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248. ドワーフ国に行く俺2
ミカエルと最高司祭ジーンは、緊張でカップを持つ手が止まった。
シャリエルは無言でちらと聖女を一瞥した後は視線を逸らし、視界に入れないようにしていた。
聖女は堂々と、言ってのけた。
「聖女様の宮をドワーフが建てたってなったら、有名になるぜ。宣伝効果抜群!大人気間違いなし」
誰に対してもタメ口は、やめて欲しい、とミカエル達は思う。
時と場合を選んで欲しいのだが、聖女とご友人は、言っても理解してくれない。
ここはゲームの世界で、ミカエル達をNPCだと思っているからだ。
どんな言動をしようとも、ストーリーに変化はないと信じているのだ。
なぜここが現実だと理解してくれないのかが、わからない。
余程グラフィックがリアルなVRの恋愛ゲームだったのだろうか?
だから区別がつかないのだろうか?
ミカエルはため息を噛み殺し、ドワーフ王の様子を窺った。
王は少し考える素振りを見せたものの、首を振った。
「宣伝なんぞしてくれんでええわい。それで過去わしらは、痛い目に遭ったんじゃからの」
「えー」
「ああ、おまえさんが聖女か」
「そうだけど」
「おまえさんは魔術師か?司祭か?」
「は?いや、人間ですけど?」
「……」
王は、ミカエルへと問うような視線を向けた。
やめて、俺を見ないで。
だが逃げられないので、ミカエルは正直に話すことにした。
偽った所で、王の人を見る目は誤魔化せない。
「聖女殿は、魔王戦で聖印を使って頂くことを条件に、魔王の元まで護衛をつけてお連れします」
「…そんな聖女、初めて聞いた」
「ですよね…」
「俺が初の戦わない聖女だぜ。カッコ良くね?」
何が格好良いと感じるかは、人それぞれだ。
聖女はそれが格好良いと感じているが、他人もそうとは限らない。
王は顔を顰め、なるほどと呟いた。
「聖女宮とやらは、どこに建てるって?」
「デューイが建ててくれるっつーから、ソウェイサズ王国?だっけ?の王宮だな。ミカエルが住んでるトコ」
「ほーん。出張費人件費だけでも莫大になるが、払ってくれるんじゃろな?」
「え?タダじゃねぇの?」
「んなわけあるかい」
「アイツらの鎧はタダなのに?」
「宮殿と鎧を同列に語られても笑止、としか言えんが」
「えー…?まぁ、デューイが払ってくれっから!ヘーキヘーキ」
「デューイってのは?」
またミカエルを見てくるので、王にわかりやすく答える。
「王太子殿下です」
今は、まだ。
注釈がつくが、王はまた首を傾げた。
「ミカ坊が王になるんじゃないんか?」
最初に名乗った時、第一王子と言ったから、おそらくそう思ったのだろう。
否定しようと口を開いたが、ミカエルより先に聖女が吹き出した。
「ブッハ!違う違う。そこのミカちゃんはー、国ではチョー問題児で嫌われまくってっから!デューイが王太子になったんだよなぁ!」
「ちょっとやめてよ!ミカエルは問題児なんかじゃないんだからぁ!ちょっと、ちょーっとだけ、寂しかっただけなんだからね!!」
ご友人が横から口を挟み、ミカエルを庇おうとしているが、方向性がお門違いもいい所だった。
シャリエルとジーンは不快に眉を顰め、ミカエルもまた困惑した表情を作った。
今となってはその噂も望む所とはいえ、ここで言われるのはちょっと。
ドワーフ王に誤解されたらどうするんだ、と思っていると、王は今まで聞いたこともないような低音で、室内を震わせた。
「あ?」
ドワーフ族の威圧を、初めて見た。
