし、僕に向かって突進し、そのまま僕の身体を持ち上げた。
「うおっおおっ!?」
強靭なアームの力に僕は為す術がなく、ぶんっと振り回されたあとに思い切り投げられた。その先にはガラス張りの壁があり、投げ飛ばされた僕の身体は、そこを突き破ってセントラルタワーの外へと投げ出された。
「想!」
視界の隅で動く影があった。その影は宙に投げ出された僕の身体に向かって跳び、抱きかかえてくれた。ここまで身体を張ってくれるのはドドしかいない。
「え!? レグネッタさん!?」
僕の予想は外れた。あのレグネッタさんがビルから投げ出された僕を抱き締めてくれていた。
「馬鹿、動くな。しっかり掴まってろ」
そう言って、右手に持つ黒い銃から黄光の鞭を伸ばす。その先端がセントラルタワーを囲む外側のビルの壁面へと突き刺さる。
振り返ると、先程までいたセントラルタワーのフロアからあのセキュリティマシンが飛び上がっていた。背中からジェット噴射し、宙を飛んでいる。
「レグネッタさん、あいつが来ます!」
「馬鹿野郎! 私は今両手塞がってんだ! お前がなんとかしろ!」
至近距離でレグネッタさんの怒声を浴び、僕は謝りながらも眼下にあった中庭に生えている樹木を引き抜き、それをあのマシン目掛けて飛ばす。
不意の攻撃を受けたからか、あのマシンの動きが一瞬止まったが、樹木をその鉄拳で何度も殴り粉砕した。
「野郎っ! これ以上、想に手出しさせてたまるか!」
叫んでいたのはトロイだった。あのフロアの窓辺からトロイのドッペルが何人も肩に足を乗せた状態で繋がり、それはセキュリティマシンへと伸びていく。
「追いついたぜー? くらえー!」
先端のドッペルが、宙を飛ぶセキュリティマシンに向けて左腕からサイドワインダーを射出していた。
至近距離からミサイルの直撃をくらったセキュリティマシンだったが、自身の身体に纒わり付くトロイのドッペルを振り払おうとし、宙で藻掻いている。
そこへ、セントラルタワーの窓辺に立つトロイ本体が次々にサイドワインダーを放っていた。
「待ってろ想! 俺が行く!」
更にドドが飛び出した。セキュリティマシンへと繋がっていたトロイのドッペル達の上を、ドドは駆け上って行く。土台にされたドッペル達は呻き声を上げているが、なんとか持ち堪えているようだ。
「とっととくたばりやがれ!」
セキュリティマシンへと追いついたドドは、その背後から後頭部に向けて、素手で殴っていた。
「ぐおっ!」
あまりの硬さにドドは呻き声を上げ、その拳から血が飛び散るが、それでもその拳をそのまま振り切った。
「あいつ、本物の馬鹿野郎か?」
レグネッタさんはバブーンから伸びる黄光の鞭を縮めて外側のビルの窓を蹴りで割り、建物内に僕を運んでくれ、そして笑っている。
「ラウディさんも言ってました。ドドはそういう男なんです」
僕も彼の行動に嬉しくなり、思わず笑みが零れた。そして、地上の中庭にあったベンチを飛ばしてそれをドドの足場にして宙に浮かせる。
「想様は、わたくしのために……わたくしを守って……よくも想様をー!」
ミルがいた。テリファイアによってセキュリティマシンの頭上に現れたミルは釘バットを手にし、それをそのまま振り下ろす。
「許しません! 叩き落としてやりますわ!」
ミルは落下しながらもセキュリティマシンの背面にあるジェット装置を釘バットで殴り、破壊していく。トロイのミサイル攻撃を何度も受けたからか、あの鋼鉄ボディは既にボロボロになっていた。
「爆破させてあげますわ! ぶっ飛びなさいませ!」
内部が剥き出しになったセキュリティマシンの背面に、ミルはダイナマイトを詰め込んだ。
そこから上空へと瞬間移動してから銃を連射し、ダイナマイトは爆発した。あの鋼鉄の巨人はそのパーツを撒き散らして木っ端微塵になっていた。
「全く。どいつもこいつも馬鹿だな。お前もだ想。あまり無茶するな。私がレンビーに怒られる」
レグネッタさんはタバコに火を付けてからそう言った。
「みんなが頑張ってるのに、僕だけ怠けている訳にもいかないので。でも、まさかレグネッタさんが助けてくれるとは思ってませんでした。ありがとうございます」
僕が改めてお礼を言うと、レグネッタさんはバツが悪そうな顔をした。照れ隠しなのかもしれない。
「想様ー! 大丈夫でございますかー!?」
