脳筋悪役令嬢の華麗なる恋愛遊戯~ダンジョン攻略駆使して有利に進めてみせます!~

古駒フミ

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夏、到来っ!

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「んー」

 うららかな休日の昼下がり。公爵邸の庭園にて、身体を伸ばしているのは、私でございます。私は目を細めて空を見上げました。緑色の瞳に映る、晴天の空。ああ、眩しいこと。眩しくて……。

「夏、到来ですわねっ!」

 夏の日差しが眩いですわぁぁぁ! ……失礼、テンションが上がってしまいましたわ。ああ、庭師も驚かせてしまいましたわ。ごめんあそばせ。
 ここのところ雨季も含めて、長らく雨空ばかりでしたから。どこまでも晴れ渡る空ですわねぇ。私の黄金の髪も光輝いていてよ。
 こちらの夏は快適ですわ。私はドレスのままでいられますもの。とはいえ、そろそろ日陰に移動しましょうか。

「ふう……」

 私は木陰で涼む。風も心地よいですわ。

「夏ですわね……」

 そう、夏が訪れた今……私はどうするべきなのでしょうか。

 本来でしたら、五月末日でエンディングを迎えるゲーム。それがこうして続いておりますのよ? 
 私は一人の殿方とエンディングを迎えました。それでも日々は続いております。

『おそらく――――途中で日々が巻き戻る。その都度、あなたは心を通わせていくことになる』

 とある方がそう教えてくださいました。そうですわね、いずれはその時が来ますわね。

「――さて、張り切って参りましょう!」

 私は声に出して、気合を入れました。この平和な日々を堪能しつつも、出来る事をやっていこうではありませんか。

「ほほほ、おーほほほほほ!」
「……こちらにおいででしたか」

 いつもの執事服ではなく、軽装でやってきた青年。彼の名はイヴ・ポルト。昔からの従者であり、信頼に足る人物でもありますわ。

 ……それにしても、イヴ? 何故そうも呆れた顔をしているのかしら? 

「日傘、お忘れですよ」
「あら、ご苦労かけましたわね」

 イヴに手渡され、私は受け取りました。この日差しですものね、失念しておりましたわ。淑女として教育されてはきましたが、まだまだですわね。

「いつからいらっしゃったのか……顔も火照っているではありませんか」
「……そうかしら?」

 試しに自身の頬に触れてみました。……確かにでした。
 興奮していたのもありましたが、何気に熱中症予備軍だったようですわね。この寒がりに定評がある私が、ですわよ? 侮れませんわね、アルブルモンドの夏! 

「……」

 イヴは急に無言になりました。どうしたものかしら。お疲れでして?

「もう少し散策したら、戻りますわ。イヴは少し休んでは?」

 本日のイヴは雑務に追われていました。休日である本日も、ずっと缶詰状態ではありました。今の今まで休憩もとれなかったのではなくて? 

「休憩……よろしいんですか?」
「ええ、よろしくてよ」

 あなた、休んでなかったようですわね。当然の権利でありませんか。私が頷くと、イヴは、笑顔になったものの、どこか顔が赤くなっています。あなた……熱中症では!? 

「……あの、アリアンヌ様さえよければ。一緒に散策を――」
「……イヴ、室内に戻りましょう。熱中症は怖ろしいもの」
「……」
「……」

 被ってしまいましたわ。そのせいもあって、イブの発言が聞き取れませんでした。

「……そ、そうですね。戻ります。休ませていただきます」

 イヴの方は私の言葉が聞き取れていたようです。その上で、このように返答していました。

「え、ええ。それが良いと思いますわ」

 ええと、聞き取れないまま、話が進んでしまいましたわね。イヴも納得しているようですし、良かったのでしょう。

 さあ、室内に戻りましょう、そうしましょうとしていたその時。

「夕方頃、お伺いしますね。例の件の確認です」
「ええ……お願いしますわね」

 私達の『確認作業』。以前は夜だったのが、最近になってはこの時間帯になっています。従者といえど、夜に異性を招いていましたわ。考えてみれば,でしたわね。
 職務に忠実なイヴ、決して下心などないでしょう。といっても、継続してこの時間帯かより早い時間にして参りましょう。


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