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165. 林間学校で輪姦勘弁な俺3
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時刻は十九時。
各自部屋へと戻り、ミカエルが風呂に入って着替えようと服に手をかけた所で、部屋をノックされた。
出るべきか迷ったものの、諦めることなくずっと扉を叩いており、声も聞こえた。
「殿下、お休みの所申し訳ございません。お話がございます。お出まし頂けないでしょうか」
「……」
迷う内容だった。
話って、何だよ。
哀れっぽく「大事な話がある」と言われて顔を出した瞬間、「童貞を捨てさせて下さい!!」と土下座された去年の俺の話、する?
真面目に話を聞こうと思った、俺の善意を返してくれ、って思ったよね。
扉前で立ち止まっていると、さらに言葉は続いた。
「フランクリン侯爵令嬢様が、こちらにいらっしゃってないでしょうか?」
「…どういうことかな?」
「え、あっで、殿下、ご挨拶を、」
「そういうのは今はいらないから、話を。ここには来てないよ」
「あ、は、はい…!」
彼は、ターナー子爵令息だった。
今年の成績は八位であり、侯爵令嬢と同じチームだった。
彼の話によると、楽しく時間を過ごし、ホテルに入った所までは一緒だった。
同じチームのワーナー伯爵令嬢が、侯爵令嬢と同じ階の部屋だったので、一緒に行こうと声をかけようと振り返ったら、もうそこに姿はなかったのだと言う。
大体皆似た時間に撤収する為、ホテル入口には生徒がごった返していた。
たまたま見失っただけだろうと皆は部屋に戻ったが、伯爵令嬢は気になって、侯爵令嬢の部屋を訪ねたものの、返事はなかった。
三十分後に再び訪ねたがやはり返事はなく、寝ているだけならいいが、もし何かあったらと不安になり、教師に連絡した。
だが、相手にしてくれなかったのだという。
誰かの部屋にいるのでは?と、言われたらしい。
教師自体がソレを認めているのもどうかと思うが、消灯の見回りの時間になっても戻っていないようなら、その時に考える、とも言われたのだそうだ。
消灯時間は二十三時。
侯爵令嬢は、チームの誰にも挨拶もなく姿を消すような人ではない、ということは、ミカエルにもわかる。
去年も一昨年も、侯爵令嬢はきちんと挨拶をしてから、部屋へと戻って行ったのだ。
「侯爵令嬢様の交友関係を存じませんので、生徒会役員の方の部屋かもしれないと、お邪魔させて頂きました」
「なるほど、事情はわかった。それは気になるね」
「は、はい…。風紀委員長は、侯爵令嬢様の婚約者であられる王太子殿下の部屋に。伯爵令嬢様とピエール君が、他の役員の方の部屋へ行ってくれています」
「そうか。…まだ何か起こったわけでもないし、騒ぎ立てるのは良くないからね」
「そ、そうなのです…」
「それで、どこに集まる予定かな」
「え、えと、風紀委員長の部屋に集まって、確認をする事になっています」
「そう。じゃぁ私もお邪魔しよう。アルヴィス副会長も呼ぶ」
「あ、ありがとうございます…!」
何もなければいい。
だが、何かあってからでは遅いのだった。
風紀委員長の部屋の場所を聞いてから、アルヴィスの部屋に行って事情を話す。
彼もちょうど風呂に入ろうとしていた所だったので、間に合って良かった。
合流して風紀委員長の部屋へ行くと、生徒会役員が全員揃っていた。
「あ、会長!」
一年の会計補佐がミカエルに気づくと、口々に侯爵令嬢の安否を尋ねられたが、ミカエルに答えられることはない。
風紀委員長のシェルダン伯爵令息へと視線を向けると、心得たと言わんばかりに頷き、侯爵令嬢がいなくなった経緯を話した。
王太子の部屋に行っても侯爵令嬢は来ておらず、取り巻き令息に冷たくあしらわれたようだ。
不快に眉を顰め、舌打ちしそうな表情に、余程酷い扱いをされたのだろうと同情した。
その中で伯爵令嬢が、書記補佐を見ながら挙手をした。
「あの、一年の彼が、侯爵令嬢様を見たかもしれない、と言っていて」
「え!」
一斉に注目を浴びた書記補佐は、狼狽えて一歩後ろに下がりつつも、記憶を思い出すような仕草をした。
「あ、あの、俺がちょうどホテルに入ろうとしていた時に、女子生徒が一人、ホテルから出て行くのを見ました。この時間に?って思って、声をかけようと思ったんですが、あっという間に姿が見えなくなってしまって。後ろ姿もちらっとだったので、誰かはわからなかったんですけど、会計様だったんじゃないかって」
「その生徒は、ホテルを出てどの方向へ?」
ミカエルが尋ねると、書記補佐は腕を組み、考え込むように俯いた。
「えっと…。たぶん、裏の森の方だったんじゃないかと」
「森…?何をしに?」
「そ、そこまでは…」
侯爵令嬢でなかったとしても、女子生徒が一人で、しかも夜に、森へ行くというのは不審でしかない。
「恋人と逢い引きとか?」
庶務の発言に、沈黙が落ちる。
本当に侯爵令嬢が、待ち合わせをしているなら?
