勘違いしちゃってお付き合いはじめることになりました

よしゆき

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 ある日の放課後。その日も友也はいつも通り晴臣と帰ろうとしていた。
 しかし、玄関に向かう途中で晴臣を呼び止める声が聞こえた。

「ま、待って、桧山くん……!」
「あ?」

 晴臣は振り返り、友也も足を止める。
 声の主は、同学年の、別のクラスの女子だった。名前は確か高田だったような。可愛らしい顔立ちをしているので、男子の間で話題になっているのを聞いた事がある。
 彼女は頬を赤く染め、まっすぐに晴臣を見ていた。

「何か用か?」
「あの、桧山くんに、話があって……」
「話?」

 晴臣は「何で俺に?」と言わんばかりに眉を顰める。

「何だ?」
「えっと……ここでは、ちょっと言えなくて……」
「何でだ? 話なら、ここでできるだろ」
「ごめん、できれば、別の場所に来てほしくて……。その、桧山くん一人で……」

 晴臣はますます怪訝そうな顔つきになる。
 隣でそれを聞いていた友也にはわかった。これは多分、告白されるやつだ。
 しかし晴臣は全くピンときていないようだ。自分が告白されるなんて思いもしていない。
 何もわかっていない晴臣を連れて、このまま帰ってしまいたい。告白されてほしくない。彼女の思いに気づいていないのなら、気づかないままでいてほしい。
 しかし、確かに友也は晴臣の恋人だが、告白を阻止する権利はあるのだろうか。
 高田はきっと、勇気を振り絞って声をかけてきたのだ。
 そんな彼女の告白をする機会を奪う事など、してはいけないのではないか。
 でも、嫌だ。心の底から嫌だった。
 自分以外の誰かが、晴臣に好きだと伝えるなんて。
 嫌だけど、この場合、友也が「行ってきていいよ」と言うべきなのだろう。
 わかっているけれど、なかなか言葉が出てこない。晴臣の手を引いて、「早く帰ろう」とこの場から立ち去ってしまいたい。そんな事をすれば高田には恨まれるだろうが、それよりも告白される方が嫌だ。

「悪ぃ、友也。俺、ちょっと行ってくる」

 友也が何も言えずにいると、晴臣の方からそう言われてハッとなる。
 ここで「行かないで」と言えば、彼は多分、友也を優先してくれる。
 言ってしまいたい気持ちをこらえ、頷いた。

「僕、先に帰ってるね。遅くなりそうなら無理に来なくても大丈夫だから……。来れなくなったら、連絡して」

 今日はこの後、一緒に友也の家に行く予定だった。だから、晴臣にそう告げた。

「…………ああ、わかった」

 少しの間を置いて、晴臣は頷く。友也が「待ってるね」ではなく、「先に帰ってるね」と言った事に違和感を感じたのだろう。
 そして友也は晴臣と別れ、一人で帰路に就く。
 もちろん待っていてもよかったのだ。別に待つのが嫌だったわけではない。
 でも、晴臣は一人になりたいかもしれないと思った。
 告白されたのなら、一人で色々考えたいのではないかと。
 友也といても、彼女の事を考えて上の空になってしまうのではないか。友也と一緒にいるのに、他の誰かの事を考えている晴臣を見たくない。
 暗澹とした気持ちを抱えながら家に辿り着き、部屋に入って膝を抱え蹲る。
 あんな可愛い女子に告白されて、晴臣はどう思うのだろう。好きだと言われれば、きっと意識するだろう。彼女の事が気になって、そして、好きになってしまうかもしれない。
 そんな考えに至り、ズキリと胸に痛みが走った。
 彼女と友也を比べて、友也よりも彼女の方がいいって、晴臣がそんな風に思ったらどうしよう。
 友也と別れて彼女と付き合う事になったら。
 真っ赤になって照れる顔を彼女にも見せるのか。友也を呼ぶのと同じ声音で彼女を呼び、はにかんだ顔を見せるのか。抱き締めて、キスをして、彼女の肌に触れるのか。
 考えて、じわりと涙が浮かぶ。
 そんなの嫌だ。晴臣の全部、声も表情も温もりも、自分だけのものにしておきたい。
 友也しか知らない彼を、他の誰にも見せなくない。
 彼が優しい声で呼ぶのも、恥ずかしそうな顔を見せるのも、キスをするのも抱き締めるのも、友也だけにしてほしい。
 こんなにも彼が好きだ。他の誰にも渡したくないと思うほどに。
 やっぱりあの時、「行かないで」と言えばよかった。高田に恨まれようと嫌われようと、どうでもいい。晴臣だけは、絶対に譲れないのに。
 後悔しても遅い。もう晴臣は、彼女に告白されてしまっただろう。晴臣の頭の中はもう、彼女の事でいっぱいになっているかもしれない。
 押し潰されるように胸が痛み、友也はきつく目を閉じた。





