【完結】人魚姫ティナリア

佐倉穂波

文字の大きさ
11 / 23
本編

11 ティナリアの特技

しおりを挟む
 コンテストは至ってシンプルなものでした。
 壇上だんじょうに上がった女の子たちが、一人ずつ自己紹介と、得意なことを披露ひろうするというものです。
「絶対に人魚だってことがバレないようにしてよ」
 運営の人と一緒に壇上に向かうティナリアに、ルイは小声で言います。人魚だとバレたら大騒ぎになってしまいます。それはティナリアも充分分かっているはずですが、一応念のためです。
「分かってるよ。大丈夫!」
 ティナリアは笑顔で答えると、元気よく壇上に上がって行きました。

 可愛い女の子たちが、次々に自分の特技を披露していきます。
 歌う女の子。
 詩を朗読する女の子。
 手品で壇上に花を降らせる女の子。
 みんな色々な特技を持っています。
(私は何をしようかなぁ……)
 飛び入り参加のティナリアの出番は最後です。何をするか決めずに付いてきたので、女の子たちの特技を観ながら考えます。
(そうだ、アレにしよう)
 何をするか決めたところで、丁度ティナリアの番になりました。
 ティナリアは壇上の真ん中まで行くと、にっこりと笑顔で、見ている人たちに手を振ります。
 その笑顔は見ているだけで元気になれるような魅力みりょくがありました。
「ティナリアって言います。今日は初めてお祭りに来れて、とっても楽しいです。何をしようか迷ったんだけど、私の特技と言ったら元気に舞うことなので、踊ろうと思います!」
 ティナリアは海の中で自由に泳ぎ舞うのが大好きなのです。
 ここは水中ではないし、人魚の姿ではありませんが、きっと大丈夫だと思いました。陸に上がってから歩いたり、走ったりして両足の感覚にも慣れてきました。
「ルイ、歌って」
 突然の名指しに、壇の近くにいたルイはもちろん驚きます。
 しかし、ティナリアの突拍子もない行動はいつもの事です。それに慣れきっているルイは、やれやれといった表情でティナリアの好きな詩を歌い始めました。
 もちろん人魚の力の籠った詩ではなく、普通に。
 ルイの歌声に合わせて、ティナリアはタンッと足を跳ねらせ、躍り始めます。水色のキレイな髪は、直接陽の光を浴びてキラキラと輝いて見えます。すべるように滑らかな動きで舞うティナリアは、ルイの歌声と相まって、とても神秘的です。
 短い躍りが終わると、会場はワッと歓声で包まれました。
 壇上にいる他の女の子たちもティナリアに拍手を送ってくれています。
「ありがとう!!」
 ティナリアは満面の笑みで拍手に応えながら、他の女の子たちの場所へ戻りました。

 それからすぐにコンテストの表彰が始まりました。
 受賞者には王子さまから花が送られるそうです。
 王子さまは、ティナリアと同じくらいの年頃で、とても整った──つまりカッコいい男の子でした。
 色々な賞の受賞がされ、女の子たちは顔を薄桃色に染めながら王子さまから花を受け取っています。
 最後にコンテストの優勝者の名前が呼ばれました。
 優勝者はティナリアでした。
 名前を呼ばれたティナリアが、王子さまの前に行くと、水色の可愛らしい花が差し出されました。

「優勝した君を、今夜お城で開かれる舞踏会に招待するよ。良かったら歌ってくれた友達と一緒に来てくれないかな」
 王子さまは、ティナリアに笑顔で言います。と言ったときに、ちらりとルイの事を見た気がしました。

 お祭りの後は海に帰る予定でしたが、お城の舞踏会に参加するという、予想外の予定ができてしまいました。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

【運命】と言われて困っています

桜 花音
児童書・童話
小6のはじまり。 遠山彩花のクラスである6年1組に転校生がやってきた。 男の子なのに、透き通るようにきれいな肌と、お人形さんみたいに、パッチリした茶色い瞳。 あまりにキレイすぎて、思わず教室のみんな、彼に視線が釘付けになった。 そんな彼が彩花にささやいた。 「やっと会えたね」 初めましてだと思うんだけど? 戸惑う彩花に彼はさらに秘密を教えてくれる。 彼は自らの中に“守護石”というものを宿していて、それがあると精霊と関われるようになるんだとか。 しかも、その彼の守護石の欠片を、なぜか彩花が持っているという。 どういうこと⁉

【親子おはなし絵本】ドングリさんいっぱい(2~4歳向け(漢字えほん):いろいろできたね!)

