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女好きヤリチンが無理やり獣人の嫁にされる話 ①
しおりを挟むタイトルまんまです。
獣人×人
─────────────────
いかがわしいピンク色のホテルの前に立つ、二人の男女。
男は女の腰を引き寄せ、ぐっと顔を近づける。
「……いいよね?」
「もう、純世ってば……」
窘めるように男の肩を叩きながらも、女は頬を赤く染め満更でもない顔をしている。
そんな彼女の反応に、純世と呼ばれた彼は楽しげにクスクスと笑みを零した。
「いーっぱい、楽しもうね」
「もー、純世のバカ! エッチ!」
形ばかりの悪態に笑みを深め、純世は彼女と共にホテルへと足を踏み入れようとした。
その時。
「純世くぅーん?」
「っ!?」
背後から聞こえてきた声に、ピシッと体が硬直する。
聞き覚えのある声。今一番聞きたくない声。
だらだらと全身から冷や汗が噴き出す。
「あらぁ? 私の声が聞こえてないのかしらー? それとも無視してるの? お姉ちゃん悲しいわ」
「っ、っ……!!」
聞き間違いなどではないのだと確信し、絶望に血の気が引いていく。
隣の彼女が、不思議そうに純世と背後へと交互に視線を向ける。
「純世……?」
名前を呼ばれても、応える余裕など最早持ち合わせていなかった。
彼女から手を離し、純世はその場から駆け出した。
「えっ!? ちょっ……純世……!?」
驚き声を上げる彼女を無視して走る。
けれど、純世が逃げ出す事など予測していたのだろう。どこからか現れた黒服の男達にあっさり捕まってしまう。
羽交い締めにされ、それでもどうにか逃げようともがく純世に近づいてくる一人の女性。
ゆっくりと、優雅に。余裕と気品を放ちながら。
「久しぶりねぇ、純世くん?」
「す、純子、姉さん……」
ここにいるはずのない相手を前に、純世はこの世の終わりのように顔面蒼白になった。
「あらあらぁ? 久しぶりの再会だっていうのに、そんな顔しちゃって……。お姉ちゃんに会えて嬉しくないの?」
「っ……」
「積もる話もある事だし、場所を移動して、ゆーっくり話しましょうね」
そう言って、ゾッとするような綺麗な笑顔を浮かべる。
ヒッと声にならない悲鳴を上げる純世の鼻と口が布で塞がれた。
「っぐ……!?」
薬を嗅がされた純世は、そのまま意識を手離した。
雲類鷲純世。大企業である雲類鷲グループの末っ子だ。歳の離れた兄と姉がいる。兄とは歳が離れすぎていてあまり接点がないが、姉の純子は純世を可愛がってくれた。
裕福な家庭で不自由のない生活を送り、純粋に健全に育っていった純世だったが、美人家庭教師に童貞を奪われた事で性に目覚めてしまった。
セックスの快感の虜となり、家庭教師だけでなく色んな女性と関係を持つようになった。
それに気づいた純子にこっぴどく叱られた。今まで彼女に何かを咎められた事などなかった。姉は純世に甘く、どんな我が儘も許されてきた。
その姉が、この件に関しては純世を徹底的に責め立てた。
彼女の怒りに触れた純世は、泣きながらもう二度としないと何度も誓いを立てさせられどうにか許された。
それ以来、純世は再び健全な生活へと戻った。
しかし、一度覚えた快感を忘れる事などできない。自慰では到底及ばない。セックスの快感を味わいたい。
だが、また同じ事を繰り返せば、今度こそ純子は自分を許さない。きっととんでもない罰を与えられる事だろう。
それがわかっていたから、純世はひたすら耐えるしかなかった。
表向きは健やかに、けれど欲求不満を募らせ悶々とした日々を送っていた。
そんな時だった。
純世が大学に入学すると同時に、純子が仕事の都合で海外へと行く事になったのだ。
両親も兄も仕事が忙しくて純世には殆ど無関心だ。姉さえいなくなれば、純世の私生活はほぼ自由となる。朝帰りしようと咎める者はいない。