 友也と別れた晴臣は、高田に連れられ人気のない場所へと移動した。
 正直晴臣は、彼女の名前も知らない。だから、何故彼女が自分に声をかけてきたのか全くわからない。知らない相手から、何の話があるというのか。
 早く済ませて、友也のところへ行きたい。二人きりになって思い切りイチャイチャしたい。ほんの少し前に別れたばかりだというのに、もう会いたくて仕方ない。

「話って何なんだ?」

 少しでも早く終わらせたくて、晴臣の方から話を促す。
 彼女は緊張した面持ちで口を開いた。

「ごめんね、急に……。クラスも違うし、ビックリしたよね」
「ああ、まあ……」

 彼女は覚悟を決めたような顔で晴臣を見上げた。

「桧山くんが好きなの」
「…………は?」
「付き合ってくれませんか……?」
「は………………?」

 晴臣は呆然と立ち尽くす。
 告白されるなんて予想外過ぎて何も反応できなかった。
 目付きが悪く口調もぶっきらぼうなので、女子からは怖がられる事も多い。声をかけられる事も滅多にないのだ。
 しかし本人は自覚していないが、実際晴臣はそれなりにモテていた。密かに思いを寄せる生徒はいるが、近寄りがたい空気を纏っているのでなかなか告白されるに至らないのだ。
 頬を赤く染め、真剣な瞳で見つめてくる彼女に晴臣は言った。

「悪い。俺、付き合ってるヤツいるから」
「えっ……!?」

 彼女は驚きに声を上げ、それから何か考えるような仕種をする。

「…………もしかして、お付き合いはじめたのって、二、三ヶ月くらい前から?」
「あ? あー、まあ、そんくらいだな」
「そっかー、なんだ、そういう事だったのかー」

 彼女は一人、納得したように頷く。
 怪訝な顔をする晴臣に、彼女は苦笑を浮かべ説明した。

「最近桧山くん、丸くなったなーって思ったの。よく笑顔見るし、何か楽しそうな雰囲気で……。私はそんな桧山くんを見ていいなーって思うようになったんだけど……それって、桧山くんがその人とお付き合いはじめたからなんだよね。私、その人とお付き合いしてる時の桧山くんを好きになったって事だったんだーって思って……」
「………………」

 友也と付き合える事になって確かに嬉しかった。今もめちゃくちゃ嬉しい。毎日幸せだ。友也に会えるというだけでウキウキで学校に来れる。浮かれているという自覚はある。だが、他人が見てわかるほど態度に出ていたとは思っていなかった。自分はそんなにわかりやすくはしゃいでいたのだろうか。自分では全くわからなかった。
 無言になる晴臣に、高田は申し訳なさそうに謝る。

「あ、ごめんね、何か変な事言っちゃって……」
「いや、別に」

 それから高田と別れ、晴臣は友也の家へ向かう。早く友也に会いたくて、自然と早足になっていた。





 部屋で縮こまる友也の周りは、どんよりと暗い空気に覆われていた。頭の中はずっと嫌な想像で埋め尽くされている。
 スマホに晴臣からの連絡はない。もし「今日は行けない」なんて連絡が来たらどうしよう。そのまま高田と二人で過ごしていたら……。
 そうではないとしても、晴臣は今、高田の事を考えているのかもしれない。告白されて、彼女と付き合ったらどんな感じか想像してるかもしれない。友也と比べて、彼女の方と付き合いたいと思うかもしれない。
 思考はどんどん嫌な方向へと流れていく。
 このままでは想像だけで泣き喚いてしまいそうだ。
 ゲームでもして気を紛らわせるべきではないか。しかし、ゲームで気が紛れるとも思えない。
 あんなに好きだったゲームが、今は何の慰めにもならない。
 友也が求めているのは晴臣だけなのだ。
 その時、玄関のチャイムが鳴った。





