【完結】男爵令嬢は冒険者生活を満喫する

影清

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55.

 八月十五日午前十時、ダンジョン前広場は静かなざわめきに満たされていた。
 掲示板前に、王太子が護衛騎士を連れて現れたのである。
「おはようございます、殿下」
「おはよう」
 兄妹が一番に挨拶をし、王太子がにこやかに挨拶を返す。
 リアムも少し硬い笑みを向けて頭を下げて挨拶をすると、王太子は「彼らから話は聞いている。とても優秀な魔法使いとか。今日はどうぞよろしく」と丁寧に返し、リアムは恐縮した。
 夫婦は完全に硬直していたが、夫は深々と頭を下げ、妻はカーテシーをして「王太子殿下、ご機嫌うるわしく」と自己紹介をした。
 王太子は鷹揚に微笑みながら、「頭を上げてくれ。今日は仲間だ。楽にしてほしい。優秀な冒険者だと聞いている。よろしく」と王族のオーラを見せつけながら答えた。
 護衛騎士はボス討伐のヘルプということもあり、五名背後についていて、屈強な料理人と、必要品を担いだ騎士がさらに十名、ついていた。
 物々しい雰囲気に兄は平然としているが、さすがにサラは驚いた。
「殿下、今日は護衛騎士の方がずいぶんいらっしゃるのですね」
 と言えば、王太子はひどく嫌そうに顔を顰めてみせた。
「そうだろう?サラ嬢もそう思うだろう?万が一のことがあった時に、盾となって死ぬ要員なのだそうだ。全く王太子というやつは、どれだけ周囲に迷惑をかけているのだろうな…」
「で、殿下」
「王太子殿下だから仕方ないですね。ついて来て下さる皆さんの忠誠心に感謝しないと」
 兄の言葉に、サラ以外のメンバーが凍り付く。
 だが王太子は気にした風もなく、肩を竦めた。
「全くだ。死なせるつもりは毛頭ないし、全員無事に帰ってもらうさ。…で、話を聞く限りだと、今日中に六十階に到達できるとか?」
「はい。殿下がいるからもっと余裕で到達できそうですよ。下手したら今日中にボス討伐まで終わるかも」
「何!日帰りが可能なら、こんなにお付きは必要ないではないか!」
 背後を指さし、王太子が兄に詰め寄るが、兄は全く表情を動かさない。
 慣れているのだった。
「まぁまぁ。せっかくなんで、王宮料理を皆に振る舞って下さいよ。ゆっくり休んで明日余裕で討伐すりゃいいでしょ」
 そう言って、兄は「楽しみにしてます!」と屈強な料理人に手を振っていた。
 料理人はいい笑顔で手を振り返している。
「…そういうことならまぁ仕方ない。余裕で到達できるなら、作戦も練れるな」
「ですね。じゃぁさっさと行きましょう」
 メンバーに声をかけ、兄はサラの背中を押して歩き出す。
 王太子はサラの隣に並び、リアムと夫婦は後ろに並んで歩き始めた。
 五十一階に飛び、簡単に道中の進行説明を受けていた王太子は、盾役となるディランへと話しかける。
「ここからは、あなたに先行してもらうのが良さそうだ。頼めるだろうか」
「は、はい!お任せ下さい!」
「ついて来ている者達は戦闘には参加しない。だがちゃんとついて来るので、考慮しなくていい。いつものペースで進んでもらいたい」
「わかりました」
 ディランが前に出て、次に王太子と兄が並ぶ。その後ろに後衛の三人が並び、さらに後ろに王太子のお付きが続いた。
 王太子殿下の戦闘は久しぶりに見るな、とサラは思う。
 サラのBランクへの昇級試験の時に手伝ってもらって以来であった。
 走り出したディランについて、皆も走り出す。
 お付きの者達も、しっかり走ってついて来ていた。
「…王太子殿下がお手伝いで来られるとは、驚きました」
 リアムが呟き、ステラが頷く。
「本物…ですよね…」
「本物です。てっきり兄が話しているとばかり…すみません、殿下が来られたら驚きますよね」