姉というストッパーを失った純世は、大学入学と同時に再び色んな女性と肉体関係を持つようになっていった。
純世にとっては幸いな事に、彼は美形で人を惹き付ける魅力を持っていた。甘い声音で誘えば受け入れてくれる女性は多く、純世はセックスしたいと思った相手に片っ端から声をかけていった。
だが、あくまで純世は女性とセックスがしたいだけだ。恋人が欲しいとは思っていない。セックスをする為に愛を囁き、セックスをする為に笑顔を振り撒く。クズだ。
今まで抑制されていた分を取り戻すかのように、純世はハッピーセックスライフを謳歌していた。
それなのに……。
「は……っ」
純世は目を覚ました。そしてすぐに自身の異常に気づく。
「なっ……なんだコレ……!?」
純世はベッドに全裸で仰向けに寝かされていた。両手首にはそれぞれ手錠が嵌められ、ベッドに繋がれている。
「おはよう、純世くん」
「っひ……純子、姉さん……っ」
傍らから聞こえてきた声に、ビクッと肩を竦める。
純子はにこりと上品に微笑み、ベッドの横に立っていた。全裸の純世を見下ろしながら。
「ちょ、ちょっ……み、見ないでくれよ……!!」
「あらあら、何を今更恥ずかしがってるの? 私が何回純世くんのオムツを変えてあげたと思ってるの。純世くんの裸なんてもう見慣れてるわよ」
「いやそれいくつン時の事だよ!」
「いくつになっても純世くんは純世くんでしょう? 血の繋がった姉に裸を見られたくらいで動揺し過ぎよ」
「いやするだろ、普通! てか、ベッドに繋がれてるし!」
純世はガチャガチャと手錠を鳴らす。頑丈なそれはいくら引っ張ったところで外れそうもない。
部屋の中を見回す。ベッドだけしかないような簡素な部屋。壁紙や窓の形に見覚えがある。ここは両親が所有する別荘の一室だ。
薬で眠らされ、ここまで連れてこられたようだ。
「どういう事だよ、純子姉さん……っ」
「それは純世くんもよーくわかっているでしょう?」
穏やかに見せかけて確かな怒りを孕んだ純子の声に、ぞくりと恐怖を覚える。
「私、信じていたのよ、純世くんの事。私が目を離しても、もうオイタはしないって」
「っ……」
「ボロボロ泣いて、顔をぐちゃぐちゃにして、もうしないから許してーって、純世くんが言うから、私、貴方のその言葉を信じていたのよ」
「う……」
「よくもまあ、私の信頼を裏切ってくれたわねぇ、純世くん」
「ひぃっ……」
純子の笑顔に震え上がる。彼女は怒っていても決して笑顔を絶やさない。だからこそ、純世は笑顔の彼女が怖かった。
「ででででも、ど、ど、どうして……海外にいるはずの、純子姉さんが……」
「うふふふふ……海外にいる私のところに苦情が届くくらい、純世くんの生活が爛れていたという事でしょう? 上手に女の子をあしらえないくせに、手当たり次第に手を出すからこうなるのよ。そんな事もわからないなんて……純世くんのお馬鹿さを把握できていなかった私の責任だわ」
頬に手を当て、ほう……と溜め息をつく純子。
「あ、あ、あのっ……ごめん、ごめんなさい、純子姉さん!! 俺、もう本当にしないからっ……今度こそ、本当に、もう絶対……っ」
純世は彼女に縋るように潤んだ瞳を向ける。純世は彼女の可愛い弟だ。何だかんだ言いつつ、彼女は純世に甘い。だから、心から謝れば許してもらえるかもしれない。そんな一縷の望みにかけ、純世は姉に懇願した。
「もう、純子姉さんに迷惑かけるような事はしないっ……だ、だから、許し……」
「だーめ」
少女のように可愛らしく微笑みながら、純子はきっぱりはっきりと言った。
許しを請い伸ばした手を思い切り叩き落とされた状況に、純世の瞳に絶望が宿る。
「す、純子姉さん……っ」
「この件に関しては、私はもう純世くんを信じない事に決めたのよ。だから私に謝罪はいらないわ。許す気はないんだもの」
「そ、そんな……」
「でもね、元はと言えば純世くんの童貞を奪った家庭教師が悪いのよね。彼女が貴方にセックスなんて教えなければ、こうはならなかったでしょうね」
