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ヴァニタス・アッシュフィールド10歳
05
しおりを挟むアッシュフィールド本邸と俺が住む屋敷を結ぶ地下通路は、地下水脈に沿って作られている。
それはかつて、ラスティルが災害や飢饉、疫病被害に見舞われた際、アッシュフィールド家が若い娘を地下水脈の奥の奥、湖に沈める役割を担っていたからだそうだ。
しかし、ラスティル王国が成立すると、その風習は廃止された。
しばらくは地下通路として使用されたがゴーストやアンデッドモンスターが多数出現する為、出入り口を封印し、存在しなかったことにした……こんな経緯があるらしい。
「ところでスピルス、何だその子供は」
スピルスの来訪に合わせて地下通路の攻略について話を詰めよう……そうスヴェンと段取りを立てていたのだが、その日スピルスは幼い少年を連れてきた。
「この子ですか? 白兵戦担当ですが、何か?」
俺とスヴェンは顔を見合わせる。
「白兵戦担当は私が担いますとお伝えしましたよね、スピルス様」
あ、やべ。
スヴェン苛立ってら。
「えぇ、ですが良い機会ですから実際の戦闘を体験させたいと思いまして。まだ7歳ですが、将来有望なんですよ」
スピルスは怯まずニッコリと笑う。
「7歳はダメだろ流石に」
「本来であれば9歳や10歳もダメだろうと私は思いますがね」
「さぁ挨拶、挨拶」
スヴェンの営業用の笑顔が引きつっているが、スピルスは意にも介さずポンポンと子供の背中を叩き、挨拶を促す。
短い銀髪に青い瞳の少年は、俺とスヴェンに深々と頭を下げた。
「俺の名前はユスティート・ティアニー。このような姿だが騎士見習いだ。特にスヴェン殿、実戦についてご指導いただけたら幸いだ」
真面目か。
い、いや。
問題はそこではなく……。
「ユスティート・ティアニー!?」
ゲーム「アルビオンズ プレッジ」のプレイアブルキャラクター。
未来のラスティル王国騎士団長にして、未来のラスティル国王。
そして、ゲーム内でモブ敵である俺を殺す男。
英雄の卵がそこにいた。
「ヴァニタスはユスティートのことをご存じなのですか?」
「あ、いや……」
だよな。
本来、俺が知っていていい情報じゃないよな。
「ヴァニタス様、貴方はまだ懲りずに隠し事をしていますね。あとでじっくり尋問しますので、しっかりとゲロってくださいね」
おいこらスヴェン。
お前最近本性が隠せてないぞ……隠す気ないのか?
ゲームであることを伏せて、話すしかないか。
信じる信じないは、皆に任せるとして。
「尋問されなくても……今話すよ。先に言っておくが、これは予言とか予知とかそういうモンじゃねぇし、俺にそんな能力なんてねぇのは、スピルスが一番良く知ってるよな? これから俺が話すのは……7歳の時に記憶を失う代償に見た夢の話とでも思って欲しい」
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