「お知り合いだったのですね」
「兄が、殿下の側近なのです。十歳の頃から同じパーティーで冒険者をしていたこともあり、その縁で」
「クリスさんの固定メンバー…。なるほど、道理であなた達兄妹はとてもしっかりした方だと思っていました。殿下の側近であれば、その為人にも頷けます」
 ステラも隣で頷いていた。
「王太子殿下はお若いにも関わらず、素晴らしい見識をお持ちの方だと伺っております。Aランク冒険者であり、冒険者に対してとても理解のある方だと。ご一緒できて光栄ですわ」
「そうですね。私も光栄です」
 他人事のように言うサラに、二人は顔を見合わせた。
「サラさんもとても親しそうにお見受けしましたが」
「殿下は気さくな方でいらっしゃるので、兄の妹である私にもとても良くして下さいます。学園の生徒会でも一緒なので、他の方に比べればお話しさせて頂く機会は多いかもしれません」
「そうなのですか。…それにしても、殿下はとてもお強いですねぇ」
「クリストファーさんと変わらないくらいお強いですねぇ」
「そうですねぇ」
 後衛三人は、しっかりと仕事をしながらも、移動の隙を見ては会話をしていた。
 アタッカーとして行動している王太子と兄は、強化魔法を自身にかけ、魔力を剣に宿しながら殲滅を最優先に立ち回っている。
 兄は二刀流だが、王太子は右手に剣を持ち、左手は強化や敵への阻害等で常に魔法を使えるよう、手首に杖代わりのブレスレットをつけて立ち回っている。
 魔力で作った盾で攻撃も防ぐ。
 後衛の仕事は盾役の強化と回復、攻撃魔法で殲滅に参加し、アタッカーが攻撃しやすいように敵の動きを邪魔するくらいであった。
 基本的には後衛も攻撃に回れるので、殲滅力はとても高い。
 今までになく早く階層を駆け抜けていき、昼の時点ですでに五十五階を越えていた。
 五十六階へと通じる広場で休憩になり、兄とディランが出したテーブルとイスに冒険者一行が座り、少し離れた位置には王太子自らがマジックバッグから取り出したテーブルとイスを並べて、お付きが座って食べられるようにしていた。
 恐縮しそうなものだが、お付きの者に動揺する様子はない。
 いつもそうしているようで、皆王太子に頭を下げて礼を言った後は昼食の準備をしていた。
 王太子の護衛としては二名が背後に控えているが、おそらく昼食を食べたら交代するのだろう。
 料理人と荷物を担いだ護衛騎士がこちらに歩いてきて、「失礼します」と荷物を広げ始めた。
 すでに完成しているサンドイッチや、密封した鍋を開けて器に盛った冷製スープが並べられる。
 パーティーの人数分用意してきてくれたらしく、次々出てくる料理に皆が驚いた。
 栄養と彩り、もちろん味にもこだわり抜いた料理人渾身の品々を、ありがたく頂く。
 とても高級で上品な味がした。
 昼食中はこれからの進行と、軽く夫婦の馴れ初め等を聞いたくらいで出発となる。
 兄達は少しレベル上げも兼ねて敵を倒していこうかと話をしており、その間にサラとステラは食器に浄化魔法をかけ、回収に来た料理人と騎士に渡せば喜ばれた。
「そちらの食器も浄化魔法をかけましょうか」
「えっいえいえ、そんなお手間を取らせるわけには」
「大丈夫ですわ。その間にテーブルを片づけておいてくれますので。美味しいお食事を頂いたのです。これくらいはさせて下さい」
 二人で頼み、料理人達は大いに感謝したのだった。
 王太子がやって来て、テーブルとイスを片づけた時にはすでに出発の準備は整っていた。
「時間に余裕がある為、少し敵を多めに倒して最後の仕上げをしていこう。ボス戦では連携も必要になる。雑魚敵で練習をしておけば、本番で焦らずに済む」
「はい」
 皆が頷き、王太子はサラを見た。
「サラ嬢は初めての挑戦になるから、イメージは掴みにくいかもしれない。でも必要なことだから、しっかり覚えて欲しい」