こうやって騒いでいることが、無駄になる。
だが、ミカエルは否定した。
「会計はそんな人ではないと思う。王太子殿下という婚約者がいるのに、軽率なことをするとは考えにくい」
「た、確かにそうですね…申し訳ございません」
「いや、謝罪には及ばない。だが気にはなるな。見てこようか」
「え、殿下が行かれるのですか?」
風紀委員長が驚き、周囲もまた驚いたようにミカエルを見た。
驚かれる意味がわからず、首を傾げる。
「本当に誰かと待ち合わせというなら退散すればいいし、もし迷子や怪我などしていたら、大変だろう」
「そうですね…では、手分けしませんか?女子生徒は、ワーナー伯爵令嬢の部屋で待機を。同じ階なので、ちょくちょく侯爵令嬢様の部屋を確認してくれ。生徒会役員の方と我々で、森とホテル周辺を見て回りましょう」
風紀委員長の提案は妥当だった。
ミカエルは頷き、アルヴィスへと顔を向けた。
「私とアルヴィス副会長は森へ…」
「あ、あの、会長」
ミカエルの言葉を遮ったのは、書記補佐だった。
そちらへと視線を向けると、恥ずかしげに両手を組み合わせながら、もじもじし出す。
「何か?」
「会長とアルヴィス副会長は、剣術の授業でも、トップクラスでお強いとお聞きしました」
「…そうだね」
「その、僕、剣術はさっぱりで…でも!魔術は出来ます!なので、出来れば僕と会計補佐のサルバドゥールは、会長と一緒に、行動させて頂けないでしょうか?お願いします!!」
勢い良く頭を下げた書記補佐を見て、会計補佐も同じように頭を下げた。
「……」
こういう申し出は、疑うことにしている。
アルヴィスを見ると、同じように不審の目を向けていた。
だがまぁ、いいだろう。
これが罠なら、好都合だった。
「わかった。ではアルヴィス副会長と庶務、書記で行動してもらう。庶務補佐はワーナー伯爵令嬢の部屋で待機」
「は、はい…!」
「セシル副会長と風紀委員長達は、ホテルの周辺を見てもらえるだろうか」
「はい」
第四王子から教えてもらった展開によると、本来行方不明になるのは第一王子で、助けに行った時には輪姦されている。
ゲームの第一王子が戦えるなんて聞いていないし、無力であったなら、その展開もありえたかもしれない。
だが、自分は違う。
従魔のノアもいる。
おそらくAランクの冒険者が出てきたとしても、簡単に遅れを取らない自信があった。
…第一王子の代わりに侯爵令嬢が誘拐されたなら、急がないと大変なことになる。
聖女のご友人こと、スルガザキ・ヒメノは、第一王子に部屋の前まで送ってもらった際、中に入るよう可愛く誘ったものの断られ、不満を抱えて一人ベッドに座っていた。
「好感度、何で上がってないんだよ…」
ヒメノがプレイしたゲームでは、攻略対象者が望む言動を取れば、すぐにマックスまで好感度は上がるものだった。
第一王子は寂しい幼少時代を過ごし、愛情に飢えているキャラだった。
物心ついた頃には一人であり、母親は弟ばかりを溺愛し、第一王子を嫌っていた。
五歳になった時、留学目的で国外に出され、数年おきに転々と各国を回って過ごし、学園入学の年、帰国した。
家族からの愛を得られず、友人もおらず、だが顔が飛び抜けていいことで男女から言い寄られ、ふしだらな関係を築いている所に、聖女と出会うのだ。
聖女は、第一王子の生い立ちに深く同情し、寄り添おうと決意する。
