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90-100. 幕間――それぞれの王子たち
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カノラド連邦第四王子、ルシュディーの元へ手紙が届いたのは、まだまだ昼は夏の日差しが強いものの、朝晩は過ごしやすい風が吹き、まもなくの秋の到来を心待ちにさせる九月末の事だった。
ソウェイサズ王国第一王子ミカエルから届いたそれは、留学を知らせる内容であり、落ち着いたらまた連絡をする、と書かれていた。
「…おいおい、マジかよ…」
大陸を異にする為、手紙が届くまでには時間がかかる。
ルシュディーが前世生きていた世界とは違って、この世界には飛行機なんてものは存在しない。
貨物の運搬は船であり、王族の書簡は最優先で運ばれる物ではあるけれども、届くまでにタイムラグは発生する。
今すぐ返信した所で、ミカエルはもう自国にはおらず、読んでもらうことも叶わないだろう。
『強制力怖い』
そんな風に書いてきたということは、ある程度ラノベやらなんやらの知識はあるということで、ストーリーの本筋に戻されそうだと、危機感を覚えている、ということだった。
以前会った時にルシュディーが話して聞かせた、ここがBLゲーの世界であること、そして、第一王子ミカエルがゲーム開始時までに辿る運命についてを、覚えていたのだろう。
「この五年、平和だったじゃねえかよ…」
定期的に手紙のやりとりはしていたし、あちらは第二王子と二人で頑張って生きていて、十歳までは問題なく王宮で生活をしていたというのに。
第二王子アルヴィスとは、手紙にも毎回大切な家族として登場するくらい、仲良くなったようなのに。
第一王子の人生、変わったなーって、安心してたのに。
なんだよそれ。
マジかよ。
結局ヤリチンビッチになっちゃうの?
「…わぁ、楽しみだけど可哀想…いや…やっぱダメだろ…」
他国を転々とヤられ生活なんて、しんどすぎるだろ。
ゲームだから、可哀想なキャラ設定でも気にせずにいられたのだ。
リアルのミカエルに会って、話をして、あいつはイイヤツだと知ってしまった。
友達になってしまった。
ダチがどん底人生とか、やりきれねぇって…。
前世、高校生で死んだ自分の人生を振り返るたびに思う。
やっぱ、幸せがいいよ。
苦しいのも辛いのも、嫌だよ。
ゲームだから、クソエロヤリチンビッチでも萌えられたのであって、リアルはダメだ。
それが不幸な生い立ちから来るモノだって知っているから、なおさらダメだ。
俺、現実とゲームの区別はちゃんとつくタイプなんで。
「むしろ面白がれるキャラでありたかったー!はーぁもー最悪…。ダメじゃん。マジでどうすんだこれ…」
留学先がどこかは書かれていない。
カノラドならば隠す必要もないわけで、書いていないと言うことは他国である、ということだった。
同盟国である他三国ならば、おそらくゲーム通りにはならないだろう。
王や王太子達と面識があり、何かあれば助けを求めることが出来るからだ。
「強制力怖い」なんて、書くわけがない。
「…マジかぁ…」
同盟国以外の、どこか。
もう出発しているだろう。
止めることは出来ないし、助けてやろうにもどこの国かがわからなければ、どうしようもない。
「俺ってさぁ、実はイイヤツなんだよなぁこれが。…あーぁああもおぉぉぉぉしゃぁねぇなぁ!一肌脱いでやっかぁ」
週に一度は必ず、王宮にいる王族で集まって晩餐をする。
その日の話題は、やはりと言うべきかミカエルの留学に関してだった。
王も王太子も、ミカエルからの手紙を受け取ったようである。
正妃や側妃達も面識はある。
口を挟むことなく、王と王太子の会話を聞いていた。
「留学だなんて、突然ですよね」
「うちに打診してくれれば、喜んで受け入れたのに」
不満そうな顔をする王に、王太子も頷いた。
「同感です。他の同盟国でしょうか」
「さて、どうかな。各国の王と魔封書でやりとりはしているが、そんな話は出たことがない」
「ああ…決まったなら、隠す理由もないですよね」
「喜々として言ってくるだろうさ。…さて、留学先から手紙は来るかな」
