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わたくしがわかりますの?
しおりを挟む今週末に殿下たちとの予定があります。今日、この日を迎えました。
私たちは現地集合となっています。殿下のお姿は特に目立たれますもの、例の地下室にて待ち合わせですわ。
さて、自室にて準備は完了しました。ノックが聞こえてきましたが、イヴでしょう。私はいつものように彼を招き入れます。
「――さて、イヴ? あなた、例の書物はよろしいですの?」
私はこのタイミングで質問してみることにしました。イヴが借りていった例の書物――『狂王』に関することです。差し支えなければ、私も教えてもらいたいものですわ。
「……うん、まあ、複写だけはした感じかな。古語だったから解読に時間がかかって」
「そうですの……って、古語を訳せますの?」
かなり古い書物で、言語も異なるものであると。それを訳すというイヴに私、驚きましてよ。専門の知識でありますでしょうに。私も免除されるほどでしてよ……?
「辞書片手にって感じだけど。専門の先生に頼るにも内容が……」
「内容?」
「……っと。とにかくです。アリアンヌ様も気になってると思うので、なるべく早く解読はするから!」
「まあ。ですが、あまり無理はなさらないでくださいまし」
「わかってまーす」
イヴは軽く返事しながらも、鞄の中をもう一度確認していました。しっかりと書物は入っているようですわね。
「では、本日もお願いしますわね――」
約束の予定より早く到着しましたわね。ギルドは本日も賑わっていますこと。
「……」
私は上空を見上げます。今となっては水に包まれてはおらず、むき出しとなったその姿――廃墟のダンジョンといえましょう。水中ではなくなったとはいえ、魔物が出現しだした。冒険者の皆様は討伐を主に向かわれているようです。
私たちは視察――ええ、殿下がいらっしゃいますもの。宝箱やお金は途中で拾えたらいいな、くらいに思っておきましょう。御身が大事ですから。
地下室まで下りていくと、怪しい雰囲気が漂ってきますこと。爽やかな朝であれど、こちらはいつも変わりませんわね。私としましては慣れましたわ。むしろ落ち着くともいえましてよ。
部屋に入っていくと、真っ先に目に入ったのは――。
「アーリアーンヌー! ……あとは多分イヴ殿!」
「で、殿下!?」
わ、私の眼前に迫るのは――殿下でした。彼、カウンターの近くにいらっしゃったはず……私はそこまで把握していたのに……! 瞬時に距離を詰められたのですもの!
「待ってたぞー? 俺はな、ちゃんと手続きも済ませておいたぞ! 正規とかかったるいから、裏取引でな? ちゃんとやっておいたからなっ?」
「ええ、お待たせして申し訳ございませんわ……?」
「いいんだってぇ。待っている間も楽しかったからなっ」
殿下ははちきれんばかりの尻尾を振っているかのよう。こちらに裏ライセンスをお見せしてますわね……ええと、殿下?
「……アリアンヌ様だってわかってる?」
イヴがこっそり呟きましたが、私には聞こえてましてよ、イヴ! 言語化感謝いたしますわ、イヴ!
そう、今の私は変装用の仮面を着用しています。相手に対して深い思いがあるか、それとも強制的かつ催眠ともいえる思い込ませか。それらをもってして、私とわかるもの。そのはずなのに。
殿下が……私であると、そうお気づきになったのは。それは――。
「おーい、シルヴァン! アリアンヌとイヴ殿が到着したぞー。ナンパはその辺にして出発だー!」
私たちに背を向けて、殿下はカウンター席のシルヴァン殿にお声がけしていました。ああ、デジャヴでしょうか……シルヴァン殿、相手の女性は違えど話し込まれていますわね。それもかなり密着して。
「ナンパ……婦人を口説いていると? そちらは多大なる誤解でございます故――」
「はいはい、わかってるわかってる」
話していた婦人に挨拶をし、シルヴァン殿は笑顔を崩さないままこちらへ。殿下は軽く流してますわね……。
「――あとはだな? シルヴァン、態度を崩すように言ったはずだぞ?」
「失礼致しました……いや、切り替える」
ダンジョンの時には、と。そういったお話ですわね。殿下はシルヴァン殿に確認をとると、次はイヴへと目を向けられます。
「イヴ殿もだ。今、挨拶が遅れた云々言おうとしただろうけれど、本日は無礼講だ!」
「!」
ええ。イヴはきっとまだ挨拶していなかったと、そのことを口にしようとしたのですが……殿下に先手を打たれたようですわね。
「……それは」
私相手でもかかりましたもの。相手は王太子殿下。さすがにイヴも躊躇しているようですが。
「……わかった。無礼講、無礼講だね?」
「……イヴ?」
あなた、とても綺麗な笑顔ですわねー? 見ているだけのこちらの背筋が凍るほどの。ほら、殿下も一気に青褪めておりますわ。
「イヴ殿いいぞー、いったれいったれー」
……囃し立てているのはシルヴァン殿です。一人へらへら笑っていましてよ?
「な、何事も限度があるということだ! さあ、いくぞ!」
分が悪くなったと思われたのでしょうか、殿下の仕切りで出発することとなりました――。
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