「っ、そ、そう! そうだよ……!」
人に罪を擦り付け自分は許されたい純世は激しく同意した。
ガクガクと大きく首を上下するその様を、純子は笑みを浮かべながら見下ろす。
「だからね、純世くんからセックスを奪うなんて酷な事はもうしないわ」
「えっ……!?」
「だって逆効果だものね。だから、セックスだーい好きな純世くんに、好きなだけセックスさせてあげる事にしたのよ」
「それ……ど、どういう……」
「カイルさん、入ってきて」
純子がドアに向かって呼び掛けると、すぐにドアが開いた。入ってきたのは、精悍な顔立ちの美形の青年だ。頭に生えている獣の耳と腰の後ろに見える尻尾で、彼が獣人であるとわかった。
純世は状況が飲み込めず、姉とその青年を交互に見る。青年も戸惑っている様子だった。まあ、全裸でベッドに繋がれている人間を見たら戸惑うのは当然だろうが。
「ね、姉さん……?」
視線で問いかければ、純子はニコニコしながら青年を紹介してくれる。
「彼はカイルさんよ。出張先で知り合ったの」
「はあ……」
そういえば、姉の出張先は獣人がおさめる、獣人が大半を占める国だった。なんて事をぼんやり思い出す。しかし、その相手をこんな場面で純世と引き合わせる意味がわからない。
「カイルさんに純世くんの写真を見せたのよ。そうしたら、一目で純世くんの事を気に入ってくれて……。是非純世くんをお嫁さんにしたいって言って下さったのよ」
「…………はああ!?」
耳を疑うような事を言われ思わず大声を上げる。それを無視して純子は話を続けた。
「実はカイルさん成人したばかりで、ちょうど今、はじめての発情期を迎えているの」
「へっ……?」
嫌な予感に頬が引きつる。
青ざめる純世を見下ろし、純子は満面の笑みを浮かべた。
「彼なら、純世くんのだーい好きなセックス、いっぱいしてくれるわよ。純世くんの結婚相手としてピッタリでしょう?」
「なっ……なに、言って……」
悪い冗談だ。
純世はセックスが好きだが、それは女性相手限定だ。男を抱きたいと思った事はないし、男に抱かれるなんて以っての外だ。
純子だってそれはわかっているだろう。わかっていて言っているのだ。
彼女は罰として、純世を男と結婚させようとしている。
冗談でも何でもなく、このままでは本当に結婚させられる。
純世はぶんぶんぶんぶんっと首を横に振り立てた。
「ま、待っ、待って待って待った!! おおお俺が男と結婚!? ムリムリムリムリだから!! 男となんて、そんな……っ」
「そうよねー、純世くんは女の子が大好きなんだものねー」
「っ……」
「そんな貴方に、女の子と結婚なんてさせるわけないでしょう? わかっているわよね? 罰はきちんと受けてもらわなきゃ」
「やっ……待ってよ、純子姉さんっ……」
「それとも、純世くんはチンコをちょん切られる方がいいかしら?」
「ヒッ……!?」
姉の口から放たれた不穏すぎる言葉に全身から血の気が引く。
「去勢されるのと、カイルさんと結婚して彼のお嫁さんになるの、純世くんはどっちがいーい?」
彼女の目は本気だ。結婚を拒否すれば、本当に去勢される。
「あ……う……」
「結婚するわよね、純世くん?」
「っ、っ……」
「沈黙は肯定と判断します。では、カイルさん」
何も言えない純世から視線を外し、純子は隣のカイルへ顔を向ける。
「彼はもう貴方のお嫁さんになります。好きなだけ徹底的に犯しまくって、身も心も貴方のメスにして下さいね」
「ま、待って下さい、純子さん……。彼は、嫌がってます。それなのに、無理やり結婚だなんて……」
カイルという獣人は常識的な考えの持ち主だったようで、純子の言葉に無闇に従ったりはしなかった。
もしかして、純世が拒むのではなく、彼が止めてくれるのなら結婚の話はなくなるのでは。去勢の件も一旦は保留にしてもらえるのでは。
純世は希望を抱いた。