「手紙が来れば、どこに留学したのかは明らかになりますね。…来なければ…いや、なんでもありません。楽しみに待ちましょう」
ただの留学であるならば、手紙は届くはずである。
ソウェイサズ王国の王宮内では、ミカエル王子を取り巻く環境が良くない。
宰相はミカエル王子の後見人のような立場であって、留学を推進したのも彼だった。
一旦国外へ逃がしたのだろう、と、おおよその事情は把握している。
が、極秘裏に進められており、留学先がどこかまでは掴めなかった。
ソウェイサズ王国の宰相は、堅物で知られる。
今あの国を支えているのは、宰相の手腕と言って良かった。
下手な国には送るまい。
王と王太子は、この時点ではあまり心配はしていなかった。
あの国の宰相は、まともだからだ。
だがそれまで黙して食事をしていたルシュディーが、ナイフとフォークを置いて顔を上げた。
「なぁ親父」
「どうした?」
「…あのさぁ、ミカエルがどこに留学したか、調べてくんねぇ?」
「ルディ?心配しなくとも、留学先で落ち着いたら、手紙をくれると思うぞ?」
先に答えたのは王太子で、王はわずかに眉を顰めただけだった。
「あー…うん、それはわかってんだけどさぁ…。…来ないかもしんない、って、思って」
「ルシュディー。ミカエルからの手紙に、何か書いてあったのか?」
王の質問に、ルシュディーは困ったように眉を下げた。
「あー…なんていうか…助けが必要な状況になるかもしんないかも、…なんて…」
要領を得ない返答だったが、王と王太子は沈黙した。
「ちょっとルディ兄様。ミカエル王子、なんて書いてきたの?教えなさいよ」
第六王女アーヤも口を挟み、ルシュディーはもごもごと口ごもった。
「…いやぁ…変わったことは特に何も…」
「はっきりしないわね。兄様のくせに」
「…アーヤへの手紙には、なんと書いてあったんだ?」
王太子に問われ、アーヤは頬を赤く染めた。
「な、…ムルシド兄様、乙女に内容を聞くなんて、失礼だわ…!…ええでも、特別に教えてあげます。留学して落ち着いたら手紙を書くから、待っててねって。元気でねって、労ってくれたの!」
「そうか、それは良かったな」
「ええ、…でもルディ兄様には、他のことも書いていたかのような口振りね?」
「…俺にも大したことは書いてきてねぇよ!ただ、」
「ただ?」
「…あいつ、面倒なことに巻き込まれる天才だからよ…」
「……」
「……」
「……」
誰も否定しなかった。
誘拐されたり、瀕死の重傷を負ったり、自国では魔力なしだのと蔑まれ、命まで狙われている。
自国での状況について知っているのは王と王太子のみだったが、それでも十分彼は酷い目に遭っていた。
「大々的にやってくれってんじゃなくてさ。なんとなくあいつ、絶対厄介な事に遭遇しそうな気がしてさ。マジでヤバイ状況になってたら、助けてやれたらなー、って…」
「…なるほど、わかった」
王は一つ頷き、蒸留酒を傾けた。
「五年後の嫁のことだ、気には留めておこう」
「…嫁にはならねぇと思うけど…?」
「五年後のことは、誰にもわからんだろう?」
「いやわかるわ」
軽快なルシュディーのツッコミに口角を上げて笑んでみせて、王は王太子へと視線を向けた。
小さく頷いた王太子もまた、グラスを持ち上げ傾けた。
「ルディがミカエルと結婚してもいいんだぞ?」
「やめろ俺は可愛い女の子と結婚するの!ミカエルはダチなの!」
「そうか。じゃぁしょうがないな」
「ダチが地獄見るとか、嫌なんだよ。どーせならハッピーエンド見たいじゃん」
「……」
無言で視線を交わした王と王太子だったが、王はおもむろに大きく頷いた。
「俺の嫁になれば、ハッピーエンドになるな」
「自信凄すぎない?後宮の皆に向かってそれ、言える?」
「…おほほ。ルディ。後宮に興味があるの?」
正妃に笑いながら問われて、ルシュディーは慌てて首を振った。
「いや、ないです」
「あら、そう?」
「ミカエル後宮エンドはちょっと…ありえねぇっつーか…」
「五年後が楽しみだな」
「親父のメンタルすげぇなマジで」
「何を今更」
ドヤ顔の王に呆れた視線を向けて、ルシュディーはため息をついた。
フツーの留学ならいいんだ、別に。
ちゃんと勉強して、帰って来るならさ。
…ミカエルが、行方不明になった。
ルシュディーがそれを聞かされたのは、ソウェイサズ王国での親睦会を終えて戻って来た王からだった。
