脳筋悪役令嬢の華麗なる恋愛遊戯~ダンジョン攻略駆使して有利に進めてみせます!~

古駒フミ

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生身の戦闘。

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 新たなるルート。ここからは魔物も徘徊しています。お見かけした冒険者達も戦っていました。
 ……血生臭い匂いがします。現実なのですね。

「……極力、戦闘は避けてでしたわね」

 こちらのダンジョン突入前に、イヴに釘をさされました。イヴの案じる気持ちもそうですし、私も強く反対することはありませんでした。
 ゲームでは普通に倒していたりもしましたが、実際そうするとなると――殺めるとなると。魔物相手といえ、私は重く思えたのも確かでしたから。

 戦闘を避けつつ、私達は宝物を回収していました。もちろん、紫のも。

 今回のルートでも終わりがみえてきました。無事探索を終えられると思っていましたが。

「――なんですの、あんたら。うちら以外にも『ソレ』手に入れようなんて」
「!」

 お出ましですわね。私達を取り囲むのは、異国の服装の集団。リーダー格の女性は、胸部がはだけた着物のような恰好をしています。
 彼らもまた――宝箱を狙っている人々。争奪戦は避けられそうにありませんわね。

「走りますわよ!」
「はい!」

 先手必勝で私達は駆けだしていきました。追う彼ら。

 彼らも何らかの目的があって、宝箱を回収しようとしている。イヴがかつて言ってくれたように――私への妨害目的も考えられます。
 おいそれと邪魔をされるわけにはいきませんわ! 


「くっ」

 魔物を回避しながらの、宝箱を奪取。手こずっている状況ともいえました。

「イヴ、虹色の宝箱は諦めましょう」
「え、いいの?」
「……良いのです」

 苦渋の決断ではありますが、致し方ないことと思っています。
 なんというか、虹色の宝箱はどれもいやらしい所に置かれていました。取得するにも労するような場所に。それに虹色の宝箱――王太子殿下の攻略は時期尚早とも考えておりました。それ故です。

「あんた達、気張りな! 虹色のやつ、手に入れる好機やで!」
「へ、へい、姉さん! ……ひいひい」

 彼らは四苦八苦しながらも、虹色の宝箱を手に入れています。おかげで、それ以外の宝箱が入手できてますから……良しとしておきましょう。

 そうこうしている内に、最終地点がみえてきました。

「!」

 安心してはいられませんでした。今回、門番たる存在――魔物が陣取っていたのですから。
 沼地から這いよりし、泥の魔人。その者が立ちはだかっているのですから。

「お下がりください!」

 イヴが前に立ってくれるも、私は短剣を構えた。倒さない限りは――。

「ひいひい……あんたら、先には――」

 リーダーの女性が息を切らしながら、やってきました。相当体力を消耗しているようで。

「ひっ!」

 魔人は女性に狙いを変えた。彼女は足を掴まれ、沼地に引きずり込まれようとしていた。

「……!」

 何を迷っているの。魔物は人に危害を与えてきた。このダンジョンに出現する魔物だってそう。地上に降り立っては害しようとしている。

「――はあ!」

 身体が本当に軽い。私は跳躍し、魔人との距離を詰めた。短剣に力を込め――引き裂いた。

「……はあはあ」

 聞こえるのは断末魔――沼の魔人は消滅しました。私は荒い呼吸を整えながら、眺めていました。手にかけてしまった……でもこれで良かったのだと、言い聞かせるかのように。

「……立てますか」

 私は横たわった女性に手を差し出した。彼女の目線は私のうさ耳に。

「……けったいな姿してますなぁ」
「うっ……」

 まじまじと見られては、落ち着きませんわよ。それにしても、女性は中々手をとろうとはしませんわ。

「……おおきに」 
「え……」

 辛うじて聞き取れた声。女性は私の手を頼りに立ち上がりました。

「姉さーん!」
「む! 姉さんに何をしようってんだ!」

 彼女の仲間たちがやってきて、私を睨みつけてきました。誤解されるような状況なのかしら。
「……やめとき」

 諫めたのは女性でした。そして。

「借りを作るんは癪やし。今回はこのまま下がりますわ。今回だけやで!」
「ええー、姉さん!?」 

 私が声を掛ける暇もなく、女性は撤退スキルを使って去っていかれました。その、良いのでしょうか? 最終地点に着かなければ、得た報酬も無駄になってしまいますのに。

「……借りと仰ってましたし」

 彼女なりのケジメだったのでしょうね。ならば、私も心配することもないでしょう。



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