【完結】前世ハイスペックブサメンの俺、今世ではイージーモードを歩みたい

影清

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271. 魔王討伐準備をする俺

 魔王討伐に向かうのは、四月一日と決まっていた。

 卒業式後、勇者パーティーのメンバーは、神器を借りる為と出立の挨拶の為、各国を回った。
 勇者の剣リディル、聖女の腕輪ドウプニル、騎士の盾スヴェル、剣士の剣ホフド、魔術師の長杖レーヴァテイン、司祭の杖ミョルニル。
 同行するご友人とAランク冒険者三名にも神器を貸与され、ドワーフ王から借り受けた斧とミカエルの剣を合わせて、神器は十二。
 ミカエルの剣以外の全てに術式が刻まれており、魔王討伐を完了するか、所持者が死亡すれば、自動で元あった場所へと戻る仕組みになっている。
 エルフの女王に「祝福を」とバフをかけてもらったが、それは一度だけ、即死級の攻撃を受けた時に身代わりに受けてくれるという、チート級の魔法だった。
 魔王討伐を終えて戻ってきたら、バフは消える仕様らしい。
 
 すごい。
 そんな魔法、聞いたことない。
 いやそれよりも。

 変なフラグになってない?
 大丈夫?
 俺、いきなり使っちゃったりしないよね。
  
 気をつけようと思いつつも感動していると、ご友人がぼそりと呟くのが聞こえた。
「すご。リアルでバフなんて初めてもらった。神器ボーナスやっぱすご!」
 神器ボーナス、なるものがあることを、初めて知ったミカエルだった。
 他のメンバーが怪訝な顔をしたのは一瞬で、誰もご友人の言葉を問い返すことはしない。
 ご友人がデビュタントでやらかした件を、メンバーどころか各国の王も知っていた。
 元々地を這っていた彼らの好感度が、マイナスに振り切った瞬間だった。

 魔王討伐を終えるまでの、我慢。

 誰もがそう思いながら、四月一日に向けて準備をした。
 シャリエルと最高司祭ジーンの完成装備は、エルフの女王から手渡された。
 すでに何度か、エルフ国の第一王子の転移魔術で行き来をして、試着も済ませていたらしい二人は受け取ってすぐ、マジックバッグへと収納した。
「当日に見せる」
 と二人が言うので、ミカエル達は楽しみに待つことにした。
 ドワーフ王から、三人の装備が出来たから取りに来い、と連絡を受けたのは三月下旬であり、受け取った三人はあまりの格好良さに、感動して震えたという。
 それも当日にお披露目する、というので、待つことにした。
 聖女とご友人も、おそらく新しい服を着て来ることだろう。
 ミカエルは、コートはそのまま、中の装備を新調した。
 馬も強くて体力があって、物怖じしない子を用意してもらった。
 準備は順調であり、ミカエル達は当日まで、静かに過ごした。

 

 
 
「デューイが行方不明なんだってよ。俺のハーレム宮殿、どうすんだよ」
 そう不満気に呟いた聖女カグラザカ・ユズルに答えるご友人、スルガザキ・ヒメノは、どうでもよさそうに肩を竦めた。
「え?知らないよそんなの。別にこの国に拘らなくても、魔王討伐終えたら、どこでも好きな所で作ればいいじゃん」
「まーそーなんだけどよ」
「どうせならアタシみたいに、色んな所を転々としてもいーんじゃない?美女連れて観光しながらさ」
「おまえ天才。そーしよっかな」  
 聖女とご友人のハーレムプランは、図らずもミカエルと同じ多拠点生活へと向かっていたが、それが実現するかどうかは、魔王討伐次第であった。
 が、二人は心配などしていない。

 なぜならここは、ゲームの世界だから。

 元の世界に帰るつもりはなかったし、ここで、余生を面白おかしく遊んで暮らすことを望んでいる。
 ヒメノの見立てでは、勇者パーティーは十分魔王討伐レベルに達していた。
 
 神器を持てば、さらに強くなる。

 マップ序盤の魔獣を瞬殺出来るなら、魔王城まで十分行ける。
 途中のトラップだったりギミックだったりは、ヒメノが覚えているので問題はないだろう。
 ヒメノはレベル上げが面倒くさいタイプで、低レベルで何度もボス戦に挑んでは、途中で全滅してセーブデータをやり直す、ということを何回もやっていた。
 攻略サイトを見ても、「レベル○○以上推奨」としか書かれておらず、表記ギリギリで挑んでは敗退し、何度も投げ出しそうになっていた。
 システム的には易しい難易度なのだが、ゲームに不慣れなヒメノに、戦闘は難しかった。
 後半になると神器の強さに着目し、神器持ちを増やせば劇的に楽になる、ということに気づいたのだ。
 それは全て攻略サイトに記載されていたものの、細部までヒメノは読まないので、知らなかった。
 逆ハールートのキャラ攻略だけは、しっかりと読みながらプレイした。

