58 / 442
乗り越えた先の約束。
しおりを挟む平和な日々です。この日は久々の快晴。私は日の当たる廊下を歩いておりました。後はもう帰るだけです。
「……ヒューゴ殿」
ヒューゴ殿がああも信じていると言い切ってくれたこと。今も鮮明に思い出します。
まっすぐで真摯でもあるヒューゴ殿。私に対しても信頼を寄せてくれるのでしょう。
ええ、そんな彼なのです。好感度は壊れた器のままですが、現状悪影響は与えてないと、そう思って良いでしょう。精神になんら干渉してない、してないですわね?
あの状態の原因はプレゼント責め……だったのでしょうか。くっ、考えものですわね。猛省しなくては。
「明日、ですのね」
来る日は来てしまいました。明日はついに、五月末日。
ブリジット様と殿下の婚約発表日。駆け落ち予定日。――私の運命の日。
あれからもヒューゴ殿と交流を重ねてもきました。もう引き返せないところまできておりますから。今はもう、進むしかないのでしょうね。
「――そちらにいらしたんですか、アリアンヌ様」
声を掛けてきたのはヒューゴ殿でした。私に用があるようです。若干息が上がっていましたので、かなり捜させてしまいましたのね。
「突然な話なのと、ここではちょっと――」
温室近くの場所まで移動して参りました。ヒューゴ殿のお話になりますと。
「本当に急ですみません。以前、話していた花のこと、覚えていますか?」
「ええ、覚えておりますわ。夜に咲くと仰っていたお花でよろしくて?」
「はい。そちらが、その……ですね、明後日の夜、開花予定というか。貴女さえよければ、ですが」
「まあ」
ついにその時が来ましたのね。また、誘っていただけたことも嬉しく思えますわ。
――明後日、ですのね。婚約のお披露目後。私の運命の日の翌日でもありますのね。
「……無理にとは申しません。やはり夜遅くでもありますから。映像だけでもお渡し出来ますし」
「……ヒューゴ殿。私は直接拝見したいのです。ご相伴に預かってもよろしいかしら?」
「……!」
それが私の本音、願いです。ヒューゴ殿は驚いておられまして。
「しょ、承知しました! 一度帰宅する必要がありますが、私の方でお迎えに上がりますから。学園への侵入の手口もお任せください」
「まあ、ヒューゴ殿? 慣れてらして?」
「……ええ、まあ。夜に温室に訪れたりしてるので」
ヒューゴ殿は気まずそうにしてらした。常習犯のようですわね。意外な一面を知れましたわ。
「ふふ、私も共犯者になりますわね? お迎え、お待ちしておりますわ。なんとしても侵入してみせましょう?」
我が家の従者達の目を掻い潜る必要もありますが、そこはなんとしてもですわ。私は悪い笑みをしてみせました。
「共犯……ははっ、そうですね!」
「……!」
今度は私の方が驚くことに。本当に驚きました。そのように無邪気な笑顔もなさるのですね。
私のも楽しみが出来ました。運命の日を乗り越えたら、その先は――。
0
あなたにおすすめの小説
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
逃げたい悪役令嬢と、逃がさない王子
ねむたん
恋愛
セレスティーナ・エヴァンジェリンは今日も王宮の廊下を静かに歩きながら、ちらりと視線を横に流した。白いドレスを揺らし、愛らしく微笑むアリシア・ローゼンベルクの姿を目にするたび、彼女の胸はわずかに弾む。
(その調子よ、アリシア。もっと頑張って! あなたがしっかり王子を誘惑してくれれば、私は自由になれるのだから!)
期待に満ちた瞳で、影からこっそり彼女の奮闘を見守る。今日こそレオナルトがアリシアの魅力に落ちるかもしれない——いや、落ちてほしい。
【完結済】悪役令嬢の妹様
紫
ファンタジー
星守 真珠深(ほしもり ますみ)は社畜お局様街道をひた走る日本人女性。
そんな彼女が現在嵌っているのが『マジカルナイト・ミラクルドリーム』というベタな乙女ゲームに悪役令嬢として登場するアイシア・フォン・ラステリノーア公爵令嬢。
ぶっちゃけて言うと、ヒロイン、攻略対象共にどちらかと言えば嫌悪感しかない。しかし、何とかアイシアの断罪回避ルートはないものかと、探しに探してとうとう全ルート開き終えたのだが、全ては無駄な努力に終わってしまった。
やり場のない気持ちを抱え、気分転換にコンビニに行こうとしたら、気づけば悪楽令嬢アイシアの妹として転生していた。
―――アイシアお姉様は私が守る!
最推し悪役令嬢、アイシアお姉様の断罪回避転生ライフを今ここに開始する!
※長編版をご希望下さり、本当にありがとうございます<(_ _)>
既に書き終えた物な為、激しく拙いですが特に手直し他はしていません。
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
※小説家になろう様にも掲載させていただいています。
※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。
※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。
※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。
※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。
※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。
※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。
※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。
「婚約破棄します」その一言で悪役令嬢の人生はバラ色に
有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約破棄。それは悪役令嬢にとって、終わりではなく始まりだった。名を奪われ、社会から断罪された彼女が辿り着いたのは、辺境の小さな学び舎だった。そこには“名前を持たなかった子どもたち”が集い、自らの声と名を選び直していた。
かつて断罪された少女は、やがて王都の改革論争に巻き込まれ、制度の壁と信仰の矛盾に静かに切り込んでいく。語ることを許されなかった者たちの声が、国を揺らし始める時、悪役令嬢の“再生”と“逆襲”が静かに幕を開ける――。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
悪役令嬢だけど、私としては推しが見れたら十分なんですが?
榎夜
恋愛
私は『花の王子様』という乙女ゲームに転生した
しかも、悪役令嬢に。
いや、私の推しってさ、隠しキャラなのよね。
だから勝手にイチャついてて欲しいんだけど......
※題名変えました。なんか話と合ってないよねってずっと思ってて
『 私、悪役令嬢にはなりません! 』っていう悪役令嬢が主人公の小説の中のヒロインに転生してしまいました。
さらさ
恋愛
これはゲームの中の世界だと気が付き、自分がヒロインを貶め、断罪され落ちぶれる悪役令嬢だと気がついた時、悪役令嬢にならないよう生きていこうと決める悪役令嬢が主人公の物語・・・の中のゲームで言うヒロイン(ギャフンされる側)に転生してしまった女の子のお話し。悪役令嬢とは関わらず平凡に暮らしたいだけなのに、何故か王子様が私を狙っています?
※更新について
不定期となります。
暖かく見守って頂ければ幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる