【完結】前世ハイスペックブサメンの俺、今世ではイージーモードを歩みたい

影清

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142. 四国の王族を迎える俺 

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 ミカエルとアルヴィスが周囲の人々に祝われて十六の誕生日をささやかに終えた後、迎えた親睦会当日は、期末試験最終日だった。
 午前で試験を終了し、王宮に戻ったのは昼だったので、ウルテイワズ王国の王族を迎えることは出来なかったが、聖ウィンユルス公国とイングジェラ王国、最後にカノラド連邦の王族を迎えることは出来た。
 王と並んで二人で出迎える、という事自体は嫌で仕方がなかったが、十年ぶりに見る人達の元気そうな顔を見る事が出来たのは、幸いだった。
 午後一番にやって来た聖ウィンユルス公国は、公主夫妻と公子、そして最高司祭と、お付きに見える大司祭達だった。
「ああ、随分久しぶりだねミカエル王子。元気そうで安心した。…それにしても…直視が躊躇われるな…」
 そう言いつつ、公主夫妻は二人揃ってミカエルから視線を外すことなく、見つめていた。
 ミカエルは、笑顔で出迎えた。
「大変ご無沙汰しております両殿下。お変わりなく、安心致しました」
「いや、もう年を取ったよ。君の成長を見ると、なおさら感じるな…。ああ、公子とも十年ぶりだろう?どうだ、逞しくなっただろう。実力で聖騎士団の副団長になったんだよ。もう知っているかな」
「はい」
「久しぶり、ミカエル」
 公主の隣に並んだ公子は、涼しげな目元と泣きぼくろはそのままに、体格は厚みが出、身長も二メートルは超えていそうだった。
 選ばれしイケメン公子バージルは、二十六歳になり大人の男になっていた。
 これはさぞかしモテるだろうと思わせる、男の色気があった。
 まだ独身。
 
 こりゃ攻略対象者になりますわー。

 納得の仕上がりだった。
「お久しぶりです、バージル。今日は聖騎士の姿ではないんですね」
「そっちの仕事じゃないから、さすがにね。あ、見たかった?」
「はい、かなり」
「持ってきてはいるよ。後で見せたげる」
「え、やった!ありがとうございます!」
「うん」
 RPGなどでよく見る、『キラキラ騎士様』を体現した姿が、聖騎士である。
 白銀の鎧、白銀の剣、白銀の盾。
 今の彼には、さぞかし似合うに違いない。
 期待で思わず興奮してしまったが、公子は瞳を細めて優しく微笑んだ。
 
 お、おうじさま~。
 
 聖女は、公子ルートに入っただろうか?
 進展具合を、後で聞いてみなければ。
 
 公主夫妻は微笑ましいものを見る目で見守ってくれており、その後ろで、最高司祭がにこやかに微笑みながら控えていることに、気がついた。
「最高司祭殿も、ご無沙汰しています。ようこそお越し下さいました。王宮には滞在されないのですね?」
 最高司祭と大司祭達は、王都の聖教会を始め、一週間で行ける範囲の教会に滞在する予定だと聞いていた。
 晩餐にも参加せず、ここからは別行動となり、最終日、帰国する際に合流するようだ。
「ご無沙汰しております、ミカエル王子殿下。五年に一度のせっかくの機会ですので、この国の教会に、顔を出す予定なのです」
「それは、信徒の皆は喜ぶことでしょう」
「光栄です。明日は王都の聖教会におりますので、もし殿下のご都合が宜しければぜひ、遊びにいらして下さい」
「こらこら最高司祭。王子にも都合があるのだから」
「はい、猊下」
 公主が即座に窘めたが、最高司祭は適当に返事をし、にこやかに笑んだままミカエルを見つめている。
 何か話があるのかな、と、察した。
「…明日は学園が午前中で終わるので、帰りに寄らせて頂きます」
「ああ、それはありがたいことです。お待ちしております」
「第二王子も一緒で構わないでしょうか」
「もちろんでございます」
「ミカエル王子、最高司祭が申し訳ない。普段はこんな我が儘を言うことはないのだが」
 慌てたように公主がフォローに入っていたが、ミカエルの記憶にある最高司祭殿は、大人しい人ではなかったので、特に違和感は覚えなかった。
「いえ、公主殿下。今まで教会に関わることもありませんでしたし、最高司祭殿とお話出来るのは嬉しいことなので、構いません」
「…ありがとう、ミカエル王子」
 公主に礼を言われることではなかったが、ミカエルは笑顔で頷いた。
 最高司祭殿には、命を救ってもらった恩がある。
 これくらいは、どうということはないのだった。
「じゃ、また後でね」
「はい」
 公子が去り際、軽く手を振って挨拶をしてくれたので同じように返して見送った。
 次にやってくるイングジェラ王国の王族が到着するまで、一階の待機室で王と二人、時間を潰すことが苦痛だった。
 侍従も護衛騎士も控えている中で、羞恥プレイを強いられている気分になり、逃げ出したくて仕方がなかったが無視も出来ず、いらぬ緊張を強いられ、一分すらも長く感じた。
 手を握ろうとするのをかわし、肩を抱いてこようとするのを断り、膝枕を要求されて拒否をした。
 
 アンタにするくらいなら、アルヴィスにします。

 アルヴィスはキスはしてくるが、スキンシップはあまりなかった。
 推定世界一の超絶美形なのに世慣れぬ風で、コミュニケーションが得意でないだろうことは、察している。
 カノラド王並のコミュ力と行動力を持っていれば、ミカエルはとうの昔に、彼に抱かれていたことだろう。
 