逆ハールートは、早い段階で、各キャラの好感度をマックスまで上げることで解放されるルートなので、ヒメノはもちろん全力で、第一王子を落とす為の選択肢を調べてプレイしたのだ。
その通りにやったはずだった。
第一王子は、最初はクールに振る舞い聖女を邪険に扱うが、諦めずに寄り添うことで心を開いてくれる。
林間学校では、好感度がマックスになっていれば、同じチームになり、夜を一緒に過ごそうと誘ってくれるはずだった。
「くっそ、何でよ…どこで間違った…?」
焚き火の前で二人っきりになっても誘ってくれなかったから、こちらから誘ったというのに、断られた。
好感度が上がりきっていないと誘ってくれないし、誘っても断られる。
「…あ、もしかして」
第一王子は、構われたがりの愛されたがりキャラである。
落とすまではクールで格好良いのだが、落とした後はデレまくりの、可愛い一途系ワンコに変わるのだ。
常にそばにいたがるし、聖女の為に何でもしてくれるようになる。
愛の言葉も惜しみなく捧げてくれて、イチャラブエッチの糖度高めキャラだった。
だからこそ、逆ハールートにおいては、難しいキャラでもあった。
他のキャラとの好感度をマックスまで上げようとすると、第一王子の好感度が下がる。
嫉妬するのだ。
ゲームにおいてはウザ要素でしかなかったが、現実なら可愛い、と思えてしまうのが不思議だった。
「そっか…アタシが他の男と仲良くしてるから?嫉妬しちゃった?」
最近は、二軍攻略キャラの好感度上げで、行ったり来たりしていた。
だから、マックスじゃなかったんだ。
「はー…残念だけど、しょうがねーな。また頑張らなきゃ。早くミカエルとセックスしたいもん!」
今日はそのつもりで、可愛い下着を買ったのに。
ミカエルは、女の子らしく可愛い下着や可愛い服を聖女に着せるのが、好きだった。
好みに合わせてあげたのにぃ。
せっかくだから、誰かに見せたいな、と思っていると、扉をノックされた。
「はぁい?」
声を上げると、相手は最近好感度上げを頑張っている キャラだった。
「…俺だよ。姫、良かったら話しない?前言ってた有名店の焼き菓子、持ってきたんだ」
「えっ嬉しいぃ~!スヴェン、大好き!」
第一王子の好感度がマックスではない場合、王子の部屋には誘われないが、自分の部屋で過ごしていると、好感度の高いキャラから訪ねてくる。
応えれば好感度が上がり、無視すると次のキャラがやって来る。
スヴェンは、第三騎士団長の息子だった。
二軍キャラなので、育ててもそこまで強くはならないし、魔王討伐メンバーにはなれないものの、レベル上げ時には役に立つキャラだった。
おまけに、絶倫設定。
抱きつくと、すでにスヴェンの股間は熱くなっていた。
「…中で話そ?」
「あ、ああ」
扉を閉めて、鍵をかけた。
教師の見回り時間には帰ってもらって、また別のキャラの好感度も上げないと。
ヒメノはベッドに押し倒されながら、次にセックスする相手は誰にしようか考えていた。
各自部屋へと戻り、ミカエルが風呂に入って着替えようと服に手をかけた所で、部屋をノックされた。
出るべきか迷ったものの、諦めることなくずっと扉を叩いており、声も聞こえた。
「殿下、お休みの所申し訳ございません。お話がございます。お出まし頂けないでしょうか」
「……」
迷う内容だった。
話って、何だよ。
哀れっぽく「大事な話がある」と言われて顔を出した瞬間、「童貞を捨てさせて下さい!!」と土下座された去年の俺の話、する?