身体全体が重力で押さえつけられるような重さと息苦しさを感じ、ミカエルとシャリエル、ジーンは息を呑んだが、全く戦闘経験のない聖女とご友人は、窒息する程の息苦しさに、テーブルに頭を押さえつけられ、喉をかきむしっていた。
すぐに威圧は消えたが、聖女とご友人は苦し気に咳き込んだ。
「…っな、なに、しやがる…っ」
「それはこっちの台詞じゃい。わしゃ言ったよな?ミカ坊はドワーフの友だと。ようもわしらの前で、ミカ坊の悪口言いよったな。国で嫌われてるじゃと?ならその国がおかしいわい。わしらは物を見る目は確かだ。間違えるもんかい。人だって一緒じゃい」
「ん、んなこと、わかんねぇだろ…ッ!あんたらの前で、猫被ってるだけかもしんねーじゃん!」
食ってかかる聖女を、王は鼻でせせら笑った。
「猫被ってもくれない国が、かわいそうじゃなぁ。そんな価値もないっつーこっちゃ。のう?ミカ坊」
「…王、私はソウェイサズ王国の人間なので、それ以上は」
今は、まだ。
これにも注釈がつくが、言いたいことは王が全て言ってくれた。
自分で言えないことが残念で、思わず苦笑してしまう。
今は、まだ言えない。
ミカエルの表情をどう受け取ったのか、王は一つ頷いた。
「ふむ、まぁええわい。そんな国に出向くのはお断りじゃい。他を当たれ」
「……っクソが」
「じゃぁ姫は?姫の服は、作ってもらえないんですかあ?」
「…あ?おまえさんはなんじゃい」
ご友人よ。
この状況で、よく言えたなその台詞。
ミカエル達はそのメンタルの強さに戦慄したが、ご友人は平然としていた。
「姫はぁ、ゆずるん…えっと、聖女と一緒にこっちに来ちゃったんですけどぉ」
「一般人かい」
「その言葉、嫌いですぅ。姫も皆の仲間なんでぇ!」
「……」
また王の視線を受け、ミカエルはそっと瞳を閉じることで返答とした。
「なので、姫も新しい服、欲しいですぅ!」
「エルフ族に頼め」
王は華麗にスルーした。
投げられた球はシャリエルへと変化球で突き刺さったが、シャリエルの表情は無表情のまま変わらなかった。
「魔術を使わないのならば、各国の一流デザイナーに好きな服を作ってもらう方が、よほど有意義だと思うが?」
「えぇー!ドワーフとかぁ、エルフに作ってもらった、っていうプレミア感がいいんじゃん!」
「我々が装備しているようなデザインでいいのなら」
「…えー…それはちょっと…ローブは可愛いけどぉ…」
「では他を当たれ」
シャリエルにも同じように返され、ご友人はむくれた。
「酷い!デザインの希望くらい、聞いてくれてもいいじゃん!」
「各国の仕立屋に頼めば、好きなだけ要望を聞いてくれるだろう。エルフ族の仕立ては高いが、払えるのか?」
「え?何で払わないといけないの?シャリエルやジーンは、タダなんだよね?」
他人に向けられた厚意は、自分も享受することが当然、という思考の歪みと厚かましさに、ミカエルは眩暈がすると同時に、納得もした。
そういう人達なのだ、元々。
だから「軽い冗談のつもり」で、人の人生を簡単に壊してしまえる。
図々しい言葉にも、シャリエルの表情は変わらなかった。
「戦わない者に、タダで仕立ててやる義理はない。金が払えるなら検討しよう。払えないなら諦めろ」
至極シンプルな正論を述べられ、ご友人は泣きそうに顔を歪めた。
だが嘘泣きが発動する前に、ドワーフ王が豪快に笑い出した。
「ブワッハハ!エルフの王子よ、気に入ったぞい!それで全部解決じゃい。お見事!」
「ありがとうございます」
「……」
泣き出すタイミングを逸して、ご友人がぽかんと口を開けていたが、誰も気にかけることはしなかった。