 アルヴィスがまともに関わっている人間って、俺だけだもんな。
 しょうがない。
 しょうがないよ。
 
 ミカエル自身も前世から合わせても、スキンシップなんて経験がないので、似た者同士である。
 焦ってどうにかするものでもなし、なるようにしかならないのだ。
 
 だが王よ、アンタに対しては、ない。

 待機室にいる間に精神的に疲労しながら、イングジェラ王国の王族を出迎えた。
「えっミカエル君、美しすぎヤバ…!!」
「やめなさいマシュー。頭悪いヤツだと思われるぞ」
「俺、バカだと思われてる…!?」
「両陛下、マシュー王太子殿下、ご無沙汰しております。ようこそいらっしゃいました。歓迎致します」
 マシュー王太子は、今年三十二歳。
 すでに婚姻し、子は三人いた。
 愛人もいる。
 五国同盟の王達は、ウルテイワズ王国の先王が六十歳で引退するのを見届けてから、「六十歳で引退しよう」と決めたらしい。
 なので三国の王は四十代と五十代だが、まだ現役なのだった。
 
 我が国の王は、一刻も早く引退したいと言っているが、誰も気にしてはいなかった。

「はー…。ミカエル君、美しすぎるよ…?」
 優男風の王太子は、口元に手を当てながらぶるぶると震えている。 
「そうですか?」
「うんうん。やっぱりとんでもなく美しい子は、とんでもなく美しく育つんだねぇ」
「ありがとうございます」
「見た瞬間語彙が死んだよ…びっくりした…」
「私は、おまえの急激な知能の低下にびっくりだが」 
 イングジェラ王のツッコミに、王太子は肩を竦めて鼻で笑った。
「いやぁ、陛下もミカエル君をガン見じゃないですか。俺の目はごまかせませんよ」
「…余計なことを言うな」
 この親子は、仲が良さそうだった。
 王妃は冷めた目で王を見ていたが、ミカエルと目が合うと頬を染めた。
「あら…まぁ…」
「妃殿下、ようこそお越し下さいました。ごゆっくりお過ごし下さい」
 微笑むと、三人揃って頬を染め、互いに顔を見合わせてため息をついた。
「我が国に、これだけの美姫はおりませんわねぇ」
「そうですねぇ」
 王妃と王太子の会話の中、王だけは胸を張りながら、王妃の手を取った。
「私にとって一番の美女は、君だよ」
「あ、そういうのは結構ですわ」
 瞬間で真顔になった王妃は、ドヤ顔をした王の手を払った。
「ぅぐっ」
 辛辣である。
 イングジェラ王にも側妃や愛人は複数いるが、王妃に愛人はいなかったように思う。
 公表されていないだけかもしれないが。
 王族内でなんらかのナニカが、あるのかもしれない。
 他人が口を挟んでいい問題では、なさそうだった。
 王が何らかのダメージを受けている中、王妃は艶やかな微笑で、ミカエルに向き直った。
「同盟国のおばちゃんが、一つだけ、余計なお世話をさせて頂いてよろしいかしら?」
 自虐にしても笑えない発言に、ミカエルの口元がひきつった。
 王妃は間違っても、「おばちゃん」なんて呼んでいい外見はしていない。
 今でも若く見えるが、若い頃にはきっと、相当な美女だったに違いない。
 なんなら我が国の王妃よりも、美しいかもしれない。
「お、おばちゃんだなんてそんな」
「お気になさらないで。王子の年齢からすれば、下手すればおばあちゃんですものね。そこは少しだけ、自分を甘く評価させて頂いたの」
「は、はい…」
 王妃は確か十六で結婚し、王太子を生んだが、子は一人だけだった。
 今年四十八歳だと思われるが、目の前の彼女はとても若々しく、美しい。
「有象無象が寄って来るかと思いますが、ご自分をしっかりと持ってご対応なさってね」
「はい…」
「わたくし、一番情熱的で一番権力を持っていて、一番愛してくれると約束をしてくれた人と結婚したけれど、あの頃は若かったのですわ…」
「…えっと…」
 何を言い出すのだろう、王妃は。

 離婚問題にならない?
 大丈夫?

「セラーナ…そ、それは」
「母上…」
 王と王太子が、明らかに動揺していた。
「わたくし一人だけを愛してくれるという言葉に、騙されましたの。まぁ、自分で選んだ結果ですから、今更後悔などしませんけれど。…あなたも、後悔なさらないよう、十分に吟味なさってね」
「…は、はい…」

 王には側妃と愛人が…。
 王太子にも…。

「おばちゃんのお節介、ごめんなさいね。ミカエル王子は、幼い頃から本当にたくさんの経験を、積んで来られたことと思います。幸せに、なって頂きたくて」
 十年前のこと、留学のことを言われているのだと思えば、ありがたかった。
 他国の正妃に心配してもらえるとは、光栄なことだ。
「ありがとう、ございます。心に刻みます」
「嬉しいわ。こんなに出しゃばったこと、今までありませんのよ?信じられないかもしれませんけど」
「いえ、身に染みます。光栄です、妃殿下」
「ふふ、それではまた。行きますよ、あなた達」
「…はい…」
「はい…」
 まるで尻に敷かれた男達の様相で、王妃を先頭に、王と王太子も転移の間を出て行った。
 王妃自体が、有象無象に言い寄られる中で、選んだ相手が王だったのだろう。
 「君だけを愛する」という言葉を信じて結婚し、…。

 …いや、考えるのはやめよう。

 人様の国の事情に首を突っ込んで、いいことなど一つもないのだ。
 またしばらく待機室で過ごし、最後のカノラド連邦を迎える時間になった。

「愛しのミカエルにまた会えて、嬉しいよ」

 カノラド王が相変わらずで、安堵した。 
 




 ミカエルが出迎えた三国の王族達は、我が国の王には見向きもしなかったことに気付いたのは、晩餐で顔を合わせてからだった。
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