真面目に話を聞こうと思った、俺の善意を返してくれ、って思ったよね。
扉前で立ち止まっていると、さらに言葉は続いた。
「フランクリン侯爵令嬢様が、こちらにいらっしゃってないでしょうか?」
「…どういうことかな?」
「え、あっで、殿下、ご挨拶を、」
「そういうのは今はいらないから、話を。ここには来てないよ」
「あ、は、はい…!」
彼は、ターナー子爵令息だった。
今年の成績は八位であり、侯爵令嬢と同じチームだった。
彼の話によると、楽しく時間を過ごし、ホテルに入った所までは一緒だった。
同じチームのワーナー伯爵令嬢が、侯爵令嬢と同じ階の部屋だったので、一緒に行こうと声をかけようと振り返ったら、もうそこに姿はなかったのだと言う。
大体皆似た時間に撤収する為、ホテル入口には生徒がごった返していた。
たまたま見失っただけだろうと皆は部屋に戻ったが、伯爵令嬢は気になって、侯爵令嬢の部屋を訪ねたものの、返事はなかった。
三十分後に再び訪ねたがやはり返事はなく、寝ているだけならいいが、もし何かあったらと不安になり、教師に連絡した。
だが、相手にしてくれなかったのだという。
誰かの部屋にいるのでは?と、言われたらしい。
教師自体がソレを認めているのもどうかと思うが、消灯の見回りの時間になっても戻っていないようなら、その時に考える、とも言われたのだそうだ。
消灯時間は二十三時。
侯爵令嬢は、チームの誰にも挨拶もなく姿を消すような人ではない、ということは、ミカエルにもわかる。
去年も一昨年も、侯爵令嬢はきちんと挨拶をしてから、部屋へと戻って行ったのだ。
「侯爵令嬢様の交友関係を存じませんので、生徒会役員の方の部屋かもしれないと、お邪魔させて頂きました」
「なるほど、事情はわかった。それは気になるね」
「は、はい…。風紀委員長は、侯爵令嬢様の婚約者であられる王太子殿下の部屋に。伯爵令嬢様とピエール君が、他の役員の方の部屋へ行ってくれています」
「そうか。…まだ何か起こったわけでもないし、騒ぎ立てるのは良くないからね」
「そ、そうなのです…」
「それで、どこに集まる予定かな」
「え、えと、風紀委員長の部屋に集まって、確認をする事になっています」
「そう。じゃぁ私もお邪魔しよう。アルヴィス副会長も呼ぶ」
「あ、ありがとうございます…!」
何もなければいい。
だが、何かあってからでは遅いのだった。
風紀委員長の部屋の場所を聞いてから、アルヴィスの部屋に行って事情を話す。
彼もちょうど風呂に入ろうとしていた所だったので、間に合って良かった。
合流して風紀委員長の部屋へ行くと、生徒会役員が全員揃っていた。
「あ、会長!」
一年の会計補佐がミカエルに気づくと、口々に侯爵令嬢の安否を尋ねられたが、ミカエルに答えられることはない。
風紀委員長のシェルダン伯爵令息へと視線を向けると、心得たと言わんばかりに頷き、侯爵令嬢がいなくなった経緯を話した。
王太子の部屋に行っても侯爵令嬢は来ておらず、取り巻き令息に冷たくあしらわれたようだ。
不快に眉を顰め、舌打ちしそうな表情に、余程酷い扱いをされたのだろうと同情した。
その中で伯爵令嬢が、書記補佐を見ながら挙手をした。
「あの、一年の彼が、侯爵令嬢様を見たかもしれない、と言っていて」
「え!」
一斉に注目を浴びた書記補佐は、狼狽えて一歩後ろに下がりつつも、記憶を思い出すような仕草をした。
「あ、あの、俺がちょうどホテルに入ろうとしていた時に、女子生徒が一人、ホテルから出て行くのを見ました。この時間に?って思って、声をかけようと思ったんですが、あっという間に姿が見えなくなってしまって。後ろ姿もちらっとだったので、誰かはわからなかったんですけど、会計様だったんじゃないかって」
「その生徒は、ホテルを出てどの方向へ?」
ミカエルが尋ねると、書記補佐は腕を組み、考え込むように俯いた。
「えっと…。たぶん、裏の森の方だったんじゃないかと」
「森…?何をしに?」
「そ、そこまでは…」
侯爵令嬢でなかったとしても、女子生徒が一人で、しかも夜に、森へ行くというのは不審でしかない。
「恋人と逢い引きとか?」
庶務の発言に、沈黙が落ちる。
本当に侯爵令嬢が、待ち合わせをしているなら?