だがしかし、純子はそんなに甘くはない。少なくとも今回ばかりは、純世を許す事はないのだろう。
純子は穏やかな口調でカイルに語りかける。
「カイルさん。貴方と純世くんが結婚すれば、雲類鷲グループと貴方の会社は当然事業提携を結ぶ事になります」
「っ……」
「お父様が亡くなって、今貴方の会社は傾きかけているのでしょう? 雲類鷲グループがサポートすれば、すぐに立て直す事が可能ですよ」
「それは……」
「貴方と、貴方の抱える大勢の社員を救う為にも雲類鷲グループの後ろ楯は必要でしょう?」
「し、しかし、彼の気持ちを無視するなんて……」
「うふふふ……。大丈夫ですよ、カイルさん。純世くんは気持ちいい事がだーい好きですから。貴方とのセックスの快感を覚えれば、すぐに貴方にメロメロになって貴方の虜になりますよ」
悪意のない無邪気な笑顔で、えげつない事を言う姉に純世は戦慄した。彼女の中で純世とカイルの結婚はもう決定事項で、最初からそれを覆すつもりなど一切ないようだ。
「どうです? 写真ではない純世くんを直接見て、どう思いました?」
純子の問いに、カイルは乙女のように頬をポッと染めた。純世をチラチラ見ながらもじもじする。
「そ、それは……もちろん、とても綺麗で、可愛らしくて……」
「貴方だけのものにしてしまっていいんですよ? 色んな女性の匂いのついた純世くんを、貴方の匂いで上書きして、貴方だけのメスにしてしまっていいんですよ?」
「お、俺、だけの……」
カイルはゴクリと喉を鳴らした。純世にとって最悪でしかないその提案は、彼にとってはとても魅力的だったようだ。
彼の良心だけが唯一の希望だったのに、流れがまずい方向へ向かっている。
「純世くんをお嫁さんにして、会社も救える。カイルさんに拒む理由があります?」
「っ……」
「どうしますか、カイルさん?」
「……彼と、結婚させて下さい……っ」
ちょっと待てぇぇぇぇぇ!! 純世は心の中で絶叫した。断固拒否したい。しかしここで闇雲に声を上げ拒絶すれば、去勢された上に男と結婚させられるという最低最悪のパターンになりかねない。
今ここで、これ以上純子の機嫌を損ねるような事をするのは危険だ。
だから純世は、馬鹿みたいに口をパクパクと開閉する事しかできなかった。
そんな純世を放置して、二人だけで会話が進む。
「もちろんです。不束な弟ですが、どうか可愛がってやって下さいね」
「はい! 大切にします……!」
勝手な事を言うなと声を大にして言いたい。しかし口を挟む事のできない無力な純世に、純子は再び顔を向ける。
「そういうわけだから、純世くん」
「っ……」
「さっきは邪魔しちゃってごめんなさいね。ラブホテルじゃないのは申し訳ないけれど、今度は邪魔なんてしないから。カイルさんとのセックス、ゆーっくり楽しんでちょうだい」
「えっ!? ちょ、待っ、待って、純子姉さん……!!」
純世の引き止める声など聞こえていないかのように、純子は悠然と背を向けドアの向こうへと消えていく。
全裸で拘束された据え膳状態でカイルと二人きりにさせられるという事は、そういう事ではないか。
はあっはあっと荒い息遣いが聞こえ、純世はハッとそちらへ顔を向ける。
完全に欲情した獣人の青年が、獲物を見るような目で純世を見ていた。
「ひぃっ……!!」
純子は言っていた。彼は今、はじめての発情期を迎えているのだと。そして発情した彼の情欲を向ける相手は純世しかいない。
熱を孕んだ彼の双眸はまっすぐに純世だけを見ている。
「純世、くん……」
「ま、待って待って待って下さい!! 落ち着いて……!!」
純世は必死に声を上げた。
「おお、俺っ、めちゃくちゃ最低な男なんです! 色んな女の子とセックスしまくって、不純で爛れた生活を送ってた、人として最悪の人間なんです! だ、だから、貴方には相応しくないっていうか……俺なんかと結婚したら絶対後悔しますから……! だから、考え直して下さい……!!」