天渡 香
絵本
「ごちそうさま。ドングリさんをちょうだい」ママは、さっちゃんの小さな手に、ドングリさんをのせます。 +:-:+:-:+ ドングリさんが大好きな我が子ために作った絵本です。 +:-:+:-:+ 「ひとりでトイレに行けたね!」とほめながら、おててにドングリさんを渡すような話しかけをしています(親子のコミュニケーションを目的にしています)。 +:-:+:-:+ 「ドングリさんをちょうだい」のフレーズを繰り返しているうちに、子供の方から「ドングリさんはどうしたらもらえるの?」とたずねてくれたので、「ひとりでお着がえできたら、ドングリさんをもらえるよ~」と、我が家では親子の会話がはずみました。 +:-:+:-:+ 寝る前に、今日の「いろいろできたね!」をお話しするのにもぴったりです! +:-:+:-:+ 2歳の頃から、園で『漢字えほん(漢字が含まれている童話の本)』に親しんでいる我が子。出版数の少ない、低年齢向けの『漢字えほん』を自分で作ってみました。漢字がまじる事で、大人もスラスラ読み聞かせができます。『友達』という漢字を見つけて、子供が喜ぶなど、ひらがなだけの絵本にはない発見の楽しさがあるようです。 +:-:+:-:+ 未満児(1~3歳頃)に漢字のまじった絵本を渡すというのには最初驚きましたが、『街中の看板』『広告』の一つ一つも子供にとっては楽しい童話に見えるようです。漢字の成り立ちなどの『漢字えほん』は多数ありますが、童話に『漢字とひらがなとカタカナ』を含む事で、自然と興味を持って『文字が好き』になったみたいです。

まぼろしのミッドナイトスクール

木野もくば
児童書・童話
深夜0時ちょうどに突然あらわれる不思議な学校。そこには、不思議な先生と生徒たちがいました。飼い猫との最後に後悔がある青年……。深い森の中で道に迷う少女……。人間に恋をした水の神さま……。それぞれの道に迷い、そして誰かと誰かの想いがつながったとき、暗闇の空に光る星くずの方から学校のチャイムが鳴り響いてくるのでした。

小鳥

水翔
絵本
小鳥と少女の物語

左左左右右左左  ~いらないモノ、売ります~

菱沼あゆ
児童書・童話
 菜乃たちの通う中学校にはあるウワサがあった。 『しとしとと雨が降る十三日の金曜日。  旧校舎の地下にヒミツの購買部があらわれる』  大富豪で負けた菜乃は、ひとりで旧校舎の地下に下りるはめになるが――。

星降る夜に落ちた子

千東風子
児童書・童話
 あたしは、いらなかった?  ねえ、お父さん、お母さん。  ずっと心で泣いている女の子がいました。  名前は世羅。  いつもいつも弟ばかり。  何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。  ハイキングなんて、来たくなかった!  世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。  世羅は滑るように落ち、気を失いました。  そして、目が覚めたらそこは。  住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。  気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。  二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。  全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。  苦手な方は回れ右をお願いいたします。  よろしくお願いいたします。  私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。  石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!  こちらは他サイトにも掲載しています。

こちら第二編集部!

月芝
児童書・童話
かつては全国でも有数の生徒数を誇ったマンモス小学校も、 いまや少子化の波に押されて、かつての勢いはない。 生徒数も全盛期の三分の一にまで減ってしまった。 そんな小学校には、ふたつの校内新聞がある。 第一編集部が発行している「パンダ通信」 第二編集部が発行している「エリマキトカゲ通信」 片やカジュアルでおしゃれで今時のトレンドにも敏感にて、 主に女生徒たちから絶大な支持をえている。 片や手堅い紙面造りが仇となり、保護者らと一部のマニアには 熱烈に支持されているものの、もはや風前の灯……。 編集部の規模、人員、発行部数も人気も雲泥の差にて、このままでは廃刊もありうる。 この危機的状況を打破すべく、第二編集部は起死回生の企画を立ち上げた。 それは―― 廃刊の危機を回避すべく、立ち上がった弱小第二編集部の面々。 これは企画を押しつけ……げふんげふん、もといまかされた女子部員たちが、 取材絡みでちょっと不思議なことを体験する物語である。

荒川ハツコイ物語~宇宙から来た少女と過ごした小学生最後の夏休み~

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 今より少し前の時代には、子供らが荒川土手に集まって遊ぶのは当たり前だったらしい。野球をしたり凧揚げをしたり釣りをしたり、時には決闘したり下級生の自転車練習に付き合ったりと様々だ。  そんな話を親から聞かされながら育ったせいなのか、僕らの遊び場はもっぱら荒川土手だった。もちろん小学生最後となる六年生の夏休みもいつもと変わらず、いつものように幼馴染で集まってありきたりの遊びに精を出す毎日である。  そして今日は鯉釣りの予定だ。今まで一度も釣り上げたことのない鯉を小学生のうちに釣り上げるのが僕、田口暦(たぐち こよみ)の目標だった。  今日こそはと強い意気込みで釣りを始めた僕だったが、初めての鯉と出会う前に自分を宇宙人だと言う女子、ミクに出会い一目で恋に落ちてしまった。だが夏休みが終わるころには自分の星へ帰ってしまうと言う。  かくして小学生最後の夏休みは、彼女が帰る前に何でもいいから忘れられないくらいの思い出を作り、特別なものにするという目的が最優先となったのだった。  はたして初めての鯉と初めての恋の両方を成就させることができるのだろうか。

処理中です...