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後日談
孝臣と恋人になって数週間が過ぎた。
大学では可能な限り一緒に過ごし、時間を合わせて一緒に帰り、前は外でご飯を食べていたが今は孝臣の部屋で一緒にご飯を作ってそれを一緒に食べ、イチャイチャして同じベッドで眠る。
一緒に暮らしているわけではないが、睦月は毎日のように孝臣の部屋に泊まり、恋人としての時間を過ごしていた。
こんな日が来るなんて思っていなかった。睦月は幸せな日々を送っていた。
今日も睦月は孝臣の部屋で、一緒にコーヒーを飲みながら他愛ない会話を楽しんでいた。
ふと、棚にあるものに気付き指差す。
「孝臣先輩、コレってアルバムですか?」
「ああ、うん」
頷く孝臣に、キラキラと瞳を輝かせて尋ねる。
「見てみたい! 見てもいいですか?」
「いいけど」
「やったー!」
許可をもらい、睦月は早速アルバムに手を伸ばす。ローテーブルの上でそれを開いた。
「わあ! めちゃくちゃ可愛い……っ」
生まれたての孝臣が徐々に大きくなっていく姿がおさめられた写真がそこにあった。
この頃から孝臣は一際輝いて見えた。何をしていても、どんな表情でも、全てが可愛い。
睦月の胸はきゅんきゅんとときめく。
「ああー、尊い……。この頃の先輩に会いたい……。先輩、写真撮ってもいいですか?」
どう足掻いてもこの頃の彼に会う事はできない。ならばせめて愛らしい孝臣の姿を手元においておきたい。そんな思いから睦月はスマホを取り出す。
「えー、それは恥ずかしいかなー」
「お願いします!」
「じゃあ今度、睦月のアルバムも見せてくれる?」
「えっ……俺のですか……?」
「俺ばっかり見られるなんてズルいじゃん」
「わ、わかりました……。見せます……」
「ならいいよ。約束だからね」
「はいっ」
条件付きだが許可を得て、睦月はアルバムにおさめられた写真をスマホで写真に撮る。一枚残らずコレクションしていく。
その様子に孝臣が呆れた視線を送る。
「いや、撮りすぎでしょ」
「だってどれも可愛いから。撮らないともったいないです!」
興奮気味にアルバムを捲っていく。すると途中から、成長した孝臣と赤ちゃんのツーショット写真があらわれる。
「あ、コレって弟さんですよね?」
「うん、そう」
「わあぁ、ツーショットもめちゃくちゃいいですね」
幼い兄弟が一緒に眠る姿や、小さい兄が更に小さい弟にミルクをあげる姿は微笑ましく、ぎゅうぎゅうに抱き締めたい衝動に駆られる。
脂下がった顔で見ていると、孝臣と絋とは別の子供が写真の中に現れた。
女の子のように愛らしいその顔にピンときた。
「この子は、巳春くん……?」
「ああ、うん。その頃から絋は巳春にべったりだったなー」
昔を懐かしむように孝臣は呟く。
家が近所で家族ぐるみで付き合いがあるのだろう。孝臣の家族と巳春の家族が一緒に写っている写真もある。
その時、孝臣のスマホが鳴った。
「あ、母親から電話だ。ごめん、ちょっと出るね」
「はい、どうぞ、お気になさらず」
孝臣はスマホを持って離れていった。
睦月はアルバムへと視線を戻す。
ちらほらと、幼い巳春が一人で写っている写真もあった。
子供の頃から付き合いがあり、本当に孝臣にとって巳春は家族同然の存在なのだろう。弟のように可愛がっているのだ。だから、巳春だけが写っている写真があってもおかしくはないのだろう。絋だけの写真もおさめられているのだから。
だから、深い意味はない。気にする必要なんてない。睦月が巳春に嫉妬する理由なんてない。
でも、こうして巳春の写真が孝臣のアルバムにおさめられているのを見ると、羨ましく思ってしまう。
だって孝臣がこのアルバムを捲るたびに彼は巳春の事を考える。巳春との思い出に浸るのだ。
恋愛感情は抱いていないとしても、孝臣にとって巳春は特別な存在だ。幼馴染みで、家族のように大切な存在。
孝臣と巳春が一緒に過ごしてきた年月は、睦月とは比べものにならないほどに長い。睦月の知らない孝臣を、巳春は沢山知っているのだろう。