「ああぁああ…マジかよぉぉおおお……!ゲームより最悪じゃねぇかぁぁあああ…!!」
いや、でも、帰って来る。
絶対。
ゲームなら、学園入学時には帰国するんだから。
絶対、大丈夫。
帰って来る。
「あああぁもおおおおクッソ。クソゲー!ちゃんと攻略チャート作ってやる。作ってやるから、ちゃんと帰って来いよミカエル…!!」
心配されているミカエル本人が、帝国で至って平和に生活していることをルシュディーが知るのは、随分と後のことだった。
ソウェイサズ王国第二王子の宮では、朝から居室のソファに寝転んで時間を潰しつつ、アルヴィスが暇を持て余していた。
何も、やる気がない。
ミカエルがいた頃は、彼のやりたいことに合わせて生活をしていた。
冒険者も。
読書も。
乗馬も剣術の練習も。
アルヴィスの中には、ミカエルしかいなかった。
誇張ではなく、ミカエルに主体を置いて生きていると言っても過言ではなかったので、主たる存在がいなくなってしまうと、途端に起きていることすらが億劫になった。
だからといって眠って一日を過ごしても、そのうちそれ自体に飽いてくるし、眠れなくなってくる。
貧弱な人間の身体は、どうしようもない。
仕方なくベッドから身体を起こし、食事をして、ソファに転がった。
何も、やる気がない。
自身が直接ミカエルの為に出来ることは、何もない。
彼が戻って来る日まで、時間を潰してここで待っている事しか出来なかった。
彼の隣にいられればそれで良かったのに、宰相は余計なことをしてくれた。
人間の子どもでしかない今のアルヴィスには、制約が多すぎた。
ミカエルが望めば何でもしてやるつもりだったが、彼は多くを望まなかった。
待ってて欲しいと言われたので、待っている。
忘れないでと言われたが、忘れるはずがなかった。
冒険者は、ミカエルが冒険者をやりたいと言っているのに、やめるわけがない。
報告は、受けていた。
ミカエルは冒険者として頑張るようだ。
ならば自分も当然続けるし、出来ることはするつもりだった。
「…あ」
アルヴィスは一言呟き、身体を起こした。
ミカエルが離れてしまった虚無感が強すぎて、思考も虚無に陥っていたが、思い出した。
「ラダーニエ」
「御前に」
間髪入れずに返答があり、視線を向ければソファの傍らに跪く、藍色の髪の男がいた。
「他国のダンジョンへ」
「条件はございますか?」
「この国の連中がいない所。Aまで…いや、Bまで上げたい」
「御意」
余計な詮索をすることなく、ラダーニエはその姿勢のまま、恭しく手を差し出した。
アルヴィスが立ち上がって手を乗せると、二人の姿はかき消えた。
ミカエルが冒険者活動を再開するなら、ランクは上げておかねばならない。
戻って来た時、共にダンジョンに行けるように。
おそらく真面目に頑張るだろうから、Bまで上げておけば、Aランクの階層にも入ることが出来るし、彼に合わせて動くことが可能だった。
ダンジョン数が世界一多いウルテイワズ王国へと転移して、Bランク、八十階までのダンジョンを踏破するべく、アルヴィスは一人で受付を済ませて中へと入った。
ラダーニエはダンジョンを出たら、帰りの転移要員として呼ぶことにして帰した。
悲しそうな顔をしていたような気がしたが、アルヴィスは興味がないので気にしなかった。
ウルテイワズ王国はAランク相当のダンジョンの数が多い為、人気はそちらに集中しており、八十階までのダンジョンはそれほど混んではいない。
午前中に入って二十一階から始め、ノンストップで駆け抜け六十階を踏破したのは、昼過ぎだった。
途中冒険者達がボス戦で手こずっていて入れず、待機状態が発生した為多少時間はかかったものの、問題なくクリアしてダンジョンの外に出たアルヴィスは、深くため息をついた。
「やることが終わってしまった」
あと四年も、耐えられるのか。
だからと言って、ミカエルについて行くわけにもいかなかった。
目立つことは望んでいない。
自分は王宮で、大人しくしていなければならないのだ。
絶望に近い暗澹たる気分でラダーニエを呼び、自宮へと戻ったが、ラダーニエはすぐには帰らず、足下に跪いたまま、何かを言いたげにしていた。
「…何だ」
仕方なく問えば、ラダーニエはそっと顔を上げた。