「それは知っている。純子さんから、どうしようもないクズだと聞かされていたし」
「ひっ……酷い……」
姉が自分の事をそんな風に人に紹介していたなんて。それを教えられ、地味にショックを受ける。だが今は、そんな事で落ち込んでいる場合ではない。
「純子姉さんの言う通りです。こんなクソゴミ人間の俺なんかと結婚してもカイルさんのためになりません! 貴方は、俺なんかじゃなくて、もっとまともな人と結婚するべきですよ!」
どうにか結婚を回避したくて純世は自分の評価をボロクソに下げまくった。これで結婚せずに済むのならいくらでも下げる。
自分がいかに結婚相手として相応しくないかを捲し立てていると、彼はおもむろにベッドに上がった。
「ひぅっ……」
跨がられ、純世はビクリと身を竦める。
眼前に来られると、彼が獣人らしくがっしりとした体つきの持ち主なのだとわかった。服の上からでもわかる、しっかりと鍛えられた筋肉。もし手錠で繋がれていなくても、襲われたら逃げる事はできない。
純世は涙目になる。
「か、カイルさん……」
怯える純世の頬をカイルの大きな掌が撫でる。その手付きは優しかったが、純世には何の慰めにもならない。
「一目見て、君に恋をした。純子さんに君がどんな人間なのか聞いても、気持ちは変わらなかった。そしてこうして君と出会い、君への気持ちは更に大きくなった。もう、君以外なんて考えられない。俺は君と一生を添い遂げたい……!」
「なんでぇ!? 確かに俺はイケメンだけど、イケメンは俺以外にもたくさんいるだろっ! ちゃんともっとよく捜せよぉ! 俺よりもアンタ好みのイケメンいるから、絶対!」
「いいや。俺が欲しいと思うのは君だけだ」
「世界中の人間と一人残らず会ってから言え!!」
いよいよマズイ状況になり、口調を取り繕う事もなく声を荒げた。
喚く純世を、彼は子猫へ向けるような愛しげな瞳で見下ろす。
「君の気持ちが俺にないのはわかっている。けれど、君に満足してもらえるよう全力で努力する」
「ま、満足……って……」
カイルは照れ臭そうに瞳を伏せた。
「はじめて、なんだ……。こうした触れ合いは……」
「はじ、めて……。…………って、童貞って事か!?」
小さく頷くカイルを、信じられない気持ちで見る。イケメン=非童貞に違いないという純世の偏見だった。
「う、ウソだろ!? アンタほどのイケメンが、童貞とか……っ」
「体を許す相手は、生涯ただ一人と決めている」
好みの女性に片っ端から声をかけまくってセックスしていた純世とは正反対だ。
これ程のイケメンが、身持ちが固いなんてもったいない。宝の持ち腐れではないか。ヤリチンの純世はついそんな風に考えてしまう。
「経験はないが、必ず君の期待に応えてみせる」
キリリと男らしい顔で言ってくるカイルに、いやいや経験がないのにムリに決まってんだろ、童貞が根拠のない自信を振り撒くなと突っ込んでやりたかった。
自分は童貞の上に発情期の男に処女を奪われるのだ。
その事実に、純世は恐怖に打ち震えた。
絶対血を見る事になる。乱暴にチンコを突っ込まれ、快感などない痛みだけのセックスをされるのだ。ただただコイツが性欲を満たすだけの、雑な抱き方をされるに違いない。ケツの穴をボロボロに引き裂かれて、泣いて叫んでもきっと発情期のコイツは止まる事なく腰を振り続けるのだろう。
そんな未来を想像し、絶望に打ちひしがれた。
子供のように泣きじゃくりたい気分だった。でもそんな事をしても、もうどうにもならないのだ。
「愛している、純世くん。生涯君を愛し続けると誓おう」
何の救いにもならない彼の愛の言葉を聞きながら、純世は虚空へ視線をさ迷わせた。
「ひおぉっ、おっ、おっ、お゛~~~~っ」
ばちゅっばちゅっと肉のぶつかる音と、下品な喘ぎ声が部屋に響く。
「ああぁっ、あ゛っ、なんれっ、なんれぇっ……!?」
