異世界転移したら、死んだはずの妹が敵国の将軍に転生していた件

有沢天水

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新しい同行者

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 次の日、ミアたちは出立の支度をし、朝も日が出ない内からブレマンの街を出ようとしていた。昨晩遅くまで飲んでいたカイエン公爵は半分寝ぼけ眼で、ミアに文句を言った。

「流石に休んでおくべきじゃねえのか? なんでも根を詰めすぎるとうまくいかねえもんだぜ?」

 カイエン公爵の忠告に、ミアは少し笑って首を横に振った。

「いや、師匠をこちらの陣営に引き込めた以上、一日の遅れが命取りになる。相手はペルセウスだからな。ヘグネの谷からこのブレマンに戻るまでに王都にはバウワーの戦死が伝わっているだろう。すでに次の手を打っているはずだし、あるいはバウワー出立の時点ですでに......ということも考えられる」

「ふむ。確かにあの男ならその程度はやりそうであるが......」

「ああ、だから師匠たちもなるべく早く本隊と合流してくれ。さすがに雷迅衆相手に不十分な戦力で打てる策は少ないはずだからな」

「ふむ......とすると、ペルセウスの次の手は戦力を増強することか」

「ああ。東の大領地か、南のハイデッカー公爵の領地か、あるいは......」

「外国か? 援軍を頼もうにも交渉できる材料は少ないように思うがな。それより俺はレツがやりあったっていう傭兵団の方が気になるぜ」

「ありえるでしょうな。『暁の鷲』は任務に失敗したわけですから、何かしらの『補填』をしてもおかしくはない」

 ミアの意見を聞いて、カイエン公爵は諦めたように肩をすくめた。

「まあ、今のところ悩んでも仕方ないか。なんだかんだであっちは官軍。こっちは賊軍だ。あっちの方がとれる策は多いわけだ。お前たちはこれからハイデッカーの小僧の所に行くのか? あいつは王都で幽閉中だと聞いたが」

「いや、彼の領地は親族が私にあまりいい印象を抱いていないからな。味方にするより中立でいてもらおうと思っている」

「おいおい? それだと戦力が足りねえだろ。シリウスも俺も出せる軍勢って意味じゃハイデッカーの半分程度だ。あそこがお前の軍勢の要みたいなものだろう?」

「まあ、そうなんだが、ちょっとあてがあってな。上手くいけば半数程度でもどうにか対抗できるかと思ってる」

「本当かよ? やる前から分かってる負け戦は勘弁だぜ?」

「おや? 師匠が参戦するからやる前からすべて勝ち戦だと思ってるんだが?」

「うるせえ! くだらねえこと言ってねえで、さっさと少しでも兵力差を埋めやがれ。近衛兵団にペルセウスの野郎の領主軍だけでも大きく水あけられてんだろ!」

「はっはっは! いや本当に不利な状況ばかりで参った参った」

「......ったく......」

 ミアの豪快さにさしものカイエン公爵も呆れたように、しかしどこか懐かしそうに彼女のことを見ていた。カイエン公爵はふっと一息つくと話題を変えた。

「それより、うちの娘のこと頼んだぜ?」

「それはもちろんだ。可愛いだからな」

「ああ、厳しくしてやってくれ」

 カイエン公爵の視線の先には旅支度を整えた、アイネの姿があった。荷物を愛馬に載せ、出立の準備はできていると鼻息を荒くしていた。

「父上! いい加減、殿下を解放してください! 遅れてしまいます!」

「やかましい! まったく、親の気持ちも知らねえで......」

 カイエン公爵が嘆息した。戦勝の後、ミアがブレマンの街に到着した次の日に出立することを聞きつけたアイネは、どうしてもミアの力になりたいと、ゴネを通し続けたのであった。二日ほど粘られたカイエン公爵はついに観念し、アイネの同行をミアに願い出たのであった。

 出立を今か今かと待ち侘びているアイネを、烈は苦笑してみていた。

「昨日のはそういうことだったのか」

 アイネはふんっとそっぽ向いて答えた。

「そうではない。そうではないが、一緒に旅をする仲間にいつまでも礼儀を欠いたことをし続けられないのも事実だ」

 素直ではないアイネに、ラングもルルも汗を垂らしてははっと乾いた声で笑った。ここまで意地を貫ける人間も珍しい。

「だいぶ、でこぼこパーティーになったな」

 カイエン公爵が遠巻きにその様子を眺めていると、ミアはにやりと笑った。

「いや、そうでもない。これだけの面子がいれば何も怖くないよ」

 ミアの言葉から、カイエン公爵は在りし日の自分たちを思い出し、自分も老いたなと苦笑する羽目になった。
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