「僭越ながら、ぜひお読み頂きたい書物がございます」
「…書物?」
「はい」
「置いて行け」
「ありがとうございます」
嬉しそうに笑いながらラダーニエは立ち上がり、ローテーブルの上に書物を山積みし始めた。
「…多いな」
「恋愛小説でございます」
「は?」
「恋愛小説でございます」
「…意図を聞いたんだが?」
「我が君と、ミカエル様のお幸せを願いまして」
「……」
黙した主ににこやかに笑みを向けて、ラダーニエは恭しく頭を下げた。
「人間の心の機微というものは、それは複雑怪奇に出来ております。ミカエル様は素晴らしいお人柄ではございますが、恋愛とは思い通りにはいかぬもの。この先、ミカエル様の御心がわからない、という日が、来るやもしれません」
「……」
「人族の恋愛とはどういうものか、知識としてお持ち頂いておいて、損はないかと」
「……」
ラダーニエは、知っている。
主は他者だけでなく、自身にすらも、興味がない。
恋愛も、したことがない。
断言できる。
主は今まで誰も、愛したことがない。
興味を持ったこともない。
初めてなのだ。
主が興味を持ち、心惹かれた御方は、ミカエル様だけなのだ。
主がフられる、などということはラダーニエは露程も思っていなかったが、ミカエル様は誰よりも美しい容姿を持っていた。
主と並ぶ程に。
ということはつまり、必然的に想いを寄せる者が多い、ということだった。
魔族だけでなく、人族もどんな種族も、「美しいもの」は大好きなのだ。
ミカエル様が戻られた時、主がしっかりと御心を掴むことが重要だった。
遠回りは、しなくて良い。
「ミカエル様がお戻りになられるまで、時間がございます。古今東西の恋愛物語をお持ち致します」
「それは…必要か?」
困惑の混じる主の視線を受け、ラダーニエは大真面目に頷いた。
「必要でございます。ミカエル様には我が君のことを、『家族』としてではなく、『愛する相手』として認識して頂かねば、いらぬ横槍が多く入ることは容易に想像出来ます」
「……」
「ミカエル様が、他人に惹かれる、という事態は、避けねばなりません」
「……」
主が不快げに眉を顰めたので、ラダーニエはダメ押しをした。
「物語の相手が、ミカエル様ならばどうされるだろうか、という視点で、お読みになるのもよろしいかもしれません」
ラダーニエの力説に、アルヴィスは頷いた。
「…いいだろう。読み終わったら呼ぶ」
「ありがとうございます。お待ちしております」
成し遂げた顔をしたラダーニエが一礼し、姿を消してすぐ、アルヴィスはテーブルの上から一冊を取り上げた。
『王子と騎士の物語』と書かれていた。
ブン投げた。
おい、ミカエルに置き換えたら相手は誰だ。
護衛騎士の誰かか?
ふざけるな。
もう一冊を取り上げた。
『竜殺しシグルドの冒険~愛した相手は竜でした~』と書かれていた。
アルヴィスは微妙な表情をしつつ、テーブルに戻した。
また別の一冊を取っては戻しを繰り返し、しばらくしてため息をついた。
「ミカエルはこんなんじゃない」
そりゃそうだ。
ミカエルなら…などという視点で読もうとするから、読む気が失せるのだ。
これは一般教養の範囲である。
ミカエルなら…などという置き換えをするのなら、相手役は自分でなければならない。
立場も考え方も知能のレベルも違うのだから、それは「恋愛」なるものを理解出来ていないアルヴィスにとっては、高度な技術が要求されるものだった。
まずは、一般論として、受け入れるべきなのだ。
そもそも、ミカエルに好きになってもらう方法を知ることが、目的である。
ようやく投げ出すことをやめ、アルヴィスは『竜殺しシグルドの冒険~愛した相手は竜でした~』を再び手に取り、ページをめくった。
『王子と騎士の物語』は、なんとなく最後の方に読もうと思った。
立場が近すぎるので。
十冊程読み終わった所で、ニーデリアを呼んだ。
「ミカエルに従魔をつけようと思う。コレを、ミカエルに」
黒い子犬の首根っこを掴んでニーデリアへと差し出すと、跪いたまま恭しく受け取った。
「かしこまりました。私が常にミカエル様のおそばにいられれば良いのですが、申し訳ございません」
「良い。役割を全うせよ」
「御意」
恋愛小説を読み始めてすぐ、アルヴィスは危機感を覚えた。
恋愛には、試練がつきもの。
は?
