34 / 99
第34話 機能的な本心
しおりを挟む
「やあ、君達がリディの友人か」
「!」
リディが選んだいくつかの銃を持って、庭の射撃場にやってきた。試し撃ちも兼ねて訓練をしようとしている時に、外から声を掛けられたのだ。
「……ハッシュ」
「おかえり、リディ。今回は短い『家出』だったな」
線の細い、茶髪の男性だった。垂れ目気味で、優しそうな印象を受ける。貴族の服を着ており、佇まいも上品だ。
「ハッシュバルト・コースター。この屋敷の長男だよ」
「初めまして。クリュー・スタルースと申します」
クリューもぺこりと挨拶をした。貴族風の、胸に手を当てる挨拶は知っているが、久々過ぎて少しぎこちなくなってしまった。
「ふうん。強そうな男じゃないか。どこの御曹司だい」
「あのねハッシュ。クリューと、あともうふたり居るけど。彼らは『仲間』なのよ。トレジャーハンターのね」
「まだ遊んでいるのか。そろそろ父上に叱られるぞ」
「遊びじゃないわよ!」
雰囲気に余裕を持つハッシュと反対に、リディは急に声を荒げた。クリューも驚く。
「今、本当に大事なの。邪魔しないでってあの男にも言っておいて」
「父親を『あの男』呼ばわりはひどいだろうリディ。君の救い主なのに」
「どこがよ! 束縛キモオヤジのくせに! 本当は帰るつもりなんて無かったんだから!」
「口が悪いな。トレジャーハンターの影響だろう。彼らは生活レベルも衛生環境も悪い。リディが居るような場所じゃない」
「あたしは元々『そっち』の人間よ! もう良いからあっち行って!」
「……ふう」
けたたましく言い放ったリディに、ハッシュは溜め息を吐いた。そしてくるりと踵を返す。
「まあ、僕は干渉しないよ。君のやることにね。君が居なくてもこの屋敷は安泰だから。だけど父上はどうかな。君はあまりにも、死んだ母上に『似すぎている』から」
「!」
「君をいつか、『継母上』と呼ばなければならない事態にならなければ良いけど」
「死ね! って言っといて!」
「自分でどうぞ。ていうか部屋をコレクション用にいくつも使わせてもらっておいて、父上に逆らえるのかい?」
「死ね!」
「はっはっは……」
笑いながら、背中に罵声を受けながら。ハッシュは屋敷の中へと戻って行った。
「…………」
「…………」
残されたクリューとリディは、しばらく沈黙していた。リディは俯いたまま。
「!」
ズドン、と銃声が轟いた。リディは驚いて顔を上げる。
クリューが、試し撃ちをした所だった。
「クリュー」
「すまないが、今の俺には『氷漬けの美女』『ネヴァン商会』しか見えていない。リディには普段から感謝してる。リディの家のことは、求められれば協力しよう。だが、冷たく思うかもしれないが正直言うと『そこまで興味は無い』。トレジャーハンターを馬鹿にするあの男は少し不快だったが、だからと言って何をするつもりも無い。俺がトレジャーハンターやコレクターを素晴らしいと思う気持ちに少しの翳りも無い」
「……!」
ズドン。今度は別の銃で撃った。ひとつひとつ、取り回しや反動、狙いやすさなどが違う。クリューはふむと何度か頷きながら、リディに一度も目もくれずに銃を吟味している。
「オルヴァなら、リディの話を聞いてくれると思うぞ」
「え……」
色々あるのだろう。リディにも。自分がお嬢様であることを否定していたこともある。家族とうまくできていないのだろう。髪の色からして、血縁のある家族ではないのかもしれない。
だがクリューは。彼の思考はもっと『機能的』だった。銃の話を聞いて、より顕著になっているようだ。
「あいつは俺と違って優しいからな。仲間なんだから、何でも話したら良い。俺にしてくれても良いが、期待する答えはできないかもしれない。今の俺には銃しかない。もしこれを使ってリディの役に立てるならいくらでも撃つがな」
「…………クリュー」
だが。
彼の言葉は何故か、温かくリディの胸に流れた。飾りの無い、素っ気ない言葉だが。だからこそこの男の『本心』なのだと安心できる。そんな気がしたのだ。
「おーい。色々買ってきたぞー」
『ただいま戻りました』
そこへ。ふたりも戻ってきた。
「!」
リディが選んだいくつかの銃を持って、庭の射撃場にやってきた。試し撃ちも兼ねて訓練をしようとしている時に、外から声を掛けられたのだ。
「……ハッシュ」
「おかえり、リディ。今回は短い『家出』だったな」
線の細い、茶髪の男性だった。垂れ目気味で、優しそうな印象を受ける。貴族の服を着ており、佇まいも上品だ。
「ハッシュバルト・コースター。この屋敷の長男だよ」
「初めまして。クリュー・スタルースと申します」
クリューもぺこりと挨拶をした。貴族風の、胸に手を当てる挨拶は知っているが、久々過ぎて少しぎこちなくなってしまった。
「ふうん。強そうな男じゃないか。どこの御曹司だい」
「あのねハッシュ。クリューと、あともうふたり居るけど。彼らは『仲間』なのよ。トレジャーハンターのね」
「まだ遊んでいるのか。そろそろ父上に叱られるぞ」
「遊びじゃないわよ!」
雰囲気に余裕を持つハッシュと反対に、リディは急に声を荒げた。クリューも驚く。
「今、本当に大事なの。邪魔しないでってあの男にも言っておいて」
「父親を『あの男』呼ばわりはひどいだろうリディ。君の救い主なのに」
「どこがよ! 束縛キモオヤジのくせに! 本当は帰るつもりなんて無かったんだから!」
「口が悪いな。トレジャーハンターの影響だろう。彼らは生活レベルも衛生環境も悪い。リディが居るような場