こうやって騒いでいることが、無駄になる。
だが、ミカエルは否定した。
「会計はそんな人ではないと思う。王太子殿下という婚約者がいるのに、軽率なことをするとは考えにくい」
「た、確かにそうですね…申し訳ございません」
「いや、謝罪には及ばない。だが気にはなるな。見てこようか」
「え、殿下が行かれるのですか?」
風紀委員長が驚き、周囲もまた驚いたようにミカエルを見た。
驚かれる意味がわからず、首を傾げる。
「本当に誰かと待ち合わせというなら退散すればいいし、もし迷子や怪我などしていたら、大変だろう」
「そうですね…では、手分けしませんか?女子生徒は、ワーナー伯爵令嬢の部屋で待機を。同じ階なので、ちょくちょく侯爵令嬢様の部屋を確認してくれ。生徒会役員の方と我々で、森とホテル周辺を見て回りましょう」
風紀委員長の提案は妥当だった。
ミカエルは頷き、アルヴィスへと顔を向けた。
「私とアルヴィス副会長は森へ…」
「あ、あの、会長」
ミカエルの言葉を遮ったのは、書記補佐だった。
そちらへと視線を向けると、恥ずかしげに両手を組み合わせながら、もじもじし出す。
「何か?」
「会長とアルヴィス副会長は、剣術の授業でも、トップクラスでお強いとお聞きしました」
「…そうだね」
「その、僕、剣術はさっぱりで…でも!魔術は出来ます!なので、出来れば僕と会計補佐のサルバドゥールは、会長と一緒に、行動させて頂けないでしょうか?お願いします!!」
勢い良く頭を下げた書記補佐を見て、会計補佐も同じように頭を下げた。
「……」
こういう申し出は、疑うことにしている。
アルヴィスを見ると、同じように不審の目を向けていた。
だがまぁ、いいだろう。
これが罠なら、好都合だった。
「わかった。ではアルヴィス副会長と庶務、書記で行動してもらう。庶務補佐はワーナー伯爵令嬢の部屋で待機」
「は、はい…!」
「セシル副会長と風紀委員長達は、ホテルの周辺を見てもらえるだろうか」
「はい」
第四王子から教えてもらった展開によると、本来行方不明になるのは第一王子で、助けに行った時には輪姦されている。
ゲームの第一王子が戦えるなんて聞いていないし、無力であったなら、その展開もありえたかもしれない。
だが、自分は違う。
従魔のノアもいる。
おそらくAランクの冒険者が出てきたとしても、簡単に遅れを取らない自信があった。
…第一王子の代わりに侯爵令嬢が誘拐されたなら、急がないと大変なことになる。
聖女のご友人こと、スルガザキ・ヒメノは、第一王子に部屋の前まで送ってもらった際、中に入るよう可愛く誘ったものの断られ、不満を抱えて一人ベッドに座っていた。
「好感度、何で上がってないんだよ…」
ヒメノがプレイしたゲームでは、攻略対象者が望む言動を取れば、すぐにマックスまで好感度は上がるものだった。
第一王子は寂しい幼少時代を過ごし、愛情に飢えているキャラだった。
物心ついた頃には一人であり、母親は弟ばかりを溺愛し、第一王子を嫌っていた。
五歳になった時、留学目的で国外に出され、数年おきに転々と各国を回って過ごし、学園入学の年、帰国した。
家族からの愛を得られず、友人もおらず、だが顔が飛び抜けていいことで男女から言い寄られ、ふしだらな関係を築いている所に、聖女と出会うのだ。
聖女は、第一王子の生い立ちに深く同情し、寄り添おうと決意する。
逆ハールートは、早い段階で、各キャラの好感度をマックスまで上げることで解放されるルートなので、ヒメノはもちろん全力で、第一王子を落とす為の選択肢を調べてプレイしたのだ。
その通りにやったはずだった。
第一王子は、最初はクールに振る舞い聖女を邪険に扱うが、諦めずに寄り添うことで心を開いてくれる。
林間学校では、好感度がマックスになっていれば、同じチームになり、夜を一緒に過ごそうと誘ってくれるはずだった。
「くっそ、何でよ…どこで間違った…?」
