脳筋悪役令嬢の華麗なる恋愛遊戯~ダンジョン攻略駆使して有利に進めてみせます!~

古駒フミ

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新たな地は優しいけれど。

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「……」
「……」

 私たちはつかず離れずのぎこちない距離で歩いています。陽気な港町の住民たち、最終目的地は領主の邸。ご家族に対応していただき、領主様が玄関口までお越しくださいました。

「お初にお目にかかります――」

 おお、シルヴァン殿の優美なる笑顔は現役でしてよ。私を守るように立って、挨拶を交わしておりますわ。っと、シルヴァン殿に見惚れている場合ではありませんわね。私も挨拶をしませんと! 

「……。こちらで紹介させていただきますね、彼女は――」

 ……シルヴァン殿からしていただくことに。私の気のせいでしょうか、彼は牽制しているような。

「おいおいー、独占すんなよー? 俺にも挨拶させてくれよぅ、アリアンヌちゅわーん!」 
「はは、独占などと。ご挨拶は私が代わりに務めさせていただきましたので。どうかご容赦を」

 いえ、気のせいではありませんわね。道中、噂されてましたもの。こちらの領主は……女好きであられると。シルヴァン殿は微笑みは絶やさないまでも、苛立ちは隠せないようです。それを感知した領主様にいじられていますわ……。

「へっ、うちの娘と同じ年頃だろうに、自重するっつうの! そっちと違ってな!」 
「くっ……」

 シルヴァン殿、やりこめられていますわ……。ええと、まだおちょくり続けそうですわね。ここらで……。

「……ま、まあ。同じ年頃のご息女ですの? いずれお会いしたいものですわ」

 話の流れを変えつつも、私は交流してみたいという本音ももらしていました。

「もう是非是非ー! 大歓迎だし、気軽に遊びに来てくれな? ……色々あったようだけどな、俺達は迎え入れるから」
「……まあ、ありがとうございます」

 子供に向けるような温かな眼差し、私たちを招き入れてくださるのだと。胸が熱くなったのは私だけではないでしょう。

「ありがとうございます……」

 シルヴァン殿も感謝の気持ちを伝えていたのでした。


 温かな町。私たちは受け入れてもらえた。新天地でも頑張れそうです――。


 粗方の片付けや新生活の準備も済まし、夜となりました。就寝の時間となります。

「静か……」

 私は屋根裏を経て、屋根の上までやってきました。ここからがよく一望できるかと。
 山々が隔たりになっており、祖国の市街地までは見えません。小さく見えるのは空に浮かぶダンジョンくらいでしょうか。

「……お元気でしょうか」

 新生活の決意はしていても、シルヴァン殿に悩まされることになっても。頭から離れることはないのは、私たちの故郷のこと。

「……婚約破棄ですものね」

 また悲しませてしまいましたのね……。

「!?」

 屋根に上る音がしました。誰かがやってきたようです。シルヴァン殿でしょう。

「……せめて居間か庭先かと思いきや、屋根ときたかぁ」

 彼は呆れきっていました。私の隣までやってきて腰かけてきました。

「アルブルモンド、見てたのか」
「……ええ」

 私と並んで展望しているシルヴァン殿。彼もそう、懐かしむようにみています。心にも刻んでいるような。

「で、眠れないと」
「……はい」
「だよな、そうだろうな……」

 シルヴァン殿もそうなのでしょう。私同様、思い入れもあったことですから。

「アリアンヌ様、頼みがあるんだけど」
「ええ、どうぞ?」 
「――次からは一声、かけるようにして」

 とても穏やかな声。私にある感情は戸惑いと――言葉では言い表せないもの。

「……すぐには割り切れないよな。だから、一人で落ち込まれるよりはって」

 どこまでも優しい瞳で私を見つめてきていて。

「……ってのもある。俺が一人にしたくないんだ」
「……シルヴァン殿」

 真夜中の逢瀬だというのに。シルヴァン殿を無為に起こしてしまいかねないのに。

「……はい」

 私はそう答えていました。

「よかった」

 シルヴァン殿は小さく笑ってました。

「……」
「……」

 肩が触れ合いそうで、触れ合わない距離。そんな私たちは遠くにある故郷を並んで眺めていたのでした――。




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