そんなもの、必要ない。
自分の目の届かない所で、ミカエルに言い寄る輩など、排除して然るべきである。
…が、あの皇帝はミカエルの盾であるので、殺すことは出来ない。
しかしながら、圧倒的に邪魔であることは確かだった。
従魔に護衛をさせつつ、万が一皇帝が暴走しそうであれば止めさせる。
利点は多かった。
十冊も読めば、展開は読めてくる。
最初は理解できなかった「ミカエルなら…」という視点も、わかるようになってきた。
なるほど、全て潰せばいい。
自分ならこうする、と考え始めれば、とても読みやすくなった。
ドキドキやキュンキュンといった感情より先に、ストーリー展開についての考察を始めるアルヴィスが、人の心の機微を理解できる日は、まだ遠そうである。
ソウェイサズ王国第一王子ミカエルから届いたそれは、留学を知らせる内容であり、落ち着いたらまた連絡をする、と書かれていた。
「…おいおい、マジかよ…」
大陸を異にする為、手紙が届くまでには時間がかかる。
ルシュディーが前世生きていた世界とは違って、この世界には飛行機なんてものは存在しない。
貨物の運搬は船であり、王族の書簡は最優先で運ばれる物ではあるけれども、届くまでにタイムラグは発生する。
今すぐ返信した所で、ミカエルはもう自国にはおらず、読んでもらうことも叶わないだろう。
『強制力怖い』
そんな風に書いてきたということは、ある程度ラノベやらなんやらの知識はあるということで、ストーリーの本筋に戻されそうだと、危機感を覚えている、ということだった。
以前会った時にルシュディーが話して聞かせた、ここがBLゲーの世界であること、そして、第一王子ミカエルがゲーム開始時までに辿る運命についてを、覚えていたのだろう。
「この五年、平和だったじゃねえかよ…」
定期的に手紙のやりとりはしていたし、あちらは第二王子と二人で頑張って生きていて、十歳までは問題なく王宮で生活をしていたというのに。
第二王子アルヴィスとは、手紙にも毎回大切な家族として登場するくらい、仲良くなったようなのに。
第一王子の人生、変わったなーって、安心してたのに。
なんだよそれ。
マジかよ。
結局ヤリチンビッチになっちゃうの?
「…わぁ、楽しみだけど可哀想…いや…やっぱダメだろ…」
他国を転々とヤられ生活なんて、しんどすぎるだろ。
ゲームだから、可哀想なキャラ設定でも気にせずにいられたのだ。
リアルのミカエルに会って、話をして、あいつはイイヤツだと知ってしまった。
友達になってしまった。
ダチがどん底人生とか、やりきれねぇって…。
前世、高校生で死んだ自分の人生を振り返るたびに思う。
やっぱ、幸せがいいよ。
苦しいのも辛いのも、嫌だよ。
ゲームだから、クソエロヤリチンビッチでも萌えられたのであって、リアルはダメだ。
それが不幸な生い立ちから来るモノだって知っているから、なおさらダメだ。
俺、現実とゲームの区別はちゃんとつくタイプなんで。
「むしろ面白がれるキャラでありたかったー!はーぁもー最悪…。ダメじゃん。マジでどうすんだこれ…」
留学先がどこかは書かれていない。
カノラドならば隠す必要もないわけで、書いていないと言うことは他国である、ということだった。
同盟国である他三国ならば、おそらくゲーム通りにはならないだろう。
王や王太子達と面識があり、何かあれば助けを求めることが出来るからだ。
「強制力怖い」なんて、書くわけがない。
「…マジかぁ…」
同盟国以外の、どこか。
もう出発しているだろう。
止めることは出来ないし、助けてやろうにもどこの国かがわからなければ、どうしようもない。
「俺ってさぁ、実はイイヤツなんだよなぁこれが。…あーぁああもおぉぉぉぉしゃぁねぇなぁ!一肌脱いでやっかぁ」
週に一度は必ず、王宮にいる王族で集まって晩餐をする。
その日の話題は、やはりと言うべきかミカエルの留学に関してだった。
王も王太子も、ミカエルからの手紙を受け取ったようである。
正妃や側妃達も面識はある。
口を挟むことなく、王と王太子の会話を聞いていた。
「留学だなんて、突然ですよね」
「うちに打診してくれれば、喜んで受け入れたのに」
不満そうな顔をする王に、王太子も頷いた。
「同感です。他の同盟国でしょうか」
「さて、どうかな。各国の王と魔封書でやりとりはしているが、そんな話は出たことがない」
「ああ…決まったなら、隠す理由もないですよね」
「喜々として言ってくるだろうさ。…さて、留学先から手紙は来るかな」
「手紙が来れば、どこに留学したのかは明らかになりますね。…来なければ…いや、なんでもありません。楽しみに待ちましょう」
