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真の主人公登場
03
しおりを挟むアルビオンは今は亡きアリスティア王国に住んでいたアリスの一族の生き残りである。
アリスの一族が持つ赤い瞳は、魔法や神秘の解析や魔法を使う魔法士の心根なんかも見通すことが出来るらしい。
アルビオン曰く、今の俺は「大切な人たちを守るため」「大切な人の幸福を維持するため」領域魔法を公使しているが、「領域内から搾取するため」「領域内の者を支配下に置くため」といった動機で領域魔法を使うと、同じ領域魔法でも魔法の色が変わるらしい。
メモリアの存在は神秘に属するらしく、アルビオンの眼にはメモリアという一人の少女と、無数の少女の亡霊の姿がブレるようにして見えるらしい。
また、魔力を持たない人間でも喜びや幸福感、怒りや絶望など、今持っている感情が見えるらしい。
同時に、本音と建前で分けて話している場合、強い違和感と共に本音の方が透けて見えるそうだ。
そういった特殊な瞳を持つアリスの一族が住むアリスティアは、人間によって滅ぼされた。
アルビオンの父親は身重の母親を連れてアリスティアを脱出したものの、アルビオン出産と引き換えに死亡。
アルビオンの父親が男手ひとつでアルビオンを育てながら、逃亡も兼ねて各地を旅して回ったが、そんな父親も昨年病で亡くなったそうだ。
アルビオンは人間を恨んでもおかしくなくて、実際「アルビオンズ プレッジ」では、物語開始直後は人間不信のような言葉がたまにこぼれていた。
ゲーム内でユスティートを含めて様々な人間と出会い、信頼し信頼される中で人間を信じるようになっていく。
しかし、今は“ゲーム開始前”。
唯一の味方である父親を失ったばかりで、人間不信は最高潮のはずなのだが……。
「それっぽい発言、しねぇよなぁ」
スピルスは若干苦手っぽくって、アイツが来るとアルビオンは姿を消すが、それ以外の人間……俺やマチルダやスヴェン、そしてユスティートには普通に接してくる。
すると、俺が見ていることに気づいたメモリアが手を振った。
「終わったんならヴァニタスも食べさないよー」
あれ程アッシュフィールド家の人間を憎悪していたメモリアの変化に嬉しくなって笑って手を振る。
「今食っちまうとマチルダの朝メシが食えなくなるから俺はいいぜ。メモリアが食べろよ。アルビオンは控え目にしとけよ。朝メシ食えなかったらマチルダ泣くぞ」
「了解! っていうか、私もマチルダの朝ご飯食べてみたいわ」
「すっごく美味しいよー。俺はまだまだ余裕で腹ペコだから、ヴァニタスも安心してねー。おかわりいけちゃうよー」
「いや。そこはあんた、少しは遠慮しなさいよ」
アルビオンとメモリアのやり取りに思わずクスクスと笑いながら、最後の仕上げに歌う。
……これでよしっと。
俺は蜂蜜の飴を口の中に放り込んで2人の元に向かう。
「俺もマチルダみたいな料理作りたくて、いろいろ教えてもらってんだけど、なかなかあのレベルには到達できねぇんだよな……」
本当に、料理の世界は奥深いと思う。
前世でもっと勉強しておけばよかった。
「ヴァニタスもかなり上手くなってるよー。最初は屋敷の主人が料理だとか畑仕事してるのに驚いたけど……うん、ヴァニタスの料理もすごく美味しいよ」
「この子、ラスティルの街では悪魔憑きって呼ばれてるみたいだけど、確かにちょっと世間一般のお貴族様とは違うのよね。というかあんた、今度あんたの作った料理を持ってきなさい。私が味見してあげる」
まぁ、元庶民というか……むしろ日本じゃ最下層の非正規雇用だったし。
貴族の令息に転生しても何もかもやってもらうだけってのも何だか落ち着かねぇんだよな。
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