28 / 74
本編
27.サバイバル生活 二日目 聖女リリーナ②
しおりを挟む
黙々と三人は森の中を進んで行く。
当初はここまで深い森だとは思ってもいなかったが、
安易に森に入ってしまったのがここまで酷い状況になるとは。
途中、オレンジ色の見た事もない木の実がなっていた。
本来であれば絶対に食べないであろうが背に腹はかえられない。
鳥がついばんだ後が残っている実もあったので
少なくとも毒では無いであろう
三人ともそれぞれ実を手に取って匂いを嗅いだり
割って中を見て暫く様子を見ていたが、まずはダンが実を口にした。
「うぇ、苦」
残り二人はその反応を見て一口も食べずに、ぽいと実を捨ててしまった。
実際には苦いは苦いが非常に各種のビタミンを多く含んでおり
低音で煮込んで甘味を加えれば栄養も損なわずに
日陰であればある程度の保存もきく優れた実であったのだが
王城での高級料理で慣れ親しんだ味を二人とも忘れる事が出来なかったのだ。
「いつになったら迎えの兵士が来るのよ」
「知らん、王太子の俺と仮にも聖女のお前が行方知れずになったんだ
今頃は必死になって捜索しているだろうよ」
「仮にもってどう言うことよ!
本当に役に立たない兵士ね、帰ったら全員首にしてやるわ」
(父上の陛下に仕えている王城の兵士の処遇をお前がどうこう出来るわけ無いし、
そもそもいきなりバカンス行きたいと言ったのはお前だし
兵士達もダンにずっと背負われているお前に、あれこれ文句言われたくはないだろうな
もともと小煩く、傲慢な女だったが、
ここまで来ると流石に捨ててしまいたいのだが何故か思い止まってしまう。)
三人は再び歩き続けた、もうそろそろ空腹による疲労も限界だというところで
ダンが急に立ち止まった。
「どうした?」
「いえ向こうから水の流れる音が聞こえた様で」
「水の流れる音か川かも知れんな、どちらにせよ当てもない行くぞ」
「はい、殿下」
ダンを先頭にして、しばらく木々を掻き分けると眼前に川が見えた。
川の周りには、ある程度開けた河原が広がり、十分拠点を作れそうだ。
川には魚が結構いる様であまり外敵がいないのか
比較的に近くまで近寄れたが流石にダンの剣で刺し貫くのも無理があり
素手でどうにか捕まえるのも無理そうだ。
今後どうにかするにしてもとりあえずは今日の食事を確保する必要があった。
川の浅瀬やある程度の大きさの石の下には
王城で調理した後に見た事があるカニが生息していて素手でもどうにか捕まえられた。
ダンは野営の経験を生かして石を組み上げ簡単なカマドを作り、
立ち枯れした木片を森から持ちかえって来た。
その間にハーレックと聖女はカニを捕まえる事になったのだが
文句を言ってるだけでやはり聖女は全く役に立たなかった。
「ちょっと、コイツハサミで威嚇して来るんだけど、信じられない」
(カニだからなハサミもあるさ、お前も城でも食べた事くらいあるだろ)
「なんで高貴な私がこんな事をしなきゃならないのよ!!」
(お前より高貴な王太子の俺は必死に捕まえてるがな)
「ぜんぶあの悪女ルシエルのせいよ!!」
(ルシエルが悪女かどうかは別として、
今こんな状況になったのはお前のわがままのせいだがな)
袋一つ無い以上は、素手で捕まえたまま持って帰るしか無いのだが、
ギャーギャーと聖女は抵抗して来たが、
「お前の分が無くても良いのなら良いぞ」
最終的には諦めてハーレックが捕まえて弱らせたカニを渋々持って帰った。
拠点と河原をなん往復かして一人二匹分のカニを取る事が出来たのでダンの帰りを待った。
「お前、その木材はどうしたんだ?」
ダンの持って帰って来たのは、木の枝ではなく木材と呼べるレベルのもので
こんな森の中から持って帰って来るのは不自然だ。
どうも、『解体』という能力を持っているらしく
素材を利用しやすい様にバラしてくれるらしい。
生きてるカニ、死んでるカニにそれぞれ試させたが
死んでいるカニは明らかに食べられない部分が取り除かれ、
生きているカニには発動すらしなかった。
生きている人間に対して触っただけで発動出来るのなら脅威であるが、
命がないものに対してしか使えないのであれば問題がないし
素材の下拵えした事がない自分達にとっては、かなり便利な能力だ。
ハーレックは火魔法の適正は無かったが、
ごくごく弱い種火程度であれば使えるので
火を起こしてカニには直接火に突っ込んで焼いて食べた。
久しぶりの食事で休める場所も確保できたので
ハーレックもダンも久しぶりに安心できたのだが
少し元気になったせいか聖女が煩わしく騒ぎだしたので放置していたら
しばらくすると黙り込んで大人しくなった。