 神器持ちを増やしたら、ぬるゲーになったのだ。

「つーか、アイツら俺らを日本に帰そうとしてやがるけど、ホントに大丈夫なんか?」
 聖女ユズルは一人掛けソファに座り、足を組んだ。
 出立までは学園の寮にいて欲しい、とのことだったので、聖女とご友人、勇者の三人は、卒業してもまだ寮に住んでいる。
 ヒメノはベッドに腰掛けたまま、「ああ」と頷いた。
「ダイジョーブ!神器ボーナスがあるから!」
「ナニソレ」
「神器持ちが増えれば増える程、ボーナスがつくの!エルフの女王のバフもそう!」
「ああ、なんか身体が光ってたアレか。…てか、あの女王胸でかかったよな。ハーレム要員にできっかな」
「確か何千歳とからしいけど、いいの?」
「ババァってレベルじゃねぇな。けどまー、外見が良ければそれで良し!」
「ふーん。好きにすればぁ?」
「帰って来たら誘ってみっか。…じゃー、心配しなくていいんだよな?」
「いーよ。神器全種持ちはさすがに初めてだけど、すでにボーナスは開放されてるはずだから!」
「りょーかいー」
 安心したのか、ユズルは本を読み始めた。
 官能小説なので興奮してすぐに読み終わってしまうかと思いきや、ユズルはすぐに読書に飽きてしまう為、読了数はそれほどでもなかった。
 だが、読書をするチャライケメンはギャップでモテることを知ったユズルは、本を読むようになった。
 本を開くのは癖になっているのだが、内容が頭に入ってくるかはまた、別問題である。
 読書を始めたユズルから視線を外し、ヒメノは今後についてを考えていた。

 ミカエル達は、ヒメノを裏切ろうとしている。
 許せないことだった。
 裏切りなど、ゲームの中には存在しない。
 好感度は、一度上がれば下がることなく維持されるものだったし(ミカエル以外)、マックスになってしまえばもう、下がることはないものだった。
 リアルだから、上手く好感度が上がりきらなかったのかもしれない。
 
 それにしたって。

 ヒメノは傷ついていた。
 
 ずっとずっと、おまえ達に媚び媚びで可愛く接してやったのに。

 でも、大丈夫。
 切り札を使うから!
 欲しいと思った男は、全員手に入れる。
 ホントはミカエル達一軍ハーレムと、あとは帝国の皇妃になれれば満足するつもりだった。

 でも、ミカエル達が裏切るというのなら。
 アタシも好きにするから、いいよね。 
 
 デビュタントでのイベントは、元々はミカエルとアベルを両脇に従え、聖女に嫉妬して嫌がらせをしてくる令嬢達や、横恋慕してストーカーと化した令息を断罪する場面だった。
 好感度が二人ともマックスなら、卒業式前に二人一緒に聖女の元にやって来て、ドレスやアクセサリーを贈り、デビュタントは共に過ごそう、と声をかけてくれるはずだった。

 なかった。

 令嬢や令息達の証拠集めイベントもなかったし、そもそも嫌がらせもストーカーもなかった。
 やっぱり、好感度が足りなかったのだ。
 記憶にある限りの正解の選択肢の台詞を選んだのに、なぜ。
 ヒメノは未だに納得できていなかったが、もう卒業式も終わってしまった。
 ゲームにおいては、魔王討伐はご褒美のような存在だった。
 道中ひたすら皆に愛され、エロシーンが満載の、おまけ要素である。
 広大なマップを進んで敵を倒し、夜になったら相手は日替わりで、時には皆一緒で…!という展開もあった。
 それが好感度マックスの逆ハールートの魔王討伐編であり、道中のトラブルも全て、各キャラとのイチャラブ要素でしかなかった。
 
 きっとそれも、ないんだろうな。

 どこで失敗したのか見当もつかず、ただひたすらに悔しくて許せない。
 神器ボーナスは、しっかり使わせてもらう。
 
 一軍の奴らだけでなく、攻略キャラ全員、足下に跪かせてやるから、覚えてろ。

「ふふ…、あはは…っ」
「え、キモ。突然笑うの、やめてくれん?」
「あ、ゆずるんいたの、忘れてた」
「忘れてたじゃねーわ。ここ俺の部屋だっつーの」
「そうだった。今日はスヴェンと過ごす約束だから、帰るね」
「おー。じゃーな」
 ひらひらと適当に振られる手を気にすることなく、ヒメノは機嫌良く聖女の部屋を出たのだった。
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