脳筋悪役令嬢の華麗なる恋愛遊戯～ダンジョン攻略駆使して有利に進めてみせます！～

断罪の時――糾弾されし王太子。

――民の声がする。 　　

　誰しもが彼を責め立てている。怒りが、多くの恨みの気持ちが。

　これはあなたが今までしてきたこと――いわゆる断罪であるのだと。

　今、その立場に立たされているのは――エミリアン王太子殿下、あなたなのですから。

　民の怒りは収まらない。矢面に立たされているのは殿下です。彼はただ、黙って受け入れているだけ。当然であるかのように。

『……』

　これは本当に当然だというの。私は――。

『――皆様、お静まりくださいませ』

　私は彼の前に立ち、皆様に訴えかけます。どうか落ち着いてください、どうか――。

『！？　』

　私に狙いを定めて飛んできたのは小石。このままでは当たってしまいそうです。ぎりぎり避けられる、けれども。

『……っ』

　額にかすめた小石、私の額に血が伝う。ああ、あなたが投げましたのね……。

『ひっ』

　私の視線に怯えた民、当たると思っていなかったのでしょうか。

『――よいのです、殿下』

　私が痛められたことに、彼は猛ったのでしょうか。かなりお怒りの様子です。いいえ、殿下。本当によいのです。

『あなた方が憤るお気持ちもわかりますから。私にぶつけるのも結構なこと』
　思った以上に傷が入ってますわね……頭も眩みそうですわ。ですが、止めるわけにも参りませんの。

　私はあなた方の気持ちも受け止めたい――一方で。

『――これから真実をお話します。それを聞いた上でどうかお考えくださいませ』

　私が語る――真実。それがどうか、皆様方に届きますように――。


――――脳筋悪役令嬢の華麗なる恋愛遊戯。

　この世界は同人ゲームの世界。日本で暮らしていた私、小川結衣が死後に転生した世界。
　公爵家令嬢――――アリアンヌ・ボヌール。ゲームの主人公である悪役令嬢。彼女もそう、殺されてしまった。
　死亡エンドが無かった物語が、歪んでしまった。それも私の介入があってという。

　私がするべきこと、それは――――攻略対象とのエンディングを迎え、そうして物語を正していくこと。

　現時点で三名、エンディングを迎えている。攻略対象は……ついに残り一名に。隠しは今でも見当がついてない。

　さて、そろそろ戻ろう。今の私はアリアンヌ様として生きているから。


　生きとし生けるものの、生命と力の源。世界の根幹である大樹。
　ここは大樹をいただきし、栄えある国アルブルモンド。大樹の恩恵に授かりし大国。
　そして、名門と呼ばれし我らが学園――――アリエス学園が舞台となっています。

　ゲームの世界だとしても、私は今ここで生きているのです。

　わたくしは、アリアンヌ・ボヌール。華麗なる脳筋悪役令嬢として――――。