そんな風に考えると、どうしても心穏やかでいられない。巳春が羨ましくて堪らなくなる。
睦月だってもっと早く孝臣と出会いたかった。子供の頃から彼の傍で、彼と一緒に成長していきたかった。
そんな事を考えてしまう。望んだところでどうにもならないというのに。
アルバムを捲る手はすっかり止まっていた。そこへ、電話を終えた孝臣が戻ってくる。
「ごめんね、睦月」
「い、いいえっ」
睦月は我に返り、思い出したようにアルバムを捲る。
「あ、この写真の先輩も可愛いっ」
「小学校の入学式かー」
「初々しいですね」
「そりゃ一年生だしね」
そうして孝臣の写真を見て楽しみながらも、睦月の心はずっと引っ掛かっていた。
それから数日後。睦月は今日も孝臣の部屋にお邪魔していた。
一緒に作った夕飯を食べ終えた後、孝臣が言った。
「睦月、先にお風呂使っていいよ」
「えっ、あ、いえ、孝臣先輩がお先にどうぞ!!」
思わず声が大きくなってしまった。睦月はわたわたと手を振り回す。
「俺の事はお気になさらず!! どうぞ、お先に!!」
挙動不審な睦月に、孝臣はにっこりと微笑む。
「じゃあ一緒に入る?」
「それはダメです!!」
「ダメなの? どうして? もう何回も一緒に入ってるだろ?」
「あ、だ、ダメじゃなくて、その……あっ、やっぱり俺、先にお風呂入ってきます……!!」
睦月は逃げるように浴室へ駆け込んだ。
変な態度を取ってしまった。孝臣に怪しまれていないといいのだが。
不安に思いつつ体を洗う。
浴室を出て、部屋着に着替えた。ほぼ毎日泊まっているので、睦月の着替えは孝臣の部屋に完備されている。
リビングに戻り、孝臣に声をかける。
「孝臣先輩、上がりました。お先にありがとうございます」
「うん。じゃあ俺も入ってくるよ」
「はい!! ごゆっくり!!」
平静でいようと思うのに声に力が入ってしまう。
だが孝臣は特に気にする様子もなく浴室へ向かっていった。睦月はホッと胸を撫で下ろす。
孝臣の姿が見えなくなり、睦月は目的を果たすため行動に移る。
持ってきた鞄から、数枚の写真を取り出した。そして棚からアルバムを引き抜く。
「よし……っ」
ゴクリと喉を鳴らし、アルバムを床に広げた。目当てのページを開く。
巳春が一人で写っている写真。その上に、持参した写真を重ねて入れる。巳春の写真が隠れるように。
巳春が一人で写っている写真を、一枚一枚、そうして別の写真で隠していく。
その時。
「何してんの?」
「っぎゃああ……!?」
突然後ろから声をかけられ、睦月は悲鳴を上げて飛び上がる。
弾かれるように振り返ると、怪訝そうにこちらを見下ろす孝臣が立っていた。
「た、たたっ、孝臣せんぱっ……どうして、風呂は……!?」
「いや、睦月が明らかにおかしかったから……。俺がいない間に何かするつもりなのかと思って見にきた」
「なっ……」
怪しまれていないと油断させて、泳がされていたのか。その事に気付き、睦月はショックを受ける。
「それで、何してたの?」
「えっ、あ、いや……これは……っ」
孝臣はしゃがみ、睦月の手元を覗き込んでくる。
どうしよう……と睦月は焦るが、今更隠しようもない。
「ん? コレ、俺のアルバム?」
「あっ、えっと、その……」
「あれ?」
見覚えのない写真が紛れているのに気付き、孝臣は首を傾げる。
「もしかして、写ってるの睦月? コレ、睦月の子供の頃の写真?」
「は、はい……」
孝臣の言う通り、睦月が持参した写真には幼い頃の自分の姿が写っている。
「はは、ちっちゃい睦月、かわいーね」
「あ、ぅ……」
「でも、何で俺のアルバムに入れてんの? 今度睦月のアルバム見せてとは言ったけど……」
「あの……その……」
孝臣は手を伸ばし、入れられたばかりの睦月の写真を取り出す。その下に現れた巳春のワンショット写真を見て、彼の動きが一瞬止まる。
「違うんです……!!」
睦月は咄嗟に声を上げていた。
「これは違くて! わかってます、わかってるんです、孝臣先輩は巳春くんの事を家族みたいに思ってて、恋愛感情とか一切ないってちゃんとわかってます!!」
焦りから、早口で捲し立てる。
