婚約破棄、喜んで承りますわ! 『真実の愛』に生きるって素晴らしいですもの!

隅野せかい

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『真実の愛』は永遠ですものね。

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 あら? いきなり剣など抜いて、殿下は何が御不満なのですか?

 おふたりが心から望んでいた永遠の『真実の愛』に満ちた生活が始まるというのに……。
 それに、王妃となることが決まっているわたくしに、斬りかかりなどしたら――

 ですからご忠告しましたのに。
 そんなことをするから乱暴に取り押さえられ床に這いつくばらされてしまうではありませんか。

 カール陛下。そんなにお怒りにならないで。
 おふたりは容姿はすぐれていても、中身は禽獣に等しく、人間の法律など理解できる知能はありませんもの。
 今のは頭の悪い番犬が吠えた程度のもの。

 ああ……でもいいですわ。絵になってますわ……。
 殿下のような超絶的に美しい貴公子が豪奢な金髪を振り乱し床に押さえつけられているお姿も、神々の零落という感じでドラマチックですわ!
 これもデルピエロ画伯に描いていただきますわ!

 ですが。
 どうしておふたりとも、わたくしを殺したそうな目で見るのでしょうか? 理解できませんわ。

 おふたりはこれから『真実の愛』に生きるので御座いましょう?
 殿下が嫌がっていた政治からも礼儀からも勉学からも……全ての面倒な現実から解放してさしあげるのですわよ。
 カトリーナ嬢が無視していた社交のマナーも勉学からも……ありとあらゆる決まり事から解放してさしあげるのですわよ。
 おふたりはこれから、混じりけ無しの『真実の愛』だけに生きていけるんですのよ。
 感謝されこそすれ恨まれる筋合いはありませんわ。

 あ、兵士の皆様。おふたりの体に傷はつけないでくださいまし。
 芸術品にも等しいふたりのお体は、明日から毎日『真実の愛』として隅隅まで公開されるのですもの。
 
 ええ。傷や痣さえつかなければ、問題ありませんわ。

 お引き留めしてごめんなさい。
 兵士の皆様。お二人を新居に連れてっいってさしあげてくださいまし。

 では、殿下、カトリーナ嬢。
 明日、植物園での『真実の愛』公開記念式典でお会いしましょう。
 これからの『真実の愛』のうつろいを、とっくりと見せていただきますわよ。

 ああ、うつろいなどありませんわね。
『真実の愛』は永遠ですものね。

 ふふふ。あはは。
 本当に楽しみですわ。

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