川で体と来ている服を洗う時にも人騒ぎあったがもはやどうでも良い。
どうせ熟睡はできないのだろうから早めに体を休める事にしたのだった。
当初はここまで深い森だとは思ってもいなかったが、
安易に森に入ってしまったのがここまで酷い状況になるとは。
途中、オレンジ色の見た事もない木の実がなっていた。
本来であれば絶対に食べないであろうが背に腹はかえられない。
鳥がついばんだ後が残っている実もあったので
少なくとも毒では無いであろう
三人ともそれぞれ実を手に取って匂いを嗅いだり
割って中を見て暫く様子を見ていたが、まずはダンが実を口にした。
「うぇ、苦」
残り二人はその反応を見て一口も食べずに、ぽいと実を捨ててしまった。
実際には苦いは苦いが非常に各種のビタミンを多く含んでおり
低音で煮込んで甘味を加えれば栄養も損なわずに
日陰であればある程度の保存もきく優れた実であったのだが
王城での高級料理で慣れ親しんだ味を二人とも忘れる事が出来なかったのだ。
「いつになったら迎えの兵士が来るのよ」
「知らん、王太子の俺と仮にも聖女のお前が行方知れずになったんだ
今頃は必死になって捜索しているだろうよ」
「仮にもってどう言うことよ!
本当に役に立たない兵士ね、帰ったら全員首にしてやるわ」
(父上の陛下に仕えている王城の兵士の処遇をお前がどうこう出来るわけ無いし、
そもそもいきなりバカンス行きたいと言ったのはお前だし
兵士達もダンにずっと背負われているお前に、あれこれ文句言われたくはないだろうな
もともと小煩く、傲慢な女だったが、
ここまで来ると流石に捨ててしまいたいのだが何故か思い止まってしまう。)
三人は再び歩き続けた、もうそろそろ空腹による疲労も限界だというところで
ダンが急に立ち止まった。
「どうした?」
「いえ向こうから水の流れる音が聞こえた様で」
「水の流れる音か川かも知れんな、どちらにせよ当てもない行くぞ」
「はい、殿下」
ダンを先頭にして、しばらく木々を掻き分けると眼前に川が見えた。
川の周りには、ある程度開けた河原が広がり、十分拠点を作れそうだ。
川には魚が結構いる様であまり外敵がいないのか
比較的に近くまで近寄れたが流石にダンの剣で刺し貫くのも無理があり
素手でどうにか捕まえるのも無理そうだ。
今後どうにかするにしてもとりあえずは今日の食事を確保する必要があった。
川の浅瀬やある程度の大きさの石の下には
王城で調理した後に見た事があるカニが生息していて素手でもどうにか捕まえられた。
ダンは野営の経験を生かして石を組み上げ簡単なカマドを作り、
立ち枯れした木片を森から持ちかえって来た。
その間にハーレックと聖女はカニを捕まえる事になったのだが
文句を言ってるだけでやはり聖女は全く役に立たなかった。
「ちょっと、コイツハサミで威嚇して来るんだけど、信じられない」
(カニだからなハサミもあるさ、お前も城でも食べた事くらいあるだろ)
「なんで高貴な私がこんな事をしなきゃならないのよ!!」
(お前より高貴な王太子の俺は必死に捕まえてるがな)
「ぜんぶあの悪女ルシエルのせいよ!!」
(ルシエルが悪女かどうかは別として、
今こんな状況になったのはお前のわがままのせいだがな)
袋一つ無い以上は、素手で捕まえたまま持って帰るしか無いのだが、
ギャーギャーと聖女は抵抗して来たが、
「お前の分が無くても良いのなら良いぞ」
最終的には諦めてハーレックが捕まえて弱らせたカニを渋々持って帰った。
拠点と河原をなん往復かして一人二匹分のカニを取る事が出来たのでダンの帰りを待った。
「お前、その木材はどうしたんだ?」
ダンの持って帰って来たのは、木の枝ではなく木材と呼べるレベルのもので
こんな森の中から持って帰って来るのは不自然だ。
どうも、『解体』という能力を持っているらしく
素材を利用しやすい様にバラしてくれるらしい。
生きてるカニ、死んでるカニにそれぞれ試させたが
死んでいるカニは明らかに食べられない部分が取り除かれ、
生きているカニには発動すらしなかった。
生きている人間に対して触っただけで発動出来るのなら脅威であるが、
命がないものに対してしか使えないのであれば問題がないし
素材の下拵えした事がない自分達にとっては、かなり便利な能力だ。
ハーレックは火魔法の適正は無かったが、
ごくごく弱い種火程度であれば使えるので
火を起こしてカニには直接火に突っ込んで焼いて食べた。
久しぶりの食事で休める場所も確保できたので
ハーレックもダンも久しぶりに安心できたのだが
少し元気になったせいか聖女が煩わしく騒ぎだしたので放置していたら
しばらくすると黙り込んで大人しくなった。