「はい、殿下」
「不明な点があればいつでも聞いてくれ」
「ありがとうございます」
 にこりと笑顔を向ければ、王太子もにこりと笑んだ。
 優しい方だな、とサラは思う。
 それからは少し時間をかけて敵を倒しながら進む。
 サラのレベル上げと、雑魚敵のワイバーンを仮想ボスに見立てて攻撃を避けたり、回復のタイミングを確認したりする。
 夕方頃六十階に到着した。
 夜と朝は料理人が作りたてのものを供してくれるということで、先にテントで汗を流し、着替えてから集合する。
 男性陣はすでにテーブルに飲み物を置いて寛いでおり、サラが近づくと兄が気づいて手招いた。
「サラはここ」
 といって指定してきたのは兄と王太子の間であり、サラは戸惑う。
「え、私そこでいいの…?」
「ボス戦の作戦とか、詳細に説明しないといけないだろ?」
「そ、そっか、そうだよね」
「どうぞ、サラ嬢」
 王太子自らが立ち上がり、イスを引いて待たれてしまっては嫌とは言えない。
「失礼します」
 サラが腰掛け、王太子も腰掛けた。
 テーブルは六人掛けの大きめの物になっており、王太子の向かいにディランが、隣がまだ空白だがステラが、その隣がリアム、という順になっていた。
 護衛騎士が無言で近づき、紅茶を注いだティーカップを渡してくれて驚く。
「あっありがとうございます」
「いいえ」
 騎士はにこりと笑みを返して、隙なく下がる。
「侍女や侍従を連れて来ていないからか、何故か護衛騎士が真似事を始めてしまってね。すまないが、好きにさせてやってくれ」
「あの、私がやります」
 騎士に話しかければ、騎士は首を振った。
「いえ、我々は緊急時に備えるだけで、普段は何のお役にも立てておりません。せめてこれくらいはさせて欲しいと、殿下から許しを得ております。ですので、我々にお任せ下さい」
「そうなんですか…あの、ありがとうございます」
「光栄です」
 騎士に恭しく頭を下げられ、サラは恐縮した。
 ステラが遅れたことを詫びながら頭を下げるのを王太子は首を振って許し、席に着いて騎士からティーカップを渡されてサラと同じように驚いていたので、場が和む。
 料理人も慣れたもので、皆が席に着く頃には料理が出てくるようになっていた。
 コース料理のように順番に出てくるのも驚いたが、騎士が給仕に徹しているのも驚く。
 基本を叩き込まれているのだろう、動きは様になっていた。
「立場上どうしても皆には不便をかけてしまう。しばらく慣れないと思うが、許容してもらいたい」
「だ、大丈夫です。お立場は十分理解しております」
 王太子の言葉にディランが答え、ステラとリアムが頷く。
「そう言ってもらえるとありがたい。食べ終わったら明日の作戦について話をするとして、食事中は…そうだな。あなた達夫婦は色々な依頼をこなし、各地を巡って来たと聞いている。様子を聞かせてもらえるだろうか」
「はい。私達でお話できることであればなんなりと」
 夫婦は嬉しそうに、王太子に聞かれるままに答えている。
 地名を聞けば、どこの貴族かはすぐにわかる。
 領地の様子は、そのままその貴族の評価だった。
 王太子が特に興味を引いたのは、各地の冒険者への対応だった。
 夫婦はとても良くしてくれた所、不快であった所を赤裸々に話し、それを聞いている兄妹もまた、「ああ、あの貴族はそうなのだな」という立場の把握に役立った。
 夫婦の話を聞いているうちに食事を終え、食後の紅茶を飲みながら、王太子は兄へと視線を向けた。
「さて、ではそろそろ作戦の説明を頼む」
「え?殿下がご自分でされるんじゃないんですか?」
「こういうのは参謀の仕事だろう?私はふんぞり返って頷くのが仕事だぞ」
「マジか…えー、ではざっくりと説明を。殿下以外には数日前に話してますし、殿下はご存じなので簡潔に。サラは流れの理解をしっかりな」
