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大会初日
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大会当日、街は大賑わいだった。武術大会とはすなわちお祭りである。特に今年は王が足を運んでいるのだ。商人たちもここぞとばかりに、店を開き、道行く人に声をかけ、自慢の商品を喧伝していた。
その熱気は闘技場も同様、いやそれ以上で、闘士たちが闘いあうのを観客たちは時に声援を、時に罵声を送りながら応援していた。
そんな中、周囲にまぎれ、物静かに見ている人間が二人いた。ミアとラングである。ミアは腕を頭の後ろで組み、闘技場の様子を興味深そうに見ていた。
「最初は生き残り戦なんだな」
ミアの問いに答えるように、ラングが解説する。
「みたいだな。例年なら、一対一のトーナメントなんだが、今年は参加人数が多すぎるからな。8組に分けて、乱戦をさせて、その中で二人生き残った者を、トーナメントに進ませる形式にしたみたいだ」
「ほう。面白いな。戦場形式というわけか」
「ああ、まあ第三軍が有利になるようにだな。案の定、この組は将軍と副将が残りそうだ」
「そうだな、あの二人はずば抜けている」
「特にシバ将軍だな。噂には聞いていたが、あの薙刀というのはリーチが長くて厄介そうだな」
「ああ、予想もつかない方向からの、特に足元への一撃は知らない人間が見れば苦戦するだろう」
「だな。それにあの副将。あれも相当やる」
「少し剣に生真面目さが見えるがな。いい所の出か?」
「ああ、確かこの国の伯爵家出身だったはずだ。本来なら気位が高いはずだが、異国出身の将軍に従っているところを見ると、心底惚れているんだろうな」
「女としてか?」
「意地悪なこと言ってやるない。将としてさ」
「ははっ。すまんすまん。ここまで実力がはっきりしていると退屈でな」
「まあ、わからんでもないが......お? 決まったか?」
二人が軽口を叩きあっている間に、試合は終わっていた。シバ将軍と副将が互いの健闘を称えあい、ハイタッチを交わしていた。
一方、その頃、控室では静かに烈が自分の出番を待っていた。
(視線を感じるな)
烈が閉じていた目をゆっくりと開け、こちらも見ていることを悟られぬよう、周囲を見渡した。
(強い視線を感じるのは、昨日の第三軍の連中だな。どうやら相当嫌われたらしい。それに、昨日も練習場にいた連中......あとは......奴隷の人たち?)
「あ......あの......」
その時、烈に声をかけるものがいた。烈がゆっくりと、その方向へ顔を向けると、そこには昨日の弓をもった奴隷の少女がいた。烈は彼女へニコリとほほ笑む。
「やあ、君か」
「あ! はい! あの......」
「?」
「き......昨日はありがとうございました!」
少女はぺこりと頭を下げる。昨日、キョウカが去っていくのを見送り、烈が振り向いたときには、少女は奴隷の仲間たちに守られるように連れていかれたのだった。
「ああ、気にしなくていい。悪いのはあいつらだ」
「そういうわけにもいかんさ」
いつの間にか、烈と少女の前には奴隷の男たちが壁を作っていた。皆、筋骨隆々で傷だらけだった。その中で特に体格が良く、口ひげを蓄えた大男が一歩進み出て、烈に声をかけた。長身の烈よりもさらに背が高い。まるで山のようだ。
「俺の名前はダストン。よろしくな勇者よ」
「よろしく。ダストン。俺はレツ・タチバナだ。だが、勇者なんて大層なものじゃないからやめてくれると助かる」
「いや、お前は勇者だ。普通ならばあの状況でルルを助けるために、正規軍には逆らわない」
「ルル?」
「昨日、お前が助けてくれたのがルルだ」
ルルがまたぺこりと頭を下げた。
「そうか。だが、あれは俺が個人的に気に入らなかっただけだ。本当に気にすることはない」
「ああ、そうなんだろう。だが、彼女は俺たちにとっても特別なんだ。助けてくれて本当に感謝している」
「特別?」
「我らは、今はなき、モニカ王国の親衛隊だったのだ。そしてルルはその王国の王女なんだ」
「王女様だったのか。それがなぜ奴隷に?」
「無論、バリ王国に滅ぼされたからよ。国民は全員奴隷に落とされ、陛下を始めとした王族は彼女以外すべて弑逆された」
その言葉に、奴隷たちは拳を血が流れるほど握りしめ、中には嗚咽するものまでいた。ルルも俯き、涙をこらえてるようだった。
「そうか......なんと言えばいいのかわからんが......だが、全員というのは妙だな。そんなことをすれば反乱の火種となりそうだが」
「前王ならばそんなことはなかった。他国ながら尊敬に値する王であった。だが、当代の王は残酷な男だ。支配した土地の人間を弄ぶような男だ」
「なるほど......」
考え込む烈に、ダストンはすっと手を差し伸べた。
「昨日は久しぶりにすっとした。俺らは自由のために戦っている。試合で会えば手加減することはできんが、正々堂々と戦わせてくれ」