ただの留学であるならば、手紙は届くはずである。
ソウェイサズ王国の王宮内では、ミカエル王子を取り巻く環境が良くない。
宰相はミカエル王子の後見人のような立場であって、留学を推進したのも彼だった。
一旦国外へ逃がしたのだろう、と、おおよその事情は把握している。
が、極秘裏に進められており、留学先がどこかまでは掴めなかった。
ソウェイサズ王国の宰相は、堅物で知られる。
今あの国を支えているのは、宰相の手腕と言って良かった。
下手な国には送るまい。
王と王太子は、この時点ではあまり心配はしていなかった。
あの国の宰相は、まともだからだ。
だがそれまで黙して食事をしていたルシュディーが、ナイフとフォークを置いて顔を上げた。
「なぁ親父」
「どうした?」
「…あのさぁ、ミカエルがどこに留学したか、調べてくんねぇ?」
「ルディ?心配しなくとも、留学先で落ち着いたら、手紙をくれると思うぞ?」
先に答えたのは王太子で、王はわずかに眉を顰めただけだった。
「あー…うん、それはわかってんだけどさぁ…。…来ないかもしんない、って、思って」
「ルシュディー。ミカエルからの手紙に、何か書いてあったのか?」
王の質問に、ルシュディーは困ったように眉を下げた。
「あー…なんていうか…助けが必要な状況になるかもしんないかも、…なんて…」
要領を得ない返答だったが、王と王太子は沈黙した。
「ちょっとルディ兄様。ミカエル王子、なんて書いてきたの?教えなさいよ」
第六王女アーヤも口を挟み、ルシュディーはもごもごと口ごもった。
「…いやぁ…変わったことは特に何も…」
「はっきりしないわね。兄様のくせに」
「…アーヤへの手紙には、なんと書いてあったんだ?」
王太子に問われ、アーヤは頬を赤く染めた。
「な、…ムルシド兄様、乙女に内容を聞くなんて、失礼だわ…!…ええでも、特別に教えてあげます。留学して落ち着いたら手紙を書くから、待っててねって。元気でねって、労ってくれたの!」
「そうか、それは良かったな」
「ええ、…でもルディ兄様には、他のことも書いていたかのような口振りね?」
「…俺にも大したことは書いてきてねぇよ!ただ、」
「ただ?」
「…あいつ、面倒なことに巻き込まれる天才だからよ…」
「……」
「……」
「……」
誰も否定しなかった。
誘拐されたり、瀕死の重傷を負ったり、自国では魔力なしだのと蔑まれ、命まで狙われている。
自国での状況について知っているのは王と王太子のみだったが、それでも十分彼は酷い目に遭っていた。
「大々的にやってくれってんじゃなくてさ。なんとなくあいつ、絶対厄介な事に遭遇しそうな気がしてさ。マジでヤバイ状況になってたら、助けてやれたらなー、って…」
「…なるほど、わかった」
王は一つ頷き、蒸留酒を傾けた。
「五年後の嫁のことだ、気には留めておこう」
「…嫁にはならねぇと思うけど…?」
「五年後のことは、誰にもわからんだろう?」
「いやわかるわ」
軽快なルシュディーのツッコミに口角を上げて笑んでみせて、王は王太子へと視線を向けた。
小さく頷いた王太子もまた、グラスを持ち上げ傾けた。
「ルディがミカエルと結婚してもいいんだぞ?」
「やめろ俺は可愛い女の子と結婚するの!ミカエルはダチなの!」
「そうか。じゃぁしょうがないな」
「ダチが地獄見るとか、嫌なんだよ。どーせならハッピーエンド見たいじゃん」
「……」
無言で視線を交わした王と王太子だったが、王はおもむろに大きく頷いた。
「俺の嫁になれば、ハッピーエンドになるな」
「自信凄すぎない?後宮の皆に向かってそれ、言える?」
「…おほほ。ルディ。後宮に興味があるの?」
正妃に笑いながら問われて、ルシュディーは慌てて首を振った。
「いや、ないです」
「あら、そう?」
「ミカエル後宮エンドはちょっと…ありえねぇっつーか…」
「五年後が楽しみだな」
「親父のメンタルすげぇなマジで」
「何を今更」
ドヤ顔の王に呆れた視線を向けて、ルシュディーはため息をついた。
フツーの留学ならいいんだ、別に。
ちゃんと勉強して、帰って来るならさ。
…ミカエルが、行方不明になった。
ルシュディーがそれを聞かされたのは、ソウェイサズ王国での親睦会を終えて戻って来た王からだった。
「ああぁああ…マジかよぉぉおおお……!ゲームより最悪じゃねぇかぁぁあああ…!!」
いや、でも、帰って来る。
絶対。
ゲームなら、学園入学時には帰国するんだから。
絶対、大丈夫。
帰って来る。