「だからこれは別に焼きもちとかじゃなくて! ただ先輩がこのアルバム開いたとき、巳春くんの事じゃなくて俺の事を考えてほしいって思っただけというか……! ちょっとしたイタズラみたいな感じで! 見つかったらすぐに俺の写真は回収するつもりで……っ」
噛みつくようにキスをされて、睦月の言葉は遮られた。
「んっ……んん……!?」
突然の事に、睦月は大きく目を見開く。
戸惑う睦月の唇を、孝臣が味わうように激しく貪る。
深い口づけが終わる頃には、睦月の顔はすっかり蕩けていた。
「はっ……ぁ……孝臣、せんぱ……?」
「睦月が可愛い事するから、我慢できなくなっちゃっただろ。俺、まだシャワー浴びてないのに」
「っ……」
強い情欲を孕んだ双眸に見つめられ、期待と興奮に睦月はぞくんと震えた。
「あっ、あっ、ああぁ……っ」
埋め込まれた陰茎で内奥をとんとんっと突き上げられ、睦月は快楽にまみれた声を部屋に響かせる。
「んあっ、ひっ、んぅっ……きもちぃ、あっあっ、孝臣せんぱ、あぁっ」
「ん……俺も」
孝臣の声は色っぽく掠れていた。頬が紅潮し、息も乱れている。
色気の漂う孝臣の表情に官能を刺激され、きゅうっと後孔を締め付けてしまう。
「っ……どうしたの、睦月。急にここ、ぎゅってして」
「あっ、ぅっ……孝臣先輩……好きって、なって……そしたら、ぎゅって、なっちゃう……っ」
「はは……かわいーの」
「んむっ、んんっ……」
ぎゅうっと抱き締められ、深く唇を重ねられる。舌を絡め擦り合い、睦月は彼にしがみつく。
対面座位はこうしてぴったりとくっついて抱き合えるのが好きだ。孝臣の体温も呼吸も全てを感じられる気がして、一つになっているような感覚になる。
「んぁっ……んっ、んっ……はぁ、んっ」
舌を触れ合わせながら、中をぐちゅぐちゅと刺激される。根本までぎっちりと埋め込まれた彼の陰茎に、肉襞が絡み付く。
脳髄が蕩けるようなキスも、腸壁を擦られるのも気持ちよくて、睦月は顔をとろとろにして快楽に耽溺する。
「んうぅっ……!?」
背中を撫でていた孝臣の手が、肌を滑り前へと移動し睦月のぺニスを握り込む。新たな刺激を与えられ、びくんっと体が跳ねた。
「んはっ、ぁっ、せんぱ、あっ、そこ、だめぇっ」
「ん? どうして?」
先走りをたらたらと滴らせていたそれをくちゅくちゅと擦られて、睦月は強い快感に背中を仰け反らせる。
「ああぁっ、だめっ、こすられたら、すぐいっちゃうっ、あっあっあっ、だめぇっ」
「我慢しないで、イッていいよ。ほら、睦月、イッて」
「っ、っ、──~~~~~~っ」
内奥をとちゅとちゅ突かれ、ぺニスを上下に擦られ、耳元で熱い吐息を吹き込むように囁かれ、睦月は呆気なく精液を漏らした。射精するぺニスを搾り上げるように扱かれて、強すぎる刺激に、しがみつく孝臣の肌に気づかぬままに爪を立てる。
後孔がきつく内部を締め付けるが、孝臣の陰茎が精液を吐き出す事はなく硬度を保ち続けている。
「はっ……あっ、んぅ……っ」
射精の余韻に浸り、睦月は荒い呼吸を繰り返した。息を整えながら、後孔に挿入された孝臣の欲望が未だ固くそそり立ったままなのに気づく。
火照った頬に、孝臣の唇が落とされる。甘やかされて、睦月は拗ねたように唇を尖らせた。
「もうっ……また、俺ばっかり、気持ちよくして……っ」
「俺も気持ちいいよ? それに睦月が気持ちよくなってるの見るの好きだし」
「だめ、です……今度は俺が、孝臣先輩を気持ちよくしますから……っ」
「っぅお……と……っ」
睦月は孝臣の胸を押して上体を倒した。仰向けに寝る孝臣の上に跨がる状態になる。
「ぉ、俺が、するんですからね……っ」
「はーい、わかったよ」
「っふ、ぅっ……んあぁっ」
孝臣を快楽でぐちゃぐちゃにするのだ、と意気込んで腰を動かす睦月だったが、敏感な肉壁が擦れる感覚に体はガクガクと震え満足に動く事もできなくなる。
「ひぁっ、あっ、あぁっ」
「大丈夫、睦月?」
「だいじょ、ですっ、んっ、あっ、んんぅっ」
倒れ込みそうになるのをこらえ、睦月は必死に腰を上下する。もっと激しく、叩きつけるような勢いで振りたくりたいのに、ぬるい腰振りしかできない。
