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47: 恋人で遊び友達、なんてちょっと幸せ過ぎません??

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「ネオン、こっちも味見してみる?」

「うん、ありがと……って、マドラースプーンじゃないか!もう俺は引っ掛からないぞ!」

「ハハハ、残念!」

スッとマドラースプーンをストローみたいに差し出されて、危うく咥えそうになった俺が怒ると、ジュリアは実に可笑しそうにケラケラと笑う。くそう、覚えてろよー!

「ハハハ、ごめんて。さっきのが可愛かったから、もう一回見たかったんだよ。揶揄ってごめんって♪」

「まぁ、確かに。あれは自分でも可笑しかったからな。ハハハ…!」

ジュリアの可愛い発言にいちいち跳ねる心臓を宥め、俺も笑ってドリンクの中の四角をつつく。

「ん!美味しい♪」

どうやら四角はゼリーだったらしく、口の中でプルプルしながら砕けて南国の風味を漂わせた。

「最近人気のクリームソーダパンチだそうだ♪あ、パイナップルみっけ♡」

ん?今のワントーン上がった声、もしかしてジュリアはパイナップル好き?覚えておこう。

「あ、この半透明の四角、ぐにっとしてる。」

ナタデココというらしい南の国の食べ物なんだとか。
港町なので舶来品が手に入りやすく、こういった平民向けのカフェでも提供できるんだと胸を張る店主の話に耳を傾けながら、俺はツルツルプルプルとパンチを頬張った。

ふと、窓から見える海を眺めれば、大きな白い雲に蒼い海、小さな船とカモメ達がまるで絵画の様で。

綺麗なティファニーブルーになったソーダパンチ越しに景色を見たりと、俺はちょっと遊び始めた。

「フフ、見て見て、ジュリア。こーすると船を海に閉じこめたみたいだ♪」

「お、何だ?難破船ごっこ?いいね♪ほーら、深海の巨大鮫が目を醒ましたぞー♪」

「わ、何すんだよジュリア!ぇ、それ鮫だったの??わぁー!まるで冒険譚じゃないか~!ハハハ!」

ジュリアに見せたら、いきなりマドラースプーンで底をグルグル掻き回し、沈んでた大きな魚形のナニかを動かした。
途端に、嵐で渦に巻き込まれて立ち往生し、鮫まで出て来て絶体絶命のピンチ!なストーリーが見えるから不思議だ。

「ほーら、隣の海域から悪魔の巨大蛸も匂いに釣られてやってきたぞー♪」

「わわわ、ホントにタコだ!えー凄い、ピンチだよピンチ、大ピンチだよ!アッハッハ!」

どうやら鮫と蛸はグミで出来てるらしい。水分を吸ってぷっくりキラキラした蛸が、ジュリアの群青色のグラスからマドラースプーンに操られてずるずるとグラスの壁を這い登り、俺のグラスにずるりと滑り落ちてくる。

俺達はすっかり難破船ごっこに夢中になってしまっていた。

結局、蛸との壮絶な闘いの末敗れた鮫は水面にプカリと浮かんで、天に召されて俺の口に入った。

その大きなレモネード味の鮫を噛み締めながら、ふと、昔こういう風に遊んだのを思い出す。

俺は五歳から離れに一人で住んでたし、家族と一緒に住んでた頃も、優秀なα基準で詰め込まれる学業と叩き込まれる武術であっぷあっぷしてたから、誰かと遊ぶなんて事は殆んど無かった。

だけど、一人暮らしを気の毒に思われてたのか、俺の予算を管理している執事の一人が割とオモチャや冒険譚みたいな本に予算を割いてくれてて、どうも他の兄弟姉妹より遥かに沢山のオモチャや本に囲まれる生活だったらしい。

その執事が遊んでくれる事は無かったけど、彼はオモチャを買いに行く時、いつもオモチャ商店に俺を連れて行ってくれた。
大きな螺旋階段と機械仕掛けの人形が踊る時計がトレードマークの店で、いつも裕福な平民の子達がオモチャを選んでいた。

俺はその先客のちっちゃなお兄さんやお姉さんに遊んで貰いながら、オモチャの遊び方を学んだっけ……。

あれは、オモチャがあっても遊び方を知らなきゃ遊べないだろう、という執事の配慮だったのかもしれない。
年に何度も無かったけれど、オモチャを買いに行くのは、いつも凄く楽しみだった。

お陰で一人遊びの時も、(イマジナリーフレンドって言うらしいが)お兄さんお姉さんと一緒に遊んでるつもりで遊んでたから、全然淋しくはなかった。
でも、いつか本物の友達とこうやって遊びたいって思ってたっけ……。

そうだ、ずっとオキナとも遊びたかったんだけど、結局一度も誘えずじまいだった。

Ωからαを誘っちゃいけないって習ってたから…。

「フフ、子供の頃を思い出すな……懐かしい♪」

「ハハハハ、俺も若干夢中になってたよ。はぁ、楽しかった♪」

「あ、パイナップルだジュリア、はい、あーん♡」

懐かしい気持ちになってパンチを飲んでたら、パイナップルが出てきたのでジュリアに差し出してみる。

「え、くれるの?あーん♡やった、パイナップル♪」

どうやらパイナップル好きで確定みたいだ。パッと明るい笑顔でパイナップルを食べるジュリアに、胸がムズ痒くなる。ジュリア可愛い。

「お返しに悪魔の巨大蛸どーぞ♪」

鮫に勝ったものの、疲れ切った所を勇者に聖剣マドラースプーンでトドメを刺され、海底に沈んでた悪魔の巨大蛸が俺の口に運ばれる。そうか、天に召されたのか…。

「え?いいの?ありがとう!……ん、蛸はチェリーとコーラの味がする♪」

沢山遊んで沢山笑って、すっかり暖まった俺達は、平和になったソーダの海を飲み干してカフェを出た。

ちょっと店主が、やれやれバカップルめ……と言わんばかりの砂狐顔で俺達を見てたけど、そこは気にしない♪気にしなーい♪

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