ミルが僕達の所に現れ心配してくれた。
「大丈夫だよ、ちょっとまだ痛いけど」
そう言って僕は腹部を摩る。
ドドを乗せていたベンチにトロイも乗せ、2人を近くまで運んだ。
「いやー、見事な勝利だ! これぞ、友情の力ってやつだな!」
トロイはそう言ってドドと肩を組んで喜んでいた。
「調子に乗るな。まだファイナイトに辿り着いてさえいないんだ」
レグネッタさんの言う通りだ。まだ道中の障害を排除したに過ぎない。
「あのセキュリティマシンはどうなっていたんだ? 暴走状態だったのかな?」
「いや、あいつは最新型だった。暴走するケースはほぼないな。それに、この会社で普段から運用していたとも思えない。あれは、白髪坊主が操ってたんじゃねぇかな?」
トロイの説明を受けて僕も納得する。正常に作動していたら、特殊部隊を襲う事もなかっただろう。
「クソガキ……あいつの頭に風穴あけてやる」
レグネッタさんが静かに怒っている。先程は助けてくれたが、今でもまだこの女性が怖くてたまらない。
「しっかし、これからどうする? また中央のビルまで戻るか? それともこの外側から攻めて行くか?」
僕の力で空中に浮いていたベンチから降り、ビル内に立ったドドが聞いてきた。トロイも続いてこちらにやってくる。
先程いたセントラルタワーが5階だった。そして、今いる外側のビルは8階だ。13階まであるようだが、このまま最上階まで登る事も出来そうだ。僕のグラインド、ミルのグラインド、そしてレグネッタさんの鞭、方法はいくらでもある。
――――ゴガガガガーンッ!
その時、セントラルタワーの上の方で大きな爆発が起きた。それは、僕達がいる外側のビルも揺るがす程の衝撃だった。
「なんですの!? 何が起きましたの!?」
ミルが窓辺の縁に掴まりながら叫んだ。
爆発が起きた場所を見ると、セントラルタワー上方の壁が大きく抉られるように破壊されていた。
その爆煙の向こうに、小さな人影が見える。ファイナイトだ。
「ファイナイト……そこに、いるのか」
僕の呟き声など届くはずはなかったが、白髪の少年はしっかりと僕達を見下ろしていた。
「しぶといな」
レグネッタさんのバブーンから放たれた黄光のビームはそのまま屈折し、セキュリティマシンの背後からレグネッタさんの前まで回り込み、マシンの電流棒を受け止めていた。
そして、そのままセキュリティマシンの鋼のボディに巻き付くと、あの巨体を持ち上げ、ホールのフロアへと叩き付けた。
鋼の巨体がバウンドし、火花を散らしている。
「なんだあの銃は? 世界を旅してきたが、あんなもん初めて見るぜ?」
トロイが笑いながら僕に言ってきた。僕も呆気に取られながら眺めていた。幽霊を倒すために使ってきたらしいが、その場の状況に適応した攻撃パターンを展開している。それを使いこなすレグネッタさんもすごい。
「しっかし、こいつはかなり頑丈だ。ゼブルムはまた厄介なもんを作ってくれたな」
ドドがセキュリティマシンを囲むように位置取る。彼の言葉通り、頑丈なセキュリティマシンが再び起き上がり、その近くに倒れていた隊員のアサルトマシンガンを左手に持ち、構えようとしていた。
「銃も扱えますの!? いけませんわ!」
危機感を察知したミルが叫ぶ。
「手間かけさせやがって」
僕達の前に飛び出たレグネッタさんが2挺の拳銃をクロスし、防御壁を展開してくれた。セキュリティマシンが連射した銃弾が見えない壁に弾かれていく。
「うし、まかせろ」
ドドが飛び出す。セキュリティマシンの死角から回り込み、素早く奴の足下にダイブする。そのまま床に手をつき、腕のバネを使って爪先から飛び上がる。セキュリティマシンの腕を蹴り上げ、アサルトマシンガンはホールの天井を撃っていた。
「僕も少しは働かないとね」
そう言って、僕は近くにあった自販機をグラインドでもぎ取り、それをセキュリティマシンの右側からぶつけた。
「いいねいいねー! これぞチームプレイだ!」
と、僕が飛ばした自販機の上にトロイのドッペルが2人乗っていた。1人がマシンの頭部をガシガシと蹴り、もう1人はマシンの右腕にしがみつきながら、そのボディを蹴っていた。
一見子供じみた攻撃だったが、セキュリティマシンは混乱しているのか、身体を振り回すことしか出来なかった。