「ひぅっ、んっ、ごめ、なさぁっ、あぁっ、中、擦れるのきもちよくてぇっ、んぁっあっ、ゆっくりしか、うごけな、あっ、あっ」
「謝らないで、気持ちいいよ、すごく。きゅんきゅんって絡み付いてくる睦月の中で擦られるの、俺も気持ちいい……っ」
「でもぉっ、んんっ、もっと、もっと、きもちよくなってほしぃ、あっ、ああぁっ」
「じゃあ、好きって言って。いっぱい言って、睦月」
甘く蕩けた顔でお願いされ、睦月はきゅうぅっと中を締め付け、腰を揺すりながらその言葉を口にする。
「すき、すきっ、孝臣せんぱ、あぁっ、すきぃっ、せんぱい、すきっ、だいすきっ」
「うん、俺も、睦月が好き」
「ひああっ、すき、孝臣せんぱいが、いちばん、だれよりも、すきっ、いっぱいすきぃっ、せんぱい、せんぱぁいっ」
「俺も、睦月が何より大切で、大好きだよ」
「っ、~~~~っ」
体も心も孝臣で満たされ、睦月は眩暈を感じるほどの愉悦に酔いしれる。頭がふわふわして目の前がチカチカして、体のゾクゾクが治まらない。
「ひっ、あぁっ、たかおみ、せんぱ……あああぁっ」
いきなりずんっと下から突き上げられ、最奥を穿たれる。
「ごめんね、我慢できなくなった……っ」
「あひぁあっ、あっあっあっ、あ~~っ」
がっちり腰を掴まれて、ごちゅっごちゅっと深く中を貫かれる。
「しゅきっ、あぁっ、せんぱ、すき、すき、んひっ、ああぁっ、しゅきぃっ」
快楽に溺れながらも睦月はその言葉を紡ぐ。
「俺も、睦月が好き、大好き、誰にも渡したくない、俺だけのものにしちゃいたいくらい、好き……っ」
「ひうっ、んぅううっ、ひっ、あっ、しゅき、せんぱ、くひぃんっ、んっ、あっあっ、しゅきっ、しゅき、たかおみせんぱいぃっ」
「愛してる、睦月」
「っ、──っ、あ゛~~~~~~~~~~っ」
「っ……」
激しく内奥を突き上げられ、彼の言葉と強烈な快感に睦月は絶頂へと導かれた。
喉を反らせぶるぶると身を震わせる睦月の後孔に、孝臣の精液が注がれる。
「ぁっ、あっ……たかおみしぇんぱ……すきぃ……っ」
陶酔したようにへにゃりとだらしない笑みを浮かべる。
「気持ちよくしてくれてありがとう、睦月。次は俺の番だよね」
「はへぇ……?」
にっこり微笑む孝臣に押し倒され、睦月はまた目も眩むような快楽の波に揉みくちゃにされるのだった。
何度も抱き合って、色んな体液で身体中汚れてしまった睦月はまた風呂に入る事になった。今度は孝臣と一緒に。
全身洗って、二人で湯船に浸かる。睦月は孝臣に背を向け、彼の脚の間に体育座りしている状態だった。
「…………孝臣先輩、怒ってないですか?」
「怒る? 何で?」
「写真の事……。あれって、巳春くんからしたら気分のいいものじゃないし……今更ですけど、すごく嫌な事しちゃったなって、思って……」
未遂に終わったが、今になって冷静に考えるととても失礼な事をしてしまったと、睦月は深く反省する。
けれど孝臣ははははと軽く笑い声を上げた。
「そんな事ないって。巳春も、もし知ったとしても全然気にしないだろうしな」
「でも……」
「俺は寧ろ嬉しかったよ。睦月かわいーなーって」
ぎゅっと背中から抱き締められる。
「もっとわがまま言ってくれてもいいくらい」
「わがまま、ですか……?」
「うん。もう巳春と会わないで、とか。連絡取らないで、とか」
「ええっ……さすがにそんな事言いませんよ……」
「えー、そんなん言われたらめちゃくちゃ嬉しいのに」
ぐりぐりと頭に孝臣の頬を押し付けられる。
そんな事を言われて嬉しいなんてあるだろうか。束縛が激しく独占欲を剥き出しにしたら、面倒だと思われてウザがられるのではないだろうか。
でもふと思う。もし孝臣に「俺以外の男と話さないで」とか言われたら嬉しいかもしれない。孝臣になら独占されたいと思う。
「孝臣先輩も、わがまま言っていいですからね」
「はは、そんな事言われたら、いっぱい言っちゃいそうだな」
ぴったりと身を寄せ合い、二人で笑い合う。
結局睦月の持ってきた写真は、孝臣のアルバムにおさめられる事になったのだった。
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