強く腰を掴まれて、激しく陰茎を出し入れされる。彼は技巧もなくただ夢中で腰を振っている。そんなセックスをされているというのに快感しか感じないとはどういう事か。
「はあっ、はあっ……純世っ、純世……っ」
「んむっ、んっ、んんぅううっ」
純世に覆い被さるカイルはぐちゅぐちゅと胎内を掻き混ぜながら、貪るようにキスをしてくる。
牙を生やし、大きな舌で口の中をめちゃくちゃに舐め回してくる。まるで食べられているかのようなキスだ。一方的に貪られているというのに、堪らなく気持ちいい。
唾液をだらだらと流し込まれ、奥まで舌を差し込まれ、そんな口の中を犯されているようなキスをされて感じてしまうなんて。
どうして。なんで。
抗いたいのに抗えない。胎内を深く穿たれ、純世は情けなく精液を漏らした。
「ふぅんんん~~っ、んっ、ぉっ、うぅんんっ」
こっちが達しているのに、彼は動きを緩める事もない。寧ろ肉筒の締め付けを味わうかのように、更に激しく抽挿を繰り返すのだ。
もっとこっちを気遣え、この童貞が! そっちも童貞かもしれないが、こっちだって処女だったんだぞ! と文句を言ってやりたくても、口から出るのは最早意味をなさない嬌声ばかりだ。
彼は休む暇を与えず快楽を与えてくる。キスをし、耳や首筋をねぶり、乳首を弄る。
純世は絶えず刺激を与えられ続け、思考もまともに働かなくなっていった。
「純世っ、純世っ……ああ、可愛いっ……君はなんて美しいんだっ……俺に犯される君が可愛すぎてっ……はあっ、はあっ……止まらない……っ」
発情期のカイルは欲情しっぱなしだ。
純世の後孔は挿入前にたっぷりと塗り込まれたローションと、彼の吐き出した精液で既にぐちょぐちょにされている。
感情と直結しているのか、彼の尾てい骨から生える尻尾はぶんぶんと音を立てて振り乱れていた。
痛みを感じるだけのセックスをされたかったわけではない。痛いのは嫌だし怖い。けれど、ただただ快感だけをひたすらに与えられるセックスも恐怖だった。
こんな強烈な快楽を味わってしまえば、体が陥落してしまう。心が望まなくても、体がこの男に堕ちてしまう。
「んゃっ、やらぁっ、もう、やめっ、んあ゛~~~~っ」
「可愛いっ、好きだ、はあっはあっ……堪らない、純世の、中っ……締め付けられて、搾られる……っ」
「もっ、やあぁっ、また、中出しっ……んあぁっ、いっぱい出てるぅ……っ」
カイルはどぷどぷと大量の精液を注ぎ、それを胎内に塗り込めるように陰茎を動かした。そうしている間に、彼のそれは幾度となく硬度と体積を増していくのだ。
「ひぃっ、もぉむりぃっ、んっあっ、ああぁっ、も、せっくしゅ、しないれぇっ」
「何を言っている……。純世には、こんなんじゃ、全然、足りないだろうっ……君に満足してもらえるまで、何度でも、セックスしよう……っ」
「んおぉ……っ」
再び激しい突き上げがはじまり、純世はされるがままに揺さぶられるしかなかった。
「あっ、あっ、あ゛~~~~っ」
あれからどのくらい時間が過ぎたのか。少なくとも一日以上経った今でも、カイルは純世の中に居座り続けていた。
鍵はカイルが持っていたようで、手錠は既に外されている。けれど、抵抗する体力はもうなかった。
ベッドに座る彼は背後から純世を抱え、ごちゅっごちゅっと下から内奥を突き上げる。
「んぉっ、おっ、んぅうううっ」
「はあっ、可愛い、純世っ、純世……っ」
カイルの昂りは未だ鎮まる気配もなく、飽きる事なく純世の体を貪る。
ぬるぬると、彼の大きな舌が純世のうなじを舐め回す。時折優しく牙を当てられ、恐怖と快感がない交ぜになった感覚にぞくぞくっと背中が震えた。
体液でぬかるんだ胎内をぐちゅぐちゅと掻き回しながら、カイルは純世のぺニスへと手を伸ばす。
「ひあぁっ、やっ、やらっ、も、ちんこ、しゃわるなぁっ、ああっ、んひぃいっ」
純世のぺニスからはとっくに精液は尽きていた。精液が出なくなれば、彼はそこから潮を噴かせたがった。