聖女とご友人は、生活の保障はされているが、現金は持っていない。
欲しい物があれば、口座から引き落とされるようになっていた。
なので、彼らは自分達がどれくらいの金額を自由に使えるのかは、把握していない。
額自体は、王族に匹敵する予算が組まれており、そうそう使い切ることはない。
現に、今までゲームとしてのこの世界の攻略に精を出していた二人は、予算を使い切ったことはなかった。
払えるか払えないかで言えば、服代くらいは払えるはずだ。
しかしご友人にとって大事なのは、「厚意でタダで服をプレゼントしてくれる」ことであって、「自分で服を購入する」ことではない。
逆ハールートが順調ならば、ここで誰かが「じゃあ自分が買ってプレゼントするよ!」とでも言うのだろう。
でも誰も、何も言わなかった。
採寸を終えて戻って来た三人も、事情を聞いても何も言わなかった。
この場にいる者は全て、金持ちだ。
平民のアベルですらも、真面目にダンジョンに通い、魔族領に通い、魔獣を倒し続けた戦利品の分配金で、すでに立派な金持ちだった。
生活の保証は聖女達と同様にされているので、個人資産は貯まる一方のはずだ。
聖女とご友人は戦闘に参加していないので、分配はない。
この現状が、聖女とご友人に対する、勇者パーティーの好感度なのだった。
好感度が高ければ、反応は別の物になったことだろう。
鎧を仕立てる工房を、せっかくだから見学していけ、との王の厚意に、聖女とご友人は行かないと言って拒否をした。
帰る、と言い出したが、先に帰すわけにもいかない。
応接室で待っているよう言いおいて、ミカエル達は工房を見学させてもらうべく、部屋を出た。
「あ、そうだミカエル。正式に四国間で魔法陣の持ち出し、許可されたよ」
バージルに声をかけられ、ミカエルは喜んだ。
「すごい!本当に許可されたんですね…!」
「うん。魔道具にしてジーンに持たせることにした。魔王の魔石入りで」
「それじゃぁ…」
「魔王を倒したら、その場で聖女達は元の世界に帰す」
「わたくしの責任が、重大過ぎます」
ため息混じりのジーンに、バージルはちらりと視線を向けた。
「発動するだけでしょ」
「いえ、そうではなく、精神的な…いえ、結構です。最善を尽くします」
「?」
不思議そうなバージルにはわからなかったようだが、ミカエルには伝わった。
異世界に強制送還する実行犯の役割を、ジーンが担うのだ。
プレッシャーは、凄まじいものだろう。
だが聖教の秘術を他人に任せることは出来ないので、仕方がないことだった。
狭い通路は、声が反響する。
案内役のドワーフ族の戦士はいたが、他は勇者パーティーのみだった。
だからバージルはうっかり話してしまったし、ミカエル達も止めはしなかった。
暇を持て余した聖女が扉を開けて、聞いていることに、気づかなかった。
シャリエルは無言でちらと聖女を一瞥した後は視線を逸らし、視界に入れないようにしていた。
聖女は堂々と、言ってのけた。
「聖女様の宮をドワーフが建てたってなったら、有名になるぜ。宣伝効果抜群!大人気間違いなし」
誰に対してもタメ口は、やめて欲しい、とミカエル達は思う。
時と場合を選んで欲しいのだが、聖女とご友人は、言っても理解してくれない。
ここはゲームの世界で、ミカエル達をNPCだと思っているからだ。
どんな言動をしようとも、ストーリーに変化はないと信じているのだ。
なぜここが現実だと理解してくれないのかが、わからない。
余程グラフィックがリアルなVRの恋愛ゲームだったのだろうか?
だから区別がつかないのだろうか?
