GLACIER(グレイシア)

弓チョコ

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第25話 乾杯

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「じゃ、じゃあよ。解かして来てくれよ。『グレイシア』をよ!」

 クリューと男性は興奮した様子でサスリカへ迫る。だがそこで、サスリカの前にリディが立った。

「待った。クリューはともかく、末裔さん。貴方はあたし達の『一行』じゃないし部外者よ」
「あん?」
「『グレイシア』を復活させたいのは分かるけどね。あれもこれも人任せで、しかも報酬も無いってのはハンターとして受けられないわ。ねえクリュー。でしょう? オルヴァリオ。だって今回の冒険、『実益』はゼロなのよ?」
「!」

 この男性からは。『氷漬けの美女』についてと、氷を解かす可能性についての情報を得た。だがその情報が報酬と言うのなら、サスリカを連れてきた時点で終わりだ。その後についてとやかく言われる筋合いは無い。勿論、サスリカを渡すことも。

「確かに。このままではリディの報酬も払えないな」

 クリューは落ち着いて唸った。男性は少し考えて、意気消沈した。

「…………まあ、そうだな。トレジャーハンターに出せるような金は無え。だからじゃあ、依頼じゃなくお願いだ。クリューよ。お前さんは解かすんだろ?」
「ああ。今すぐにでもルクシルアへ戻りたい」
「なら。一度俺達末裔のことを話して欲しい。で、いつかこの町に寄ってくれ。それで良い」
「ああ。約束しよう。新婚旅行で来るさ」
「なに言ってんのあんた」

 男性は居心地が悪くなったのか、その後すぐに酒場を出ていった。クリューはお礼をしていた。『氷漬けの美女』が無事に生存している可能性がぐっと上がる話を聞けたのだ。それだけでも、クリューの方から報酬を払いたいくらいだ。

「じゃ宿に帰るわよ。疲れたし」
「まあ待て。腹も減った。今後の旅はサスリカも一緒だろう? 乾杯くらいしようじゃないか」

 リディが席を立とうとした所を、オルヴァリオが止めた。

「……ていうか、今回の戦果ゼロなの。分かる? 『ゼロ』なの。得したのはクリューだけだし、あんたはトレジャーハンターができたから満足だろうけど。あたしは『ゼロ』なの。寧ろ収支マイナスなのよ。矢に弾に、道具も色々消費して。あんた達から報酬も貰えない。最悪だわ」
「まずは呑もう。なあクリュー」
「……ああ。心配するなリディ。今回の件は本当に感謝してる。必ず払うさ。あと、銃も返さないと」
「…………」

 愚痴を吐くも、ふたりは意に介していない。次第にリディも、どうでもよくなってきた。
 席に座り直す。

「……良いわよ持ってて。ルクシルアに帰るまで。真冬のバルセスを南下するにしても、冬をここで越すにしても。しばらくは『ハンター』で日銭を稼がないといけないしね」
「なるほど。冬に猛獣を狩る仕事は割りと需要がありそうだな」

 オルヴァリオはもう店員に注文していた。取り敢えずの麦酒と、肉料理を。

「そういやサスリカは何か食うのか?」
『いえ。ワタシはお水があれば活動できます。食べ物を消化する器官はありません』
「便利ねえ。だけど美味しいもの食べられないのは残念」
『味覚もありませんから』
「まあ、それならそれで。食費も抑えられて良いじゃないか。じゃあ3人分だな」

 完全に水だけで稼働し続ける自立機械人形。サスリカに使われている技術は非常にハイレベルだ。クリュー達の時代では想像も付かないようなものだった。
 ともかく。

「じゃ、新たな旅の仲間を歓迎して」

 オルヴァリオが最初にグラスを掲げた。

「『氷漬けの美女』を解かす有益な情報に感謝して」

 クリューも同じく。ふたりで、リディを見る。

「……もう良いわよ。じゃあ、とにかくお金を稼げることを祈願して」

 やれやれと溜め息を吐ききったリディも、同じく。
 最後に、麦酒ではなく水の入ったグラスが、カチンと当たった。

『ありがとうございます。ますたー、皆さま』

 ともあれ、喜べば良い。旅の無事を。大きな怪我も無く、戻って来られたことを。
 そして新たな仲間のことを。

「乾杯っ!」
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