「悪かったな、待たせて」

 そう言って部屋に入ってくる晴臣の態度はいつも通りだ。不自然な様子は何もない。

「友也? どうかしたか?」

 思わずじっと観察してしまった。首を傾げる晴臣に、何でもないよと笑顔を見せる。
 ベッドを背凭れに、二人は並んでクッションに座る。
 友也はずっと気が気ではない。高田の事を訊きたくて、でも聞きたくない。
 彼女に告白されて、晴臣はどう思ったのか。今、彼女の事をどう思っているのか。友也の隣にいる今も、彼女の事を考えているのか。
 気になってたまらないけれど、聞きたくない。訊くのが怖い。

「なあ、友也」
「えっ!? な、なに……!?」

 声をかけられて、過剰に反応してしまう。
 びくつく友也に、晴臣は照れたような顔で言った。

「その……抱き締めていいか?」
「へ……? あ、う、うん……」

 腕を広げる晴臣の正面に移動し、向かい合う形で彼の腰を跨ぐ。背中に手が回され、そのまま引き寄せられた。すっぽりと、彼の腕の中に収まる。
 いつもは抱き締められると嬉しくて胸がきゅんきゅんするが、今は不安の方が大きくて落ち着かない。
 晴臣は今、何を考えているのだろう。
 友也を抱き締めながら、高田の事を考えているのかもしれない。
 男の体で、肉付きも悪く抱き心地は決してよくないだろう。
 でも、もし高田が相手だったとしたら。柔らかくて、いい匂いがして、最高の抱き心地なんじゃないか。
 そんな事を、晴臣が考えていたら。高田の事を思いながら、彼女と友也を比べながら抱き締めていたら──。

「やだ……!!」

 思わず、彼の胸に手をつき体を離す。
 やってしまってから、ハッと我に返る。
 晴臣を見れば、彼はショックを受けたように顔を強張らせていた。

「わ、悪い……嫌だったか……?」

 彼は明らかに傷ついていた。友也が傷つけてしまったのだ。
 ぶんぶんと首を左右に振り、必死に否定する。

「違っ……違うよ! 晴臣くんに抱き締められるのが嫌だったわけじゃなくて……っ」
「じゃあ、何が嫌だったんだ……?」
「っ……」

 正直に言うのは躊躇われた。でも、言わなければきっと晴臣に誤解されたままになってしまう。彼を拒絶したなんて思われたくない。

「…………晴臣くん……さっき、告白されたんだよね……?」
「……よくわかったな」

 晴臣は純粋に驚いている。声をかけてきた時の彼女の様子を見れば大体察しがついてもおかしくはないのだが、彼は本当にわかっていなかったようだ。

「晴臣くんが高田さんの事、好きになっちゃうんじゃないかって不安になって……」

 そこではじめて晴臣は彼女の名前が「高田」だったのだと知る。晴臣は名前を訊く事すらしなかった。知りたいと思わなかったから。告白されても、彼女に興味など湧かなかった。
 しかし、友也は晴臣が彼女の事を好きになってしまうのではと悲しげに顔を曇らせている。

「晴臣くんは僕よりも、高田さんの方がいいって思うかもって……」
「そんなわけねーだろ。確かに告白はされたけど、すぐ断ったし」
「でも……でも、好きって言われたら、その人の事意識しちゃうだろうし……晴臣くんが高田さんの事、目で追いかけたりして……そして高田さんの事、可愛いって思ったりして……それで、好きになっちゃうかも……」

 自分で言っていて悲しくなって涙が込み上げてくる。かなり面倒臭い事を言っている。こんな事言えば、晴臣を困らせるだけなのに。

「ご、ごめん……。僕が勝手に想像して、一人で不安になっちゃってるだけなんだ……」
「謝んなよ。俺の方こそ悪かった……。友也がそんな不安になってるなんて、全然気づかねーで」
「違うよ、晴臣くんは悪くなくて……っ」
「友也」

 頬を晴臣の大きな掌に包まれる。
 視線を向ければ、彼の真摯な瞳がまっすぐに友也を見つめていた。

「俺が好きなのは、友也だ。か、可愛いって思うのも……抱き締めたり、キスしたいって思うのも……友也だけだ……」
「晴臣くん……」
「友也と付き合えるようになって、めちゃくちゃ嬉しいし……こうやって、殆ど毎日、友也と一緒にいられるのも、スゲー嬉しい……。これからも、ずっと一緒にいたいって思うのも、友也だけで……。友也が心配になる必要なんてないくらい、俺は、友也が好きだ」