敏感な先端を掌に包まれ、くちゅくちゅと撫で回される。痺れるような鋭い快感に、純世は悲鳴じみた声を上げる。
「くひぃっ、ひっ、あっ、あっ、あっ、やめぇっ、あひぃっ、ひっ、あ゛っ、~~~~~~っ」
プシャプシャッと、シーツに飛沫が飛び散る。
潮吹きの刺激に後孔がきゅうっと締まり、カイルもまた純世の中に精を吐き出す。
「純世っ……はあっ……君の中が俺の子種を欲しがって、うねっている……。嬉しいよ、純世……っ」
「ひうぅっ……んっ」
純世の体の反応を勝手に解釈し、勝手に興奮したカイルにベッドに押し倒される。力の入らない純世の体は、じっとりと濡れたシーツの上にうつ伏せになった。
カイルは純世の背中に覆い被さり、最奥をとちゅっとちゅっと亀頭で捏ねる。
ふと視界の端に動くものを見つけ、純世はそちらへ顔を向けた。
そこにいたのは純子だ。彼女は水と軽食が乗った盆を持っている。彼女はこうして定期的にこの部屋に飲料と食料を運んでくる。
ノックはしているようなのだが、純世の耳には届かないのだ。獣人のカイルの耳には絶対に届いているはずだが、彼がノックを気にする素振りを見せる事はなかった。こうして純子が部屋に入ってきても、彼が見ているのは純世だけで彼女の事など気にも留めない。
純子はベッドの横の棚に盆を置き、これまでのようにすぐに立ち去ろうとした。
「待って、待ってぇっ、しゅみこねぇしゃっ、あっ、あっ」
実の姉にセックスしているところを見られているという羞恥は最早持ち合わせていない。恥も外聞もなく、助けを求めて彼女に縋った。
「た、たしゅけっ、たしゅけてぇっ、おねがい、しゅみこねぇさぁんっ」
実の弟が涙を流し助けを求めているというのに、彼女はにっこりと微笑んだ。ほんの少しの憐れみさえ浮かべずに。
「何を言っているの? 純世くんはセックスが大好きなんだから。たくさんセックスしてもらえて嬉しいでしょう?」
「こ、こんなっ、こんなの、むりぃっ、こんな、されたらっ、ああっ、おかひくなるぅっ」
「良かったわねぇ。カイルさんがいてくれたら、もうセックスしてくれる女の子を捜さなくていいんだもの。セックスする為に嘘をついて、セックスしたいが為に笑顔を振り撒く必要もない。だって、これからはそんな事をしなくてもカイルさんがセックスしてくれるものね」
「ひうっ、ううっ、ねぇさっ」
「獣人の発情期は三日は続くそうよ。あと一日半もセックスし続けてもらえるわよ」
「そ、そんなっ、そんなのむりぃっ」
「無理じゃないわ。だって純世くんはセックスが大好きなんでしょう? 罰を与えるはずが、これじゃあご褒美になってしまうわねぇ」
うふふふふ、と楽しそうな笑い声を零しながら彼女は無情にも部屋を出ていってしまう。
「んおおぉ゛……っ」
どちゅんっと最奥を強く貫かれ、純世は衝撃に目を見開く。
純世が他の事に気を取られていた事を叱るように、カイルはばちゅっばちゅっと激しく内奥を穿つ。
真上から叩きつけるように剛直を何度も突き立てられ、強すぎる快感に全身が痙攣した。
「ひぐっ、んぁっ、あ゛っ、ごめっ、んんっ、ごめんなしゃいぃっ、ひぃうっ、んうぅっ」
繰り返し達しながら、純世は必死に許しを請う。
「ひはぁっ、ああっ、ちゅよいぃっ、おくっ、らめぇっ、あっあっ、ひぃっ、ゆるひてっ、ごめんなひゃっ、ああぁっ、ゆるひてぇっ」
しかしカイルは手を緩めない。己のメスをしつけるように、圧倒的な快楽を純世に植え付けてくる。
「もうしないっ、もうしないからぁっ、んくぅっ、おねが、ゆるしっ、ひああぁっ」
もう他の事に気を取られたりしない。セックスの事しか考えないから許して、と。
しかしもう、純世の謝罪が聞き入れられる事はなかった。
散々色んな女性とセックスをしてきた純世が、今までセックスで味わった事のなかった快感をこれ以上ないというほどに教え込まれたのだった。
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