「ああ、望むところだ」
そういって、烈とダストンは男と男の握手をがっとして、互いに誓いを立てたのだった。
その熱気は闘技場も同様、いやそれ以上で、闘士たちが闘いあうのを観客たちは時に声援を、時に罵声を送りながら応援していた。
そんな中、周囲にまぎれ、物静かに見ている人間が二人いた。ミアとラングである。ミアは腕を頭の後ろで組み、闘技場の様子を興味深そうに見ていた。
「最初は生き残り戦なんだな」
ミアの問いに答えるように、ラングが解説する。
「みたいだな。例年なら、一対一のトーナメントなんだが、今年は参加人数が多すぎるからな。8組に分けて、乱戦をさせて、その中で二人生き残った者を、トーナメントに進ませる形式にしたみたいだ」
「ほう。面白いな。戦場形式というわけか」
「ああ、まあ第三軍が有利になるようにだな。案の定、この組は将軍と副将が残りそうだ」
「そうだな、あの二人はずば抜けている」
「特にシバ将軍だな。噂には聞いていたが、あの薙刀というのはリーチが長くて厄介そうだな」
「ああ、予想もつかない方向からの、特に足元への一撃は知らない人間が見れば苦戦するだろう」
「だな。それにあの副将。あれも相当やる」
「少し剣に生真面目さが見えるがな。いい所の出か?」
「ああ、確かこの国の伯爵家出身だったはずだ。本来なら気位が高いはずだが、異国出身の将軍に従っているところを見ると、心底惚れているんだろうな」
「女としてか?」
「意地悪なこと言ってやるない。将としてさ」
「ははっ。すまんすまん。ここまで実力がはっきりしていると退屈でな」
「まあ、わからんでもないが......お? 決まったか?」
二人が軽口を叩きあっている間に、試合は終わっていた。シバ将軍と副将が互いの健闘を称えあい、ハイタッチを交わしていた。
一方、その頃、控室では静かに烈が自分の出番を待っていた。
(視線を感じるな)
烈が閉じていた目をゆっくりと開け、こちらも見ていることを悟られぬよう、周囲を見渡した。
(強い視線を感じるのは、昨日の第三軍の連中だな。どうやら相当嫌われたらしい。それに、昨日も練習場にいた連中......あとは......奴隷の人たち?)
「あ......あの......」
その時、烈に声をかけるものがいた。烈がゆっくりと、その方向へ顔を向けると、そこには昨日の弓をもった奴隷の少女がいた。烈は彼女へニコリとほほ笑む。
「やあ、君か」
「あ! はい! あの......」
「?」
「き......昨日はありがとうございました!」
少女はぺこりと頭を下げる。昨日、キョウカが去っていくのを見送り、烈が振り向いたときには、少女は奴隷の仲間たちに守られるように連れていかれたのだった。
「ああ、気にしなくていい。悪いのはあいつらだ」
「そういうわけにもいかんさ」
いつの間にか、烈と少女の前には奴隷の男たちが壁を作っていた。皆、筋骨隆々で傷だらけだった。その中で特に体格が良く、口ひげを蓄えた大男が一歩進み出て、烈に声をかけた。長身の烈よりもさらに背が高い。まるで山のようだ。
「俺の名前はダストン。よろしくな勇者よ」
「よろしく。ダストン。俺はレツ・タチバナだ。だが、勇者なんて大層なものじゃないからやめてくれると助かる」
「いや、お前は勇者だ。普通ならばあの状況でルルを助けるために、正規軍には逆らわない」
「ルル?」
「昨日、お前が助けてくれたのがルルだ」
ルルがまたぺこりと頭を下げた。
「そうか。だが、あれは俺が個人的に気に入らなかっただけだ。本当に気にすることはない」
「ああ、そうなんだろう。だが、彼女は俺たちにとっても特別なんだ。助けてくれて本当に感謝している」
「特別?」
「我らは、今はなき、モニカ王国の親衛隊だったのだ。そしてルルはその王国の王女なんだ」
「王女様だったのか。それがなぜ奴隷に?」
「無論、バリ王国に滅ぼされたからよ。国民は全員奴隷に落とされ、陛下を始めとした王族は彼女以外すべて弑逆された」
その言葉に、奴隷たちは拳を血が流れるほど握りしめ、中には嗚咽するものまでいた。ルルも俯き、涙をこらえてるようだった。
「そうか......なんと言えばいいのかわからんが......だが、全員というのは妙だな。そんなことをすれば反乱の火種となりそうだが」
「前王ならばそんなことはなかった。他国ながら尊敬に値する王であった。だが、当代の王は残酷な男だ。支配した土地の人間を弄ぶような男だ」
「なるほど......」
考え込む烈に、ダストンはすっと手を差し伸べた。
「昨日は久しぶりにすっとした。俺らは自由のために戦っている。試合で会えば手加減することはできんが、正々堂々と戦わせてくれ」
「ああ、望むところだ」
そういって、烈とダストンは男と男の握手をがっとして、互いに誓いを立てたのだった。
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