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ヴァニタス・アッシュフィールド10歳
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しおりを挟む「皆様、お茶とお菓子のご用意ができましたよ。少し休憩されては如何ですか?」
マチルダに促されてダイニングへと向かう。
「ヴァニタス様が庭で作ってくださった、甘いお芋で作ったデザートです。色々試行錯誤してみました」
俺が錬成で作って植えたサツマイモだ。
それをスイートポテトやブリュレ、マフィンやクッキーにアレンジしたお菓子がテーブルに並んでいる。
「すげぇ! マチルダ天才だな! それに……」
俺がマチルダに伝え、実際に作って見せたレシピはひとつ……大学芋だけ。
しかもその大学芋もマチルダは完璧に再現してくれている。
「大学芋! 完璧じゃんか!」
マチルダは嬉しそうに笑う。
「私、作るのも好きですが、食べるのも好きなのです。美味しい食材を見つけると、どんな風に食べたらより美味しくなるのか、研究するのが楽しくて……だからこんな体型になってしまったのですが」
体型を気にしてしまう苦しみは俺にもよくわかる。
何しろ、前世はデブのキモオタだ。
しかも、明らかに前世より良いものを食べているのに、このヴァニタスの身体は全く太らない。
結局、親と一緒で体型もガチャで、何食べても太るし痩せない人間もいれば、何食べても太らない人間もいるのだ。
それに……。
「俺はマチルダが料理を作っている時や食べている時の笑顔や表情が好きだよ。とても魅力的だと思う。だから無理に好きなことや好きなものを我慢して痩せるより、今の楽しそうなマチルダのままでいて欲しいな」
本心を伝えたつもりだったが、マチルダは耳まで真っ赤に染めて俯いた。
「もう……相変わらずヴァニタス様はお優しいんですから。ダメですよ、他の女の子に軽々しくそんなことを言っては。泣かせてしまいます」
スピルスがうんうんと頷いている。
俺、何か変なことを言っただろうか?
「ヴァニタス様。貴方は先程、夢ではこの屋敷は廃墟で、ご自身は幽閉されていなかったとおっしゃっていましたね」
マチルダのお菓子に舌鼓を打っていると、スヴェンが呟いた。
俺は頷く。
「俺が、本来知る筈のないこの屋敷について尋ねたから、親父はこの屋敷に俺を幽閉することを思いついた。巻き込んでしまったスヴェンとマチルダには申し訳ないことをしたと思ってる」
「マドリーン様と再婚された公爵様がいらっしゃる、今のアッシュフィールド本邸にそのまま勤めることになっていたら、とっくの昔に公爵様の頭に辞表を叩きつけて執事を辞めていたと思いますが」
スヴェン、本性出てる出てる。
しかもこの世界に辞表あるんだ。
「失礼しました。お尋ねしたいのはそこではなく……。ヴァニタス様、行動次第で未来は変えられる可能性がある……ということですよね?」
そう俺に尋ねるスヴェンの表情は切なげだ。
そんな俺たちを見て、スピルスが口を開く。
「そういえば、スヴェンは陛下がお家騒動に巻き込まれて国外に避難した時、護衛をされたことがあると噂で聞きましたが」
「えぇ……真実です。国王になった時に騎士になるか護衛を続けるように頼まれたのですが、思うところがあって断りました。しかし……」
「王が魔物に襲われる、殺されるなら話は別……と」
スヴェンは頷いた。
「王を守りたいのです。救いたいのです。……アイツは、色んな意味で大切なヤツなんだ」
最後の言葉は聞き取れるか聞き取れないかわからないくらいの小声だったが、スヴェンの想いが滲み出ていた。
「ですが、まずは目下の心配事を片づけることからです。地下通路、そして可能であれば地下水脈全体の攻略を優先させましょう」
そう言い切ったスヴェンは大人だ。
今のスヴェンは20代前半で、39歳で死んだ前世の俺からしたらかなり年下なのだが、随分大人だ。
俺は目を細めてスヴェンを見た。
スヴェンのことは心の底から尊敬しているし、同時に、彼のような男になりたいと俺は思う。
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