「よし、死ね」
レグネッタさんはトロイのドッペルを巻き添えにしながら2挺の拳銃を連射した。近くにいたドドも慌てて退避する。
「おーい!? チームプレイだっつったろ!? なんてひでぇ事すんだ!?」
「あぁ? ドッペルなんだからいいだろ? 文句あるか?」
レグネッタさんはどこか鬱憤を晴らすように拳銃を撃っていた。あれは、絶対に楽しんでる。
反論しようとしたトロイだったが、レグネッタさんの剣幕に押され、言葉を濁して納得してしまった。
その時、セキュリティマシンが今までにない駆動音を上げ、肩や胸のパーツが浮き上がり、その身軀から蒸気を排出し出した。
「何か危なそうですわ! 皆さん、お下がりくださいませ!」
ミルはそう言うと、セキュリティマシンの頭上からガソリンを落とし、マッチの火を投げた。以前、冥片でもやっていた技だ。
鋼鉄の身体が燃え始めた。だが、それをものともせずにセキュリティマシンが走り出した。その先にはミルがいた。
「危ない!」
「想様!?」
僕は咄嗟にミルの前に飛び出していた。そこに、セキュリティマシンが火花を散らした拳を僕の腹に打ち込んできた。
「ぐっぐはあっ!」
僕の身体は宙を舞った。だが、ただやられる訳にはいかない。近くにあった椅子を2つ飛ばし、それでマシンの両腕を固定する。
腹部の痛みに耐えながら、僕はホールの床に着地する。集中しろと自分に言い聞かせ、顔を上げる。
床に転がっていたアサルトマシンガンを飛ばし、それでマシンの頭部を殴打する。
「まだだ。こいつも捩じ込んでやる」
フロアに転がっていた特殊部隊のナイフをグラインドで飛ばし、それを鋼鉄ボディの腹部へと捩じ込む。金属が擦れる嫌な音を立てながらも、グラインドの力をフル発動し、あの強靭なボディを引き裂くようにナイフはめり込んでいく。
「ギガガガガシューッ!」
マシンが傷つく音なのか、それとも駆動音なのか、けたたましい音を発したかと思ったら、セキュリティマシンは両腕に纒わり付いていた椅子を弾き飛ばし、僕に向かって突進し、そのまま僕の身体を持ち上げた。
「うおっおおっ!?」
強靭なアームの力に僕は為す術がなく、ぶんっと振り回されたあとに思い切り投げられた。その先にはガラス張りの壁があり、投げ飛ばされた僕の身体は、そこを突き破ってセントラルタワーの外へと投げ出された。
「想!」
視界の隅で動く影があった。その影は宙に投げ出された僕の身体に向かって跳び、抱きかかえてくれた。ここまで身体を張ってくれるのはドドしかいない。
「え!? レグネッタさん!?」
僕の予想は外れた。あのレグネッタさんがビルから投げ出された僕を抱き締めてくれていた。
「馬鹿、動くな。しっかり掴まってろ」
そう言って、右手に持つ黒い銃から黄光の鞭を伸ばす。その先端がセントラルタワーを囲む外側のビルの壁面へと突き刺さる。
振り返ると、先程までいたセントラルタワーのフロアからあのセキュリティマシンが飛び上がっていた。背中からジェット噴射し、宙を飛んでいる。
「レグネッタさん、あいつが来ます!」
「馬鹿野郎! 私は今両手塞がってんだ! お前がなんとかしろ!」
至近距離でレグネッタさんの怒声を浴び、僕は謝りながらも眼下にあった中庭に生えている樹木を引き抜き、それをあのマシン目掛けて飛ばす。
不意の攻撃を受けたからか、あのマシンの動きが一瞬止まったが、樹木をその鉄拳で何度も殴り粉砕した。
「野郎っ! これ以上、想に手出しさせてたまるか!」
叫んでいたのはトロイだった。あのフロアの窓辺からトロイのドッペルが何人も肩に足を乗せた状態で繋がり、それはセキュリティマシンへと伸びていく。
「追いついたぜー? くらえー!」
先端のドッペルが、宙を飛ぶセキュリティマシンに向けて左腕からサイドワインダーを射出していた。
至近距離からミサイルの直撃をくらったセキュリティマシンだったが、自身の身体に纒わり付くトロイのドッペルを振り払おうとし、宙で藻掻いている。
そこへ、セントラルタワーの窓辺に立つトロイ本体が次々にサイドワインダーを放っていた。
「待ってろ想! 俺が行く!」
更にドドが飛び出した。セキュリティマシンへと繋がっていたトロイのドッペル達の上を、ドドは駆け上って行く。土台にされたドッペル達は呻き声を上げているが、なんとか持ち堪えているようだ。