「あああぁもおおおおクッソ。クソゲー!ちゃんと攻略チャート作ってやる。作ってやるから、ちゃんと帰って来いよミカエル…!!」
心配されているミカエル本人が、帝国で至って平和に生活していることをルシュディーが知るのは、随分と後のことだった。
ソウェイサズ王国第二王子の宮では、朝から居室のソファに寝転んで時間を潰しつつ、アルヴィスが暇を持て余していた。
何も、やる気がない。
ミカエルがいた頃は、彼のやりたいことに合わせて生活をしていた。
冒険者も。
読書も。
乗馬も剣術の練習も。
アルヴィスの中には、ミカエルしかいなかった。
誇張ではなく、ミカエルに主体を置いて生きていると言っても過言ではなかったので、主たる存在がいなくなってしまうと、途端に起きていることすらが億劫になった。
だからといって眠って一日を過ごしても、そのうちそれ自体に飽いてくるし、眠れなくなってくる。
貧弱な人間の身体は、どうしようもない。
仕方なくベッドから身体を起こし、食事をして、ソファに転がった。
何も、やる気がない。
自身が直接ミカエルの為に出来ることは、何もない。
彼が戻って来る日まで、時間を潰してここで待っている事しか出来なかった。
彼の隣にいられればそれで良かったのに、宰相は余計なことをしてくれた。
人間の子どもでしかない今のアルヴィスには、制約が多すぎた。
ミカエルが望めば何でもしてやるつもりだったが、彼は多くを望まなかった。
待ってて欲しいと言われたので、待っている。
忘れないでと言われたが、忘れるはずがなかった。
冒険者は、ミカエルが冒険者をやりたいと言っているのに、やめるわけがない。
報告は、受けていた。
ミカエルは冒険者として頑張るようだ。
ならば自分も当然続けるし、出来ることはするつもりだった。
「…あ」
アルヴィスは一言呟き、身体を起こした。
ミカエルが離れてしまった虚無感が強すぎて、思考も虚無に陥っていたが、思い出した。
「ラダーニエ」
「御前に」
間髪入れずに返答があり、視線を向ければソファの傍らに跪く、藍色の髪の男がいた。
「他国のダンジョンへ」
「条件はございますか?」
「この国の連中がいない所。Aまで…いや、Bまで上げたい」
「御意」
余計な詮索をすることなく、ラダーニエはその姿勢のまま、恭しく手を差し出した。
アルヴィスが立ち上がって手を乗せると、二人の姿はかき消えた。
ミカエルが冒険者活動を再開するなら、ランクは上げておかねばならない。
戻って来た時、共にダンジョンに行けるように。
おそらく真面目に頑張るだろうから、Bまで上げておけば、Aランクの階層にも入ることが出来るし、彼に合わせて動くことが可能だった。
ダンジョン数が世界一多いウルテイワズ王国へと転移して、Bランク、八十階までのダンジョンを踏破するべく、アルヴィスは一人で受付を済ませて中へと入った。
ラダーニエはダンジョンを出たら、帰りの転移要員として呼ぶことにして帰した。
悲しそうな顔をしていたような気がしたが、アルヴィスは興味がないので気にしなかった。
ウルテイワズ王国はAランク相当のダンジョンの数が多い為、人気はそちらに集中しており、八十階までのダンジョンはそれほど混んではいない。
午前中に入って二十一階から始め、ノンストップで駆け抜け六十階を踏破したのは、昼過ぎだった。
途中冒険者達がボス戦で手こずっていて入れず、待機状態が発生した為多少時間はかかったものの、問題なくクリアしてダンジョンの外に出たアルヴィスは、深くため息をついた。
「やることが終わってしまった」
あと四年も、耐えられるのか。
だからと言って、ミカエルについて行くわけにもいかなかった。
目立つことは望んでいない。
自分は王宮で、大人しくしていなければならないのだ。
絶望に近い暗澹たる気分でラダーニエを呼び、自宮へと戻ったが、ラダーニエはすぐには帰らず、足下に跪いたまま、何かを言いたげにしていた。
「…何だ」
仕方なく問えば、ラダーニエはそっと顔を上げた。
「僭越ながら、ぜひお読み頂きたい書物がございます」
「…書物?」
「はい」
「置いて行け」
「ありがとうございます」
嬉しそうに笑いながらラダーニエは立ち上がり、ローテーブルの上に書物を山積みし始めた。
「…多いな」
「恋愛小説でございます」
「は?」
「恋愛小説でございます」
「…意図を聞いたんだが?」
「我が君と、ミカエル様のお幸せを願いまして」
「……」
黙した主ににこやかに笑みを向けて、ラダーニエは恭しく頭を下げた。