 晴臣の顔は真っ赤だ。耳まで赤い。
 とてつもなく恥ずかしいのだろう。
 それでも彼は目を逸らす事なく、真剣に友也に気持ちを伝えてくれた。友也を不安にさせないために、素直な思いを言葉にしてくれたのだ。

「晴臣くん……っ」

 突き動かされるように彼に抱きつく。

「好き、好き、晴臣くん、大好き……っ」
「友也……」

 思いを込めて、力一杯彼を抱き締めた。

「僕も、晴臣くんと一緒にいられてすごく嬉しい……。ずっと晴臣くんの傍にいたい」
「ああ」

 優しく背中を撫でられて、じわりと温かさが全身に広がっていく感じがした。

「晴臣くん、好き……」

 顔を上げれば、晴臣は嬉しそうに、照れ臭そうに微笑んでいた。

「晴臣くんのしたい事、何でも僕にしてね……」
「っ……言っとくけど、したい事が先にあるんじゃなくて、友也だから色々したいって思うんだからな」
「! うんっ」
「友也もしたい事あるなら、全部俺に言えよ」
「うん。あのね……晴臣くんと、キスしたい……いっぱい……」

 はにかみながら言えば、すぐに唇が重ねられた。

「んん……っ」

 唇の感触を楽しむように、何度も角度を変えて口づけを繰り返す。
 もう、数えきれないほど彼と唇を重ねてきた。きっと目を瞑っていても唇の感触で晴臣だとわかるだろう。彼以外とキスをするつもりはないけれど。

「んっ……んっ……」

 柔らかく唇を食み、じゃれ合うようなキスを楽しむ。
 晴臣の唇を甘噛みすれば、仕返しのように唇をねぶられた。

「んぅっ、ん……っ」

 彼の熱い舌の感触に、友也の唇が自然と開く。口の中も舐めてほしいとねだるように。
 開いた隙間から、晴臣の舌がするりと滑り込んでくる。
 友也は嬉々としてそれを迎え入れた。入り込んできた彼の舌を、ぴちゃぴちゃと舐める。

「んぁっ……は、んっ……」

 互いに互いの舌をねぶり、絡ませ合う。舌が擦れる感触が気持ちよくて、頭がくらくらした。

「んっ、ふぁっ……はる、ぉみく、んっんっんっ」
「はっ……ん……ともや……っ」

 求め合うように、深く深く唇を重ねる。
 晴臣に舌を吸われれば、今度は友也が彼の舌にちゅうっと吸い付く。
 にゅるにゅると舌と舌を擦り合わせ、その官能的な口づけにぞくぞくと背中が震えた。唇も、口の中も、余すところなく舌先で触れ合う。
 唾液で口元が汚れるのも気にせず、時間も忘れてひたすらにキスを交わし続けた。
 下腹部がじくじくと疼く。ぺニスはすっかり勃ち上がり、下着の中でだらだらと先走りを漏らしていた。
 それも構わず、友也は晴臣とのキスに夢中になっていた。
 一体どれだけの時間が経ったのか、心も体もヘロヘロのぐずぐずになっていた。

「んはぁっ……はぁっ……はるおみ、くぅん……」
「はあっ……はっ……友也……」
「うれし……晴臣くんと、キスするの……。晴臣くんと、キスできて、幸せ……」

 晴臣とのキスに陶酔し、瞳をとろとろにしてうっとりと微笑む。

「友也……っ」
「んんんぅっ」

 興奮した様子の晴臣に、噛みつくようにまたキスをされる。激しく口腔内を貪られ、ぢゅううぅっと強く舌を吸い上げられた。

「んっ、っ、ん゛~~~~っ」

 唇を塞がれたまま、友也はビクビクッと身を震わせた。ぺニスからぴゅくっと少量の体液が漏れる。それは密着していた晴臣にも気づかれてしまう。

「……友也、イッたのか……? キスだけで……?」
「はっ、ぁ、はあっ……ぅん……晴臣くんとするキス、気持ちよくて……出ちゃった……」
「はあっ……可愛い……」

 晴臣は熱い息を吐き、友也を押し倒す。覆い被さる晴臣は、友也の下肢へと手を伸ばした。前を寛げ、べとべとに濡れたぺニスを取り出す。

「んあっ、はるおみ、く、んんっ」

 晴臣の掌に包み込まれ、蕩けるような快楽に友也は甘い嬌声を漏らす。

「スゲー、ぬるぬる……。俺とのキス、そんなに気持ちよかったのか?」
「あっ、ん、うんっ……晴臣くんが、好きだから……晴臣くんとキスすると、すごく、きもちぃっ」
「っ……俺も……友也、友也……っ」