ミカエルはため息を噛み殺し、ドワーフ王の様子を窺った。
王は少し考える素振りを見せたものの、首を振った。
「宣伝なんぞしてくれんでええわい。それで過去わしらは、痛い目に遭ったんじゃからの」
「えー」
「ああ、おまえさんが聖女か」
「そうだけど」
「おまえさんは魔術師か?司祭か?」
「は?いや、人間ですけど?」
「……」
王は、ミカエルへと問うような視線を向けた。
やめて、俺を見ないで。
だが逃げられないので、ミカエルは正直に話すことにした。
偽った所で、王の人を見る目は誤魔化せない。
「聖女殿は、魔王戦で聖印を使って頂くことを条件に、魔王の元まで護衛をつけてお連れします」
「…そんな聖女、初めて聞いた」
「ですよね…」
「俺が初の戦わない聖女だぜ。カッコ良くね?」
何が格好良いと感じるかは、人それぞれだ。
聖女はそれが格好良いと感じているが、他人もそうとは限らない。
王は顔を顰め、なるほどと呟いた。
「聖女宮とやらは、どこに建てるって?」
「デューイが建ててくれるっつーから、ソウェイサズ王国?だっけ?の王宮だな。ミカエルが住んでるトコ」
「ほーん。出張費人件費だけでも莫大になるが、払ってくれるんじゃろな?」
「え?タダじゃねぇの?」
「んなわけあるかい」
「アイツらの鎧はタダなのに?」
「宮殿と鎧を同列に語られても笑止、としか言えんが」
「えー…?まぁ、デューイが払ってくれっから!ヘーキヘーキ」
「デューイってのは?」
またミカエルを見てくるので、王にわかりやすく答える。
「王太子殿下です」
今は、まだ。
注釈がつくが、王はまた首を傾げた。
「ミカ坊が王になるんじゃないんか?」
最初に名乗った時、第一王子と言ったから、おそらくそう思ったのだろう。
否定しようと口を開いたが、ミカエルより先に聖女が吹き出した。
「ブッハ!違う違う。そこのミカちゃんはー、国ではチョー問題児で嫌われまくってっから!デューイが王太子になったんだよなぁ!」
「ちょっとやめてよ!ミカエルは問題児なんかじゃないんだからぁ!ちょっと、ちょーっとだけ、寂しかっただけなんだからね!!」
ご友人が横から口を挟み、ミカエルを庇おうとしているが、方向性がお門違いもいい所だった。
シャリエルとジーンは不快に眉を顰め、ミカエルもまた困惑した表情を作った。
今となってはその噂も望む所とはいえ、ここで言われるのはちょっと。
ドワーフ王に誤解されたらどうするんだ、と思っていると、王は今まで聞いたこともないような低音で、室内を震わせた。
「あ?」
ドワーフ族の威圧を、初めて見た。
身体全体が重力で押さえつけられるような重さと息苦しさを感じ、ミカエルとシャリエル、ジーンは息を呑んだが、全く戦闘経験のない聖女とご友人は、窒息する程の息苦しさに、テーブルに頭を押さえつけられ、喉をかきむしっていた。
すぐに威圧は消えたが、聖女とご友人は苦し気に咳き込んだ。
「…っな、なに、しやがる…っ」
「それはこっちの台詞じゃい。わしゃ言ったよな?ミカ坊はドワーフの友だと。ようもわしらの前で、ミカ坊の悪口言いよったな。国で嫌われてるじゃと?ならその国がおかしいわい。わしらは物を見る目は確かだ。間違えるもんかい。人だって一緒じゃい」
「ん、んなこと、わかんねぇだろ…ッ!あんたらの前で、猫被ってるだけかもしんねーじゃん!」
食ってかかる聖女を、王は鼻でせせら笑った。
「猫被ってもくれない国が、かわいそうじゃなぁ。そんな価値もないっつーこっちゃ。のう?ミカ坊」
「…王、私はソウェイサズ王国の人間なので、それ以上は」
今は、まだ。
これにも注釈がつくが、言いたいことは王が全て言ってくれた。
自分で言えないことが残念で、思わず苦笑してしまう。
今は、まだ言えない。
ミカエルの表情をどう受け取ったのか、王は一つ頷いた。
「ふむ、まぁええわい。そんな国に出向くのはお断りじゃい。他を当たれ」
「……っクソが」
「じゃぁ姫は?姫の服は、作ってもらえないんですかあ?」
「…あ?おまえさんはなんじゃい」
ご友人よ。
この状況で、よく言えたなその台詞。
ミカエル達はそのメンタルの強さに戦慄したが、ご友人は平然としていた。
「姫はぁ、ゆずるん…えっと、聖女と一緒にこっちに来ちゃったんですけどぉ」
「一般人かい」
「その言葉、嫌いですぅ。姫も皆の仲間なんでぇ!」
「……」
また王の視線を受け、ミカエルはそっと瞳を閉じることで返答とした。
「なので、姫も新しい服、欲しいですぅ!」
「エルフ族に頼め」
王は華麗にスルーした。
