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出会い

3  暴行①

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女子高生・JKなど呼び方は幾つもあるが、どこの町にも存在する珍しくもない存在。そのはずなのに何故か気になった。女子高生というよりも、その子をどこかで見た事がある気がしたのだ。
そんな若いしかも女子の知り合いなんていたっけ?
と思いつつコンビニの窓越しによく観察してみる。
制服のシャツもスカートも一般的な高校とはデザインが違う。この辺で有名なお嬢様学校の制服だ。スタイルはモデルのように良く姿勢も歩き方も美しい。
鞄とローファーは、地味だが高級感がある。どちらも普通の女子高生が持つような物では無い。
顔は女優かと思うくらい整っており、どこを見ても歩いているだけで目立つ。
こんな特徴的な人間を忘れるかな?
と思いつつアルコールの入った脳をフル回転して記憶を漁る。
アル中寸前の脳みそが記憶を何とか引っ張り出そうと苦戦していると彼女が買い物を終えてコンビニから出てくるの。
手にはどこのコンビニにもあるカフェラテ。ストローの付いた甘い奴だ。
カフェラテを飲みながら俺の前を通り過ぎる。
身長差の為、ちょうど俺の鼻先に顔が通っていく。
あまり広くないコンビニと駐車場の間の通路。
彼女からフローラルな香りが鼻まで届く。
香水?制汗スプレー?いやシャンプーの香りだ。男性があまり使うことのない高級なシャンプー。
その匂いとともに記憶がフラッシュバックされる。
離婚するまで元妻と住んでたマンションの一番近いコンビニ。
そこで毎朝コーヒーを買って煙草を一本吸ってから出勤していたのだが。毎朝すれ違う女子高生がいた。近所に住んでるのだろうと思って気にもしていなかったが、見た目の良さが印象的なので記憶に残っていたのだ。
思い出したからといってどうだ、ということもないのだが、喉に刺さった小骨がとれたようなすっきり感がある。
ただ思い出すためにかなり長い時間凝視したので、見られているのに気付いたのだろう、2、3歩進んだ所で突然振り返ったため目が合ってしまった。
そこで突然今の自分の見た目を思い出す。
部屋着の様な服装にアルコールと不眠で充血した目。当然目の下もクマで真っ黒だ。無精髭に、やつれてこけた頬。手にはアルコール飲料。
どう見ても不審者丸出しだ。
ヤバいと思ってると彼女が一瞬困った顔をしてから笑顔を見せた。
笑顔。
普通に考えると良い表情だ。
だが彼女の笑顔はどこか違った。
何というか、人を見下すような笑顔。まるで格下の人間に対しての憐みと侮蔑の混じった笑顔。
そう感じた。
一瞬怒りで自分を見失いかけたが、被害妄想だと何とか自分を抑え込む。
だが彼女は、笑顔の後、呆れたように、ため息を一つし。回れ右をし、真っ直ぐ歩いて行った。
そこで俺の怒りを抑え込むのに失敗した。
これは被害妄想じゃない。馬鹿にされている。
そう感じた。
アルコールの影響もあり怒りで我を失いそうだったが、心の一部はどこか冷静に計算を始める。
少しビビらせてやろう。そのくらいなら大事には、ならないだろう。
そう思い彼女の後ろを一定間隔を空けて歩く。
ビビらせるのが目的なので堂々と歩く。
丁度、コンビニから駅までの中間地点に自宅の安アパートもあり。通報されても帰る途中だと言い張れる。そう考えていた。
5分ほど、そのまま間隔を空けて歩き。俺の自宅アパートの前に差し掛かった辺りで彼女が急に立ち止まり流れるような動作で振り向く。
まるでおれの自宅を知っていたかのように。
不意を突かれ俺も立ち止まってしまう。
(やべ。言い訳できなくなる。)
そう思っていると、彼女がこちらに近づいてきて、無表情で口を開く。
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