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共に生きる
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「ほんまにええの?」
燎悟の問いに彰巳は頷く。
あかりの入院している病院。
その廊下を彰巳と燎悟は歩いていた。
奈津美があかりに投与していた薬は筋弛緩剤だったようだ。
あかりの命に別状はなかった。
《ドグラマグラ》からの常人の生還者は、稀に《胎児》を抱える《母体》となることもある。
だが、あかりは普通の人間のままだった。
眠っていたことが功を奏したらしい。
しかし、彰巳が《母体》であることは変わらない。
《母体》は寿命が短く、奈津美や颯志のように発狂して《ドグラマグラ》を引き起こし、周囲の人間を怪異に巻き込むこともある。
「だから、話す。俺の抱える怪異と危険性を……あかりに」
あかりの入院する真っ白な病室。
そこで彰巳は全てを話した。
燎悟の説明も交えながら、事件の真相を。
園村奈津美と柚希颯志の顛末を。
奈津美と颯志が抱える闇……《胎児》を自身も抱えていること。
《胎児》を抱える者は寿命が短く、また周囲の者を巻き込み発狂する可能性があることを彰巳は全てあかりに語った。
「俺自身、今回の事件に巻き込まれるまで、正直俺の抱えるモノについてよく理解していなかった」
「……うん」
「でも、園村さんや柚希の最期を目の当たりにして……悟った。この結末を、やがて俺自身も迎えるのだと」
「…………」
ベッドの上のあかりは、しっかりと彰巳を見据え、彼の言葉に耳を傾けている。
「園村さんや柚希のように、やがて俺も発狂するかもしれない。怪異を引き起こして、お前を巻き込むかもしれない」
「…………」
「それでも、今までと変わらず俺の隣にいてくれるか?」
ここであかりが拒絶したら、彰巳は姿を消すつもりでいた。
職場を退職して、暁市を離れるつもりでいた。
だが……。
「もちろん。私は彰巳がどんな爆弾を抱えていても、寿命が短くて私を置いてすぐに逝ってしまうとしても、彰巳の隣にいるよ」
あかりはその名の通りに眩い笑顔を浮かべた。
つられて、この病室に来るまでの間、ずっと顔を強張らせていた彰巳も、表情を緩める。
その様子を見た燎悟は、静かに病室を後にした。
「結婚しよう、あかり」
彰巳がポケットから指輪を取り出す。
あかりは笑顔で受け取った。
「はい」
あかりの左手薬指にスルスルと滑り落ちる指輪。
彰巳はあかりを抱き締めた。
「もう疑ったりしない。本心を覗き見したりしない。生ある限り、お前を信頼する……あかり」
「私もよ、彰巳」
「彰巳くん、君は救われたの? あかりちゃんと出会って、君は救われた?」
《ドグラマグラ》を発生させ、怪異と化した颯志は言った。
「救われてないよね? 海外出張であかりちゃんと離れて疑心暗鬼になるくらいだもん。あかりちゃんに君は救えない。誰にも君は救えない。君にも君は救えない。俺たちはそういう存在なんだよ」
あの時の彰巳には、唇を噛むことしかできなかった。
だが、今の彰巳は違う。
彰巳には、答えが出ていた。
(あかりに、救ってもらおうとする方が間違いだ。俺たちに、誰かを救うことなんて出来ない。そんな力、俺たち人間にはない)
(だが、共に生きることは出来る。大切な人の傍らに立ち、共に生きること。これなら《母体》となってしまった俺たちでも……俺でも、出来る筈だ)
「共に生きよう……あかり」
燎悟の問いに彰巳は頷く。
あかりの入院している病院。
その廊下を彰巳と燎悟は歩いていた。
奈津美があかりに投与していた薬は筋弛緩剤だったようだ。
あかりの命に別状はなかった。
《ドグラマグラ》からの常人の生還者は、稀に《胎児》を抱える《母体》となることもある。
だが、あかりは普通の人間のままだった。
眠っていたことが功を奏したらしい。
しかし、彰巳が《母体》であることは変わらない。
《母体》は寿命が短く、奈津美や颯志のように発狂して《ドグラマグラ》を引き起こし、周囲の人間を怪異に巻き込むこともある。
「だから、話す。俺の抱える怪異と危険性を……あかりに」
あかりの入院する真っ白な病室。
そこで彰巳は全てを話した。
燎悟の説明も交えながら、事件の真相を。
園村奈津美と柚希颯志の顛末を。
奈津美と颯志が抱える闇……《胎児》を自身も抱えていること。
《胎児》を抱える者は寿命が短く、また周囲の者を巻き込み発狂する可能性があることを彰巳は全てあかりに語った。
「俺自身、今回の事件に巻き込まれるまで、正直俺の抱えるモノについてよく理解していなかった」
「……うん」
「でも、園村さんや柚希の最期を目の当たりにして……悟った。この結末を、やがて俺自身も迎えるのだと」
「…………」
ベッドの上のあかりは、しっかりと彰巳を見据え、彼の言葉に耳を傾けている。
「園村さんや柚希のように、やがて俺も発狂するかもしれない。怪異を引き起こして、お前を巻き込むかもしれない」
「…………」
「それでも、今までと変わらず俺の隣にいてくれるか?」
ここであかりが拒絶したら、彰巳は姿を消すつもりでいた。
職場を退職して、暁市を離れるつもりでいた。
だが……。
「もちろん。私は彰巳がどんな爆弾を抱えていても、寿命が短くて私を置いてすぐに逝ってしまうとしても、彰巳の隣にいるよ」
あかりはその名の通りに眩い笑顔を浮かべた。
つられて、この病室に来るまでの間、ずっと顔を強張らせていた彰巳も、表情を緩める。
その様子を見た燎悟は、静かに病室を後にした。
「結婚しよう、あかり」
彰巳がポケットから指輪を取り出す。
あかりは笑顔で受け取った。
「はい」
あかりの左手薬指にスルスルと滑り落ちる指輪。
彰巳はあかりを抱き締めた。
「もう疑ったりしない。本心を覗き見したりしない。生ある限り、お前を信頼する……あかり」
「私もよ、彰巳」
「彰巳くん、君は救われたの? あかりちゃんと出会って、君は救われた?」
《ドグラマグラ》を発生させ、怪異と化した颯志は言った。
「救われてないよね? 海外出張であかりちゃんと離れて疑心暗鬼になるくらいだもん。あかりちゃんに君は救えない。誰にも君は救えない。君にも君は救えない。俺たちはそういう存在なんだよ」
あの時の彰巳には、唇を噛むことしかできなかった。
だが、今の彰巳は違う。
彰巳には、答えが出ていた。
(あかりに、救ってもらおうとする方が間違いだ。俺たちに、誰かを救うことなんて出来ない。そんな力、俺たち人間にはない)
(だが、共に生きることは出来る。大切な人の傍らに立ち、共に生きること。これなら《母体》となってしまった俺たちでも……俺でも、出来る筈だ)
「共に生きよう……あかり」
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