血の徒花

柊 梓

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1章

五輪「邂逅」

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「はぁはぁ、」
 息を切らして数分、やっと目的地に辿り着いた。
 到達した途端、達成感と好奇心が爆発して吹き出しそうになるが、身の前の光景がそれを良しとしなかった。

 音の鳴らないサイレンが赤色に辺りを明るくする。まるで、サスペンスドラマで見る暗室に踏み込んだようだ。


 暗室は、黒煙を赤黒い色へと変貌させていた。
 ボンネットと車体の間からはみ出した赤い黒煙は、月まで届きそうなほど高く上り、夜の暗さの中へ姿を潜める。


 「何が起こったんだ、、、」

そういうと同時に、砂塵嵐が吹いてきて視界を全て奪ってしまった。

 乾いた砂塵嵐が、額に残った汗を奪い去る。

 風上の方へ目を向けると、砂が薄くなって景色がうっすらと見えた。
 ナイフを持った1人の青年が突っ込んで来た。

 とっさの判断で避けたつもりだったが、腹深くを刃先が切った。
 いや、まず避けれなかったのだ。

 避けたところに勢いを残したまま、突っ込んで来たのだ。

 避けることを先読みしての攻撃、そんなのチートじゃ無いか、、、

 自分の腹から、大量の血が溢れ出す。

 人はどれほど想像力が乏しいのだろうか。
 普段なら危機的状況に立った際、すべき行動など即答できるのに。

 脳は痛みを和らげようと、β-エンドルフィンを大量に体に送り込む。

 しかし、そんな努力も乏しく体から力が抜けていった。
 そして、自分の血でできた水溜まりに崩れ落ちた。

 視界が悪いところで戦う最強の暗殺者、それに心当たりがあった。
「ジャックザリッパー」
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