投げられた球はシャリエルへと変化球で突き刺さったが、シャリエルの表情は無表情のまま変わらなかった。
「魔術を使わないのならば、各国の一流デザイナーに好きな服を作ってもらう方が、よほど有意義だと思うが?」
「えぇー!ドワーフとかぁ、エルフに作ってもらった、っていうプレミア感がいいんじゃん!」
「我々が装備しているようなデザインでいいのなら」
「…えー…それはちょっと…ローブは可愛いけどぉ…」
「では他を当たれ」
シャリエルにも同じように返され、ご友人はむくれた。
「酷い!デザインの希望くらい、聞いてくれてもいいじゃん!」
「各国の仕立屋に頼めば、好きなだけ要望を聞いてくれるだろう。エルフ族の仕立ては高いが、払えるのか?」
「え?何で払わないといけないの?シャリエルやジーンは、タダなんだよね?」
他人に向けられた厚意は、自分も享受することが当然、という思考の歪みと厚かましさに、ミカエルは眩暈がすると同時に、納得もした。
そういう人達なのだ、元々。
だから「軽い冗談のつもり」で、人の人生を簡単に壊してしまえる。
図々しい言葉にも、シャリエルの表情は変わらなかった。
「戦わない者に、タダで仕立ててやる義理はない。金が払えるなら検討しよう。払えないなら諦めろ」
至極シンプルな正論を述べられ、ご友人は泣きそうに顔を歪めた。
だが嘘泣きが発動する前に、ドワーフ王が豪快に笑い出した。
「ブワッハハ!エルフの王子よ、気に入ったぞい!それで全部解決じゃい。お見事!」
「ありがとうございます」
「……」
泣き出すタイミングを逸して、ご友人がぽかんと口を開けていたが、誰も気にかけることはしなかった。
聖女とご友人は、生活の保障はされているが、現金は持っていない。
欲しい物があれば、口座から引き落とされるようになっていた。
なので、彼らは自分達がどれくらいの金額を自由に使えるのかは、把握していない。
額自体は、王族に匹敵する予算が組まれており、そうそう使い切ることはない。
現に、今までゲームとしてのこの世界の攻略に精を出していた二人は、予算を使い切ったことはなかった。
払えるか払えないかで言えば、服代くらいは払えるはずだ。
しかしご友人にとって大事なのは、「厚意でタダで服をプレゼントしてくれる」ことであって、「自分で服を購入する」ことではない。
逆ハールートが順調ならば、ここで誰かが「じゃあ自分が買ってプレゼントするよ!」とでも言うのだろう。
でも誰も、何も言わなかった。
採寸を終えて戻って来た三人も、事情を聞いても何も言わなかった。
この場にいる者は全て、金持ちだ。
平民のアベルですらも、真面目にダンジョンに通い、魔族領に通い、魔獣を倒し続けた戦利品の分配金で、すでに立派な金持ちだった。
生活の保証は聖女達と同様にされているので、個人資産は貯まる一方のはずだ。
聖女とご友人は戦闘に参加していないので、分配はない。
この現状が、聖女とご友人に対する、勇者パーティーの好感度なのだった。
好感度が高ければ、反応は別の物になったことだろう。
鎧を仕立てる工房を、せっかくだから見学していけ、との王の厚意に、聖女とご友人は行かないと言って拒否をした。
帰る、と言い出したが、先に帰すわけにもいかない。
応接室で待っているよう言いおいて、ミカエル達は工房を見学させてもらうべく、部屋を出た。
「あ、そうだミカエル。正式に四国間で魔法陣の持ち出し、許可されたよ」
バージルに声をかけられ、ミカエルは喜んだ。
「すごい!本当に許可されたんですね…!」
「うん。魔道具にしてジーンに持たせることにした。魔王の魔石入りで」
「それじゃぁ…」
「魔王を倒したら、その場で聖女達は元の世界に帰す」
「わたくしの責任が、重大過ぎます」
ため息混じりのジーンに、バージルはちらりと視線を向けた。
「発動するだけでしょ」
「いえ、そうではなく、精神的な…いえ、結構です。最善を尽くします」
「?」
不思議そうなバージルにはわからなかったようだが、ミカエルには伝わった。
異世界に強制送還する実行犯の役割を、ジーンが担うのだ。
プレッシャーは、凄まじいものだろう。
だが聖教の秘術を他人に任せることは出来ないので、仕方がないことだった。
狭い通路は、声が反響する。
案内役のドワーフ族の戦士はいたが、他は勇者パーティーのみだった。
だからバージルはうっかり話してしまったし、ミカエル達も止めはしなかった。
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