 晴臣は急いた手付きで自身の陰茎も取り出した。彼のそれも完全に勃起し、固く張り詰めている。

「ひっ、あんっ、きもちいっ、あっあっ」

 晴臣は二人の性器を重ね、まとめて手に握る。
 反り返った彼の陰茎の裏筋にぐりゅぐりゅと擦られて、強い刺激に甲高い声が上がった。

「晴臣くぅっ、んっ、あっ、きもちいいっ」
「俺も、気持ちいい……友也の、ぬるぬるで、スゲーいい……っ」

 晴臣は興奮したように息を乱し、ぐちゅぐちゅと濡れた音を立てて激しく上下に擦る。

「はるおみく、あっあっ、はるおみくぅんっ……」

 両手を伸ばしてしがみつき、晴臣にキスをねだる。気づいた彼は、すぐにまた唇を重ねてくれた。
 ちゅくちゅくと互いの口に吸い付きながら、腰を振って互いの熱を擦り合う。

「んちゅっ……んんっ、はぅおみきゅ、んっ、んっ、はっ、ぁんっ、んんぅっ」
「んっ……はぁっ……ぁ、んっ、ともや……んっ」

 じんじんと痺れる舌を絡め、必死に晴臣に縋りつく。ぺニスからはひっきりなしに蜜が溢れ、ぬちゃぬちゃと卑猥な音が下半身から聞こえてくる。
 嬉しくて恥ずかしくて気持ちよくて、堪らなく興奮する。
 ぞくぞくぞくっと、大きな快楽の波が込み上げてくる。

「んうっ、んっ、んっ、ん゛~~~~~~っ」

 深く唇を重ね合わせたまま、友也は身を震わせて体液を吐き出す。ほぼ同時に、晴臣もくぐもった声を漏らし射精した。
 唇を離せば、二人は声もなくただ荒い呼吸を繰り返す。
 やがて息を整えた晴臣は、体を起こし気遣うようにこちらを見下ろす。

「大丈夫か、友也……?」

 尋ねる声は掠れていた。晴臣の額には汗が浮かび、瞳は情欲を帯びて潤み、頬はうっすらと上気している。唇は赤く濡れて、とてつもない色気を放っていた。
 友也はとろんとした双眸で彼に見惚れた。

「晴臣くん……色っぽくて、かっこいい……」
「はあっ……!?」

 無意識に感想を零すと、晴臣は顔を真っ赤にして動揺を露にする。しかし満更でもなさそうだ。かっこいいけれど、こういう反応をするところは可愛い。

「お、お前だって、目ぇとろとろで、ふにゃふにゃになってて、めちゃくちゃ可愛いし……っ!!」

 晴臣は何故か張り合うように言ってくる。
 友也も男だから、もし誰かに可愛いと褒められても微妙な気持ちになるだろう。でも、晴臣は別だ。彼に言われると嬉しい。彼に可愛いと思ってもらえる事が嬉しい。
 晴臣が好きだから嬉しい。

「晴臣くん、大好き……」

 へにゃりと笑えば、晴臣はぐっ……と何かに耐えるように呻いた。

「クソッ……もう時間ねーのに、煽りやがって……」

 独り言のような彼の悪態に、友也は時間を確認する。キスに夢中になって気づいていなかったが、もうすっかり遅い時間になっていた。
 晴臣と色々していると時間を忘れる事が多い。彼と一緒にいると、あっという間に時が過ぎている。もっと一緒にいたいのに……といつも思う。

「晴臣くん、そろそろ帰らないとだよね……?」
「ああ。でも、もう少しだけ」

 そう言って彼は、また顔を近づけてくる。
 友也は目を瞑り、重ねられる彼の唇を受け入れた。





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