「はい」
「敵はホワイトワイバーン。最初は一体。基本戦術は四十階のブルーワイバーンと同じだが、ホワイトワイバーンの属性は光。広場の属性も光になるので、回復魔法の効果が上がる。…が、その分攻撃は痛い」
 見渡せば、皆が頷く。
「魔法系は効果が弱まる。弱体魔法は…リアムさんならレジストされることはないと思うので、任せたい。他メンバーだとおそらく半分以上はレジストされるだろう」
「はい」
 リアムが頷く。
「デバフが入れば楽になるが、それでも油断は禁物だ。体力を二割削ると空を飛ぶ。一割削ると落ちてくる。タッチダウンは頭割りダメージなので、全員で受けること。落ちてくるタイミングを見計らって後衛も強化魔法をかけ、ダメージを軽減しなければ半分以上持って行かれる。しっかりと全員の体力を回復しつつ、削っていく。ブルーワイバーンの竜巻のようなランダム進行のダメージトラップも発生する。当たらないようにかわすこと。定位置に発生するダメージトラップは八カ所。戦闘場所は中央付近から動かさないこと。常に自分の位置を把握し、トラップを踏まないこと」
 サラは脳裏にしっかり叩き込む。
 つい最近戦ったばかりのブルーワイバーンを例に出してくれるおかげで、想像はしやすかった。
「あと総崩れになるパターンとしては、タッチダウン対策として後衛がずっと中央に居座ることだ。範囲魔法もあるし、範囲攻撃もある。タッチダウン後の建て直しが済み次第、速やかに離れること。…故に、己の位置把握が重要になる。ここまではいいかな」
 サラに向かって問うてくるので、サラは頷く。
「はい」
「体力を半分削ったところで、ボスは下僕を召喚する。レッドワイバーンと、ブルーワイバーンだ。三十階のボスと、四十階のボスだが体力は増えているから、分担を決めておかないと崩れる。レッドワイバーンは私が、ブルーワイバーンは殿下が担当します。ディランさんはボスの維持を。二体はそれぞれ広場の端へと引き離し、処理をします。倒すまでボスは体力を回復し続けるので、スピードが命です。二体を倒したら、もう空は飛びません。かわりに猛攻が来るので、回復は厚めに。タッチダウンの変わりにボディプレスを使う。これは最後一割を切ったら来るので、常に仲間の体力を注視しておくこと。強化魔法は半分を切った段階で、後衛も常にかけておくことが重要になります」
 覚えることが多くて大変だったが、サラはすでに前回聞いたときにメモをして、内容を頭に叩き込んで来ていた。
 流れは理解した。
 後は本番で上手く動けるかどうかだった。
「後衛の分担は、体力半分まではサラにメイン回復を担当してもらおうと思う。ここで言うメイン回復とは、盾役のディランさんの強化と回復を最優先、という意味だ。殿下と私は強化魔法は自分でかけるし、スキルも使う。回復は範囲攻撃の時にダメージを食らったらだが、ステラさんに補助をお願いしようと思います。もしサラが回らないようならお願いします」
「はい」
「盾役が落ちたら終わりだから重要な役割だが、初挑戦なら回復に専念できた方がいいと思う。罠の処理もあるし、専念できるとは言え大変だ。できるな?」
「頑張ります」
 サラが頷けば、兄も頷く。
「うん。後半、下僕を召喚してからは、メイン回復はリアムさんと交代して欲しい。殿下とサラはブルーワイバーンを、私とステラさんはレッドワイバーンを落とす」
「はい」
「最後の猛攻モードになったら、サラとステラさんにも回復厚めで立ち回ってもらう必要がある。回復し、攻撃し、かつ自分達に強化魔法もかけなきゃいけないし、罠も避けなきゃいけない。忙しいが、頑張ろうな」
「はい」
「何か質問はあるでしょうか」
 兄が見回し、王太子が手を挙げた。
「殿下、どうぞ」
「戦闘時間はどれくらいを想定している?」