「とっととくたばりやがれ!」
セキュリティマシンへと追いついたドドは、その背後から後頭部に向けて、素手で殴っていた。
「ぐおっ!」
あまりの硬さにドドは呻き声を上げ、その拳から血が飛び散るが、それでもその拳をそのまま振り切った。
「あいつ、本物の馬鹿野郎か?」
レグネッタさんはバブーンから伸びる黄光の鞭を縮めて外側のビルの窓を蹴りで割り、建物内に僕を運んでくれ、そして笑っている。
「ラウディさんも言ってました。ドドはそういう男なんです」
僕も彼の行動に嬉しくなり、思わず笑みが零れた。そして、地上の中庭にあったベンチを飛ばしてそれをドドの足場にして宙に浮かせる。
「想様は、わたくしのために……わたくしを守って……よくも想様をー!」
ミルがいた。テリファイアによってセキュリティマシンの頭上に現れたミルは釘バットを手にし、それをそのまま振り下ろす。
「許しません! 叩き落としてやりますわ!」
ミルは落下しながらもセキュリティマシンの背面にあるジェット装置を釘バットで殴り、破壊していく。トロイのミサイル攻撃を何度も受けたからか、あの鋼鉄ボディは既にボロボロになっていた。
「爆破させてあげますわ! ぶっ飛びなさいませ!」
内部が剥き出しになったセキュリティマシンの背面に、ミルはダイナマイトを詰め込んだ。
そこから上空へと瞬間移動してから銃を連射し、ダイナマイトは爆発した。あの鋼鉄の巨人はそのパーツを撒き散らして木っ端微塵になっていた。
「全く。どいつもこいつも馬鹿だな。お前もだ想。あまり無茶するな。私がレンビーに怒られる」
レグネッタさんはタバコに火を付けてからそう言った。
「みんなが頑張ってるのに、僕だけ怠けている訳にもいかないので。でも、まさかレグネッタさんが助けてくれるとは思ってませんでした。ありがとうございます」
僕が改めてお礼を言うと、レグネッタさんはバツが悪そうな顔をした。照れ隠しなのかもしれない。
「想様ー! 大丈夫でございますかー!?」
ミルが僕達の所に現れ心配してくれた。
「大丈夫だよ、ちょっとまだ痛いけど」
そう言って僕は腹部を摩る。
ドドを乗せていたベンチにトロイも乗せ、2人を近くまで運んだ。
「いやー、見事な勝利だ! これぞ、友情の力ってやつだな!」
トロイはそう言ってドドと肩を組んで喜んでいた。
「調子に乗るな。まだファイナイトに辿り着いてさえいないんだ」
レグネッタさんの言う通りだ。まだ道中の障害を排除したに過ぎない。
「あのセキュリティマシンはどうなっていたんだ? 暴走状態だったのかな?」
「いや、あいつは最新型だった。暴走するケースはほぼないな。それに、この会社で普段から運用していたとも思えない。あれは、白髪坊主が操ってたんじゃねぇかな?」
トロイの説明を受けて僕も納得する。正常に作動していたら、特殊部隊を襲う事もなかっただろう。
「クソガキ……あいつの頭に風穴あけてやる」
レグネッタさんが静かに怒っている。先程は助けてくれたが、今でもまだこの女性が怖くてたまらない。
「しっかし、これからどうする? また中央のビルまで戻るか? それともこの外側から攻めて行くか?」
僕の力で空中に浮いていたベンチから降り、ビル内に立ったドドが聞いてきた。トロイも続いてこちらにやってくる。
先程いたセントラルタワーが5階だった。そして、今いる外側のビルは8階だ。13階まであるようだが、このまま最上階まで登る事も出来そうだ。僕のグラインド、ミルのグラインド、そしてレグネッタさんの鞭、方法はいくらでもある。
――――ゴガガガガーンッ!
その時、セントラルタワーの上の方で大きな爆発が起きた。それは、僕達がいる外側のビルも揺るがす程の衝撃だった。
「なんですの!? 何が起きましたの!?」
ミルが窓辺の縁に掴まりながら叫んだ。
爆発が起きた場所を見ると、セントラルタワー上方の壁が大きく抉られるように破壊されていた。
その爆煙の向こうに、小さな人影が見える。ファイナイトだ。
「ファイナイト……そこに、いるのか」
僕の呟き声など届くはずはなかったが、白髪の少年はしっかりと僕達を見下ろしていた。
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