焚き火の前で二人っきりになっても誘ってくれなかったから、こちらから誘ったというのに、断られた。
好感度が上がりきっていないと誘ってくれないし、誘っても断られる。
「…あ、もしかして」
第一王子は、構われたがりの愛されたがりキャラである。
落とすまではクールで格好良いのだが、落とした後はデレまくりの、可愛い一途系ワンコに変わるのだ。
常にそばにいたがるし、聖女の為に何でもしてくれるようになる。
愛の言葉も惜しみなく捧げてくれて、イチャラブエッチの糖度高めキャラだった。
だからこそ、逆ハールートにおいては、難しいキャラでもあった。
他のキャラとの好感度をマックスまで上げようとすると、第一王子の好感度が下がる。
嫉妬するのだ。
ゲームにおいてはウザ要素でしかなかったが、現実なら可愛い、と思えてしまうのが不思議だった。
「そっか…アタシが他の男と仲良くしてるから?嫉妬しちゃった?」
最近は、二軍攻略キャラの好感度上げで、行ったり来たりしていた。
だから、マックスじゃなかったんだ。
「はー…残念だけど、しょうがねーな。また頑張らなきゃ。早くミカエルとセックスしたいもん!」
今日はそのつもりで、可愛い下着を買ったのに。
ミカエルは、女の子らしく可愛い下着や可愛い服を聖女に着せるのが、好きだった。
好みに合わせてあげたのにぃ。
せっかくだから、誰かに見せたいな、と思っていると、扉をノックされた。
「はぁい?」
声を上げると、相手は最近好感度上げを頑張っている キャラだった。
「…俺だよ。姫、良かったら話しない?前言ってた有名店の焼き菓子、持ってきたんだ」
「えっ嬉しいぃ~!スヴェン、大好き!」
第一王子の好感度がマックスではない場合、王子の部屋には誘われないが、自分の部屋で過ごしていると、好感度の高いキャラから訪ねてくる。
応えれば好感度が上がり、無視すると次のキャラがやって来る。
スヴェンは、第三騎士団長の息子だった。
二軍キャラなので、育ててもそこまで強くはならないし、魔王討伐メンバーにはなれないものの、レベル上げ時には役に立つキャラだった。
おまけに、絶倫設定。
抱きつくと、すでにスヴェンの股間は熱くなっていた。
「…中で話そ?」
「あ、ああ」
扉を閉めて、鍵をかけた。
教師の見回り時間には帰ってもらって、また別のキャラの好感度も上げないと。
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そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。
断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。
誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。
「役立たず」と追放された神官を拾ったのは、不眠に悩む最強の騎士団長。彼の唯一の癒やし手になった俺は、その重すぎる独占欲に溺愛される
水凪しおん
BL
聖なる力を持たず、「穢れを祓う」ことしかできない神官ルカ。治癒の奇跡も起こせない彼は、聖域から「役立たず」の烙印を押され、無一文で追放されてしまう。
絶望の淵で倒れていた彼を拾ったのは、「氷の鬼神」と恐れられる最強の竜騎士団長、エヴァン・ライオネルだった。
長年の不眠と悪夢に苦しむエヴァンは、ルカの側にいるだけで不思議な安らぎを得られることに気づく。
「お前は今日から俺専用の癒やし手だ。異論は認めん」
有無を言わさず騎士団に連れ去られたルカの、無能と蔑まれた力。それは、戦場で瘴気に蝕まれる騎士たちにとって、そして孤独な鬼神の心を救う唯一の光となる奇跡だった。
追放された役立たず神官が、最強騎士団長の独占欲と溺愛に包まれ、かけがえのない居場所を見つける異世界BLファンタジー!
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