 つまり、メンバーの戦力はどれくらいか、と聞いているのだった。
 十階層を駆け抜けてくる過程でだいたいは把握していても、ボス戦となると発揮する能力が違うのだった。
「そうですね、おそらく一時間程度かと」
「一時間?本当に?」
 王太子が驚いたように兄を見た。
 兄は頷き、リアムを見る。
「前半のリアムさんの働きが全てです。弱体魔法を入れた後は、最大攻撃魔法で削って頂きます。レジストされることは想定していないので、私達のパーティーが周回していた時より断然早いですよ」
「…そんなに?」
「はい。リディアも強いですが、リアムさんはその上を行きます」
「……」
 王太子はリアムを見る。
 リアムは驚いたように兄を見ていたが、王太子の視線に気づいて恐縮した。
「それは頼もしいな。クリスがここまで手放しで褒める冒険者は初めてかもしれん」
「畏れ入ります」
「ならば、猛攻モードの時はサラ嬢と夫人の二人に回復に回ってもらい、リアム殿は回復補助と攻撃の方が楽ではないか?」
「それはそうなんですが、猛攻モードの時には防御力無視の攻撃が来るでしょう」
「…盾役の体力が半分削れるやつだな」
「そうです。経験者が回復に回った方が安全かと思ったんですが。…うーん。サラ、ステラさん、ボスの防御力無視の攻撃は、光属性の魔力を込めたブレスだ。連続では来ないから、挙動が見えたら回復魔法を構えておけば、崩れることはない。だが攻撃力自体は上がっていて、一撃がとても痛い。常時回復魔法を唱えているような状態になる。その辺は上手く二人で調整してもらえますか?」
 ステラの方へと視線を向ければ、ステラとサラは顔を見合わせていた。
「サラさん、猛攻モードの時には、一緒に行動しましょう。メイン回復はサラさん、ということにしておいて、私は積極的に回復と強化に回るってことで、どうかしら?」
「わかりました。頑張ります」
「…では最初から最後まで、メイン回復はサラさんで、下僕召喚の際、ブルーワイバーンを担当するのは私、でよろしいですか?」
 リアムが尋ねれば、王太子は一瞬悲しそうな顔をした。
 だがすぐに表情を改め、頷く。
「それが良かろう。戦闘時間が短いと言うことは、タッチダウンや猛攻モードのペースが速くなるということだ。サラ嬢は回復が大変になると思うが、皆で補助もして欲しい」
「わかりました」
 皆が頷き、一段落したところを見計らって、騎士達がカップを下げて、新しくココアを入れたコップを置いていく。
 王太子が目を瞬いて、騎士を見た。
「これは?」
「はっ、ココアであります。料理長から、明日はバートン男爵令嬢の初のボス戦であるとのこと、夜はゆっくり休んで欲しい、との配慮です」
「なるほど…」
「私が頼みました。まさか全員分出てくるとは思いませんでしたが」
 兄が苦笑混じりに言い、全員の顔が綻んだ。
「え、あの、気を遣って頂いて、ありがとうございます、とお伝え下さい」
 サラが騎士に言えば、騎士は労わるような視線を向けた。
「明日は頑張って下さい」
「ありがとうございます。頑張ります」
「ココアなんて、幼少の頃以来だな…」
 王太子は呟いて、不満も言わずに飲んでいた。
「お兄様、ありがとう」
「ココアはいつも飲んでるからな。落ち着くものの方がいいだろう?」
「そうだね。家族団欒を思い出すね」
 ちらりと見る王太子の視線を感じたが、クリスは無視をした。
「明日寝不足、なんて許さないからな。ちゃんと眠るんだよ」
「はい」
 嬉しそうにココアを飲む妹を見て、兄も口を付けた。
 いつも飲んでいるココアより、薫り高く上品な味がした。
 夫婦もリアムも懐かしい、と言いながらココアを飲み、少し早いがその日は解散となった。
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