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9 栄枯盛衰。
しおりを挟む祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。 娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。
おごれる人も久しからず、平家物語なエリカです。
私の栄光の日々も、一日で終わった。
明智光秀より短かった……。
魔法ってね、知ってる? 素質が有っても、発動させないと意味が無いんだよ。
貴族の子女は学園に入る前に、ご家庭で教養として魔法も基礎は習得するそうで、
魔法を発動できないのは、私一人だった。
ショボい火も1滴の水もそよとの風も、出なかった。
「庶民って、こんなこともできないんですの?」
前の席の金髪ドリトル(金髪ドリルのギャル)のイザベラ様だ。
イザベラ様が、扇をひらひらさせながらあざ笑った。
ちょっとつり目の悪女顔の美人さんだ。
あるくアンティックドールだ。
お察しの通り、乙女ゲームの悪役令嬢。
確か1学年上の侯爵家の婚約者のはず。
教室中が、どっと笑う。
恥ずかしさと悔しさと、みっともなさで、顔が熱くなる。
くやしいけど、くやしいけど、おばさんそのくらいじゃ負けないぜ。
くやしいのをぐっとこらえて、にっこり笑う。
「そうなんです! 庶民にはできないんです。
イザベラ様、教えてください。」
イザベラ様、笑顔にちょっとたじろく。
「もう、庶民はしょうがないわね。まず、魔力を全身に巡らせるのよ。
そして、手のひらから放出するイメージで、呪文を唱えなさい。」
イザベラ様は、手取り足取り優しく教えてくださった。
良い子だったよ、この子。
「イザベラ様って、お優しいんですね。」
「べ、べつに貴女のためじゃなくってよ。 下々を導くのは貴族の義務ですわ。
分からないことが有れば、わたくしにお聞きなさい。」
と、頬を染めて照れていらっしゃる。
イザベラ様、ツンデレだった。チョロかった。
**
イザベラ様が、放課後に、「紹介のないものは身分が下位のものから、上位の方に声をかけてはいけない。」と、そっと教えてくださった。
どおりで誰も返事してくれなかったわけだ。
貴族としては常識なんだって。
そういえば、時代劇でも殿様が許すまで、口頭できなかったし頭を上げてもいけなかったっけ。
ひゃあ~、やらかしてたのは私だったよ orz……。
それからイザベル様に、「貴女、巨大ゴキブリと戦ったって、ほんとう?」と聞かれた。
どうやら、噂に背びれ尾びれがついてる模様ですぅ……。
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