川で体と来ている服を洗う時にも人騒ぎあったがもはやどうでも良い。
どうせ熟睡はできないのだろうから早めに体を休める事にしたのだった。
1
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる
みおな
恋愛
聖女。
女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。
本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。
愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。
記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。
運命に勝てない当て馬令嬢の幕引き。
ぽんぽこ狸
恋愛
気高き公爵家令嬢オリヴィアの護衛騎士であるテオは、ある日、主に天啓を受けたと打ち明けられた。
その内容は運命の女神の聖女として召喚されたマイという少女と、オリヴィアの婚約者であるカルステンをめぐって死闘を繰り広げ命を失うというものだったらしい。
だからこそ、オリヴィアはもう何も望まない。テオは立場を失うオリヴィアの事は忘れて、自らの道を歩むようにと言われてしまう。
しかし、そんなことは出来るはずもなく、テオも将来の王妃をめぐる運命の争いの中に巻き込まれていくのだった。
五万文字いかない程度のお話です。さくっと終わりますので読者様の暇つぶしになればと思います。
【完結】私は聖女の代用品だったらしい
雨雲レーダー
恋愛
異世界に聖女として召喚された紗月。
元の世界に帰る方法を探してくれるというリュミナス王国の王であるアレクの言葉を信じて、聖女として頑張ろうと決意するが、ある日大学の後輩でもあった天音が真の聖女として召喚されてから全てが変わりはじめ、ついには身に覚えのない罪で荒野に置き去りにされてしまう。
絶望の中で手を差し伸べたのは、隣国グランツ帝国の冷酷な皇帝マティアスだった。
「俺のものになれ」
突然の言葉に唖然とするものの、行く場所も帰る場所もない紗月はしぶしぶ着いて行くことに。
だけど帝国での生活は意外と楽しくて、マティアスもそんなにイヤなやつじゃないのかも?
捨てられた聖女と孤高の皇帝が絆を深めていく一方で、リュミナス王国では次々と異変がおこっていた。
・完結まで予約投稿済みです。
・1日3回更新(7時・12時・18時)
出来損ないの私がお姉様の婚約者だった王子の呪いを解いてみた結果→
AK
恋愛
「ねえミディア。王子様と結婚してみたくはないかしら?」
ある日、意地の悪い笑顔を浮かべながらお姉様は言った。
お姉様は地味な私と違って公爵家の優秀な長女として、次期国王の最有力候補であった第一王子様と婚約を結んでいた。
しかしその王子様はある日突然不治の病に倒れ、それ以降彼に触れた人は石化して死んでしまう呪いに身を侵されてしまう。
そんは王子様を押し付けるように婚約させられた私だけど、私は光の魔力を有して生まれた聖女だったので、彼のことを救うことができるかもしれないと思った。
お姉様は厄介者と化した王子を押し付けたいだけかもしれないけれど、残念ながらお姉様の思い通りの展開にはさせない。
【完結】捨てられた聖女は王子の愛鳥を無自覚な聖なる力で助けました〜ごはんを貰ったら聖なる力が覚醒。私を捨てた方は聖女の仕組みを知らないようで
よどら文鳥
恋愛
ルリナは物心からついたころから公爵邸の庭、主にゴミ捨て場で生活させられていた。
ルリナを産んだと同時に公爵夫人は息絶えてしまったため、公爵は別の女と再婚した。
再婚相手との間に産まれたシャインを公爵令嬢の長女にしたかったがため、公爵はルリナのことが邪魔で追放させたかったのだ。
そのために姑息な手段を使ってルリナをハメていた。
だが、ルリナには聖女としての力が眠っている可能性があった。
その可能性のためにかろうじて生かしていたが、十四歳になっても聖女の力を確認できず。
ついに公爵家から追放させる最終段階に入った。
それは交流会でルリナが大恥をかいて貴族界からもルリナは貴族として人としてダメ人間だと思わせること。
公爵の思惑通りに進んだかのように見えたが、ルリナは交流会の途中で庭にある森の中へ逃げてから自体が変わる。
気絶していた白文鳥を発見。
ルリナが白文鳥を心配していたところにニルワーム第三王子がやってきて……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる