脳筋悪役令嬢の華麗なる恋愛遊戯~ダンジョン攻略駆使して有利に進めてみせます!~

古駒フミ

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あの日々の夢。

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 最期に見せてくれたのでしょうか――懐かしい夢を。

 結衣の姿となって大樹のふもとにいました。セレステと二人きりですわね。『あの時』のことでしょうか。
 ――セレステが悪夢にうなされていた時のこと。

『――セレステ、大丈夫?』

 セレステは地面で横になっていました。話し込んでいた最中、セレステは眠りだしましたから。うなされていたので、声もかけてしまって。

『……ああ、ユイ。ごめん、突然寝ちゃって』
『ううん。こっちも起こしちゃったけど、良かったんだよね』

 いいよ、とセレステは体を起こしました。

『……ありがと、ユイ。嫌な夢見てたからさ』
『そっか……』

 悪夢は人に話すのがいいってされてるけど、セレステは話したくなさそうでした。ええ、そうです。彼がどれほどのことを抱えているのか。彼は自分のことを話したがりはしませんでしたから。

 ――セレステは遥か未来の人だったから。未来のことだからと話しづらいこともあるのでしょうか。

『……あんたの夢だよ』
『私!?』

 悪夢に私が登場!? って驚いたけど、セレステは苦笑していた。

『……ガチで悪夢だったんだよ。あんたが不用意にも――あの裂け目に近づくもんだから』
『う……その節はごめんなさい』

 全くだよとセレステは怒り気味でした。心配かけましたものね。
 裂け目――前世の殿下も償ったとされる『贖罪の路』。

『あんたがそこに落ちる夢。それも――』

 ――誰かの招きによってと。その人物は舌なめずりするかのように、待っていたのだと。

『……』

 背筋が凍るようでした。あまりにも生々しい感触、本当に起こり得ると錯覚するかのような。
『……あんなとこ、あんたみたいな子が行くとこじゃない』
『セレステ……』

 セレステは実感をもって語るのです。いつか話してくれましたわね。最初の頃もあなたは悪夢に苛まれていた。たまたま起きていた私が、彼に寄り添うことになって。その時に話してくれたのです。知ったのです。

 ――セレステは大罪人だったと。彼もまた、贖罪の路で罪を償ってきたのだと。

『……本当はさ、償ったらすぐにでも転生出来るんだけど』
『……?』

 じっと見てくるセレステ。そうですわね、あなたは転生できるのだと。でも留まっているかのような。

『なんでもなーい。うん……もうひと眠りしようかな。ユーイ? 膝貸して?』
『え!』

 セレステは可愛くおねだりしますけれども。風貌から、言葉遣いから、ついそう思ってしまいますけれども。
 セレステは――男性ともいえるわけで。普通に友人、大親友とも思ってますし、なんら色めきだったこともない関係ですけれど。知らずに膝を貸したこともありましたけれども……! 

『――こら、セレステ? まーた、ユイちゃんを困らせて!』

 もう、と腰に手をあてたブリジット、彼女は窘めようとしていました。

『困らせてないしー? ねー、ユイ?』
『う、うん。困ってない、大丈夫!』

 セレステが賛同を求めてきましたので、私もとりあえずは。ブリジット、怖いのですのよ……怒らせると。平和に参りましょう、平和に。

『つうかさ、そっちだって門番氏と密会してるっしょ? こっちは健全、そっちは不健全じゃない?』
『……は?』

 セレステ……どうして火に油を注ぎますの? ブリジットのこの這うような声、本当に怖いのですのよ! 愛らしい見た目との相違があり過ぎて! 

 アレコレ言い合っても、結局はいつものお喋りとなりますわね。なんだかんだで話題は尽きませんもの。会話が弾むのが私たち。

 ……最期までこの喋りだった。生まれ変わったら、どうなるのかな――。


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