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バッドエンディングの続き①
しおりを挟む「はあはあ……」
私は一人、逃げ続けたままでした。公爵邸も掌握されていることでしょう。
事情を話せば助けてくれるでしょう、でも。
殿下との婚約破棄に悲しんだ彼らに――殿下に追われて困っているだなんて。
それに……イヴも手を回しているかのようで。イヴ……何故ですの……。
国中を走り回ったかのよう。馬を借りようにも、厨も押さえられていました。
もう日も暮れ、夜も訪れてきます。
よくここまで逃げきったもの――焦れた殿下はさらに本気を出すでしょうし、それは皆様方にもいえたこと。
「あとは……」
私の視線の先には――空にあるダンジョン。ダンジョン内を逃げ回った方が利がありそうですわ。ワープゾーンも使えれば、そう思ってましたのに――。
当然といえばそれまで。本国のギルドは兵たちがついていました。強引に突破して、それからダンジョンか……殿下に居場所を知られることになっても。
「でも……」
もうダンジョンしかないでしょう――いざ。
「――本当に荒ぶる方だ」
「!?」
――気配もなく、私は腕を掴まれていた。誰!? 私は急ぎ振り返るけれど。
「……」
私は安堵と同時に首を傾げました。
その方は――黒髪に精悍なるお顔立ち、鍛え上げられた体躯は軍服に身を包まれていますわ。国章は……ある大国のもの。ええ、彼は――。
「……いえ、あなたは」
あなたにお会いしたことがあります――ある日の昼下がり、ブランコの隣りに座られた方。
「ご無礼は承知の上、お許し願いたい――こちらだ」
「あっ……」
男性は私の腕をとったまま、ギルドから遠ざかっていく。
私は……このまま彼についていっていいの?
「……」
不思議なものでした。何よりも彼の声が――私に安心をもたらしていて。信頼できる方だって思えていたから。
裏通り、そこで彼が取り出したのは冒険者ライセンス。そこから現れたのは、二人乗りタイプの乗り物でした。
「さあ、後ろへ」
「え、ええ……ありがとうございます」
やっと、お礼がいえましたわ。殿方はふっ、と優しく笑っていました。
私が乗ったのを確認すると、彼はゆっくりと発進していく。やがて他の冒険者方とも合流し、夜に紛れるかのように、ダンジョンへ――。
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