「人間の心の機微というものは、それは複雑怪奇に出来ております。ミカエル様は素晴らしいお人柄ではございますが、恋愛とは思い通りにはいかぬもの。この先、ミカエル様の御心がわからない、という日が、来るやもしれません」
「……」
「人族の恋愛とはどういうものか、知識としてお持ち頂いておいて、損はないかと」
「……」
ラダーニエは、知っている。
主は他者だけでなく、自身にすらも、興味がない。
恋愛も、したことがない。
断言できる。
主は今まで誰も、愛したことがない。
興味を持ったこともない。
初めてなのだ。
主が興味を持ち、心惹かれた御方は、ミカエル様だけなのだ。
主がフられる、などということはラダーニエは露程も思っていなかったが、ミカエル様は誰よりも美しい容姿を持っていた。
主と並ぶ程に。
ということはつまり、必然的に想いを寄せる者が多い、ということだった。
魔族だけでなく、人族もどんな種族も、「美しいもの」は大好きなのだ。
ミカエル様が戻られた時、主がしっかりと御心を掴むことが重要だった。
遠回りは、しなくて良い。
「ミカエル様がお戻りになられるまで、時間がございます。古今東西の恋愛物語をお持ち致します」
「それは…必要か?」
困惑の混じる主の視線を受け、ラダーニエは大真面目に頷いた。
「必要でございます。ミカエル様には我が君のことを、『家族』としてではなく、『愛する相手』として認識して頂かねば、いらぬ横槍が多く入ることは容易に想像出来ます」
「……」
「ミカエル様が、他人に惹かれる、という事態は、避けねばなりません」
「……」
主が不快げに眉を顰めたので、ラダーニエはダメ押しをした。
「物語の相手が、ミカエル様ならばどうされるだろうか、という視点で、お読みになるのもよろしいかもしれません」
ラダーニエの力説に、アルヴィスは頷いた。
「…いいだろう。読み終わったら呼ぶ」
「ありがとうございます。お待ちしております」
成し遂げた顔をしたラダーニエが一礼し、姿を消してすぐ、アルヴィスはテーブルの上から一冊を取り上げた。
『王子と騎士の物語』と書かれていた。
ブン投げた。
おい、ミカエルに置き換えたら相手は誰だ。
護衛騎士の誰かか?
ふざけるな。
もう一冊を取り上げた。
『竜殺しシグルドの冒険~愛した相手は竜でした~』と書かれていた。
アルヴィスは微妙な表情をしつつ、テーブルに戻した。
また別の一冊を取っては戻しを繰り返し、しばらくしてため息をついた。
「ミカエルはこんなんじゃない」
そりゃそうだ。
ミカエルなら…などという視点で読もうとするから、読む気が失せるのだ。
これは一般教養の範囲である。
ミカエルなら…などという置き換えをするのなら、相手役は自分でなければならない。
立場も考え方も知能のレベルも違うのだから、それは「恋愛」なるものを理解出来ていないアルヴィスにとっては、高度な技術が要求されるものだった。
まずは、一般論として、受け入れるべきなのだ。
そもそも、ミカエルに好きになってもらう方法を知ることが、目的である。
ようやく投げ出すことをやめ、アルヴィスは『竜殺しシグルドの冒険~愛した相手は竜でした~』を再び手に取り、ページをめくった。
『王子と騎士の物語』は、なんとなく最後の方に読もうと思った。
立場が近すぎるので。
十冊程読み終わった所で、ニーデリアを呼んだ。
「ミカエルに従魔をつけようと思う。コレを、ミカエルに」
黒い子犬の首根っこを掴んでニーデリアへと差し出すと、跪いたまま恭しく受け取った。
「かしこまりました。私が常にミカエル様のおそばにいられれば良いのですが、申し訳ございません」
「良い。役割を全うせよ」
「御意」
恋愛小説を読み始めてすぐ、アルヴィスは危機感を覚えた。
恋愛には、試練がつきもの。
は?
そんなもの、必要ない。
自分の目の届かない所で、ミカエルに言い寄る輩など、排除して然るべきである。
…が、あの皇帝はミカエルの盾であるので、殺すことは出来ない。
しかしながら、圧倒的に邪魔であることは確かだった。
従魔に護衛をさせつつ、万が一皇帝が暴走しそうであれば止めさせる。
利点は多かった。
十冊も読めば、展開は読めてくる。
最初は理解できなかった「ミカエルなら…」という視点も、わかるようになってきた。
なるほど、全て潰せばいい。
自分ならこうする、と考え始めれば、とても読みやすくなった。
ドキドキやキュンキュンといった感情より先に、ストーリー展開についての考察を始めるアルヴィスが、人の心の機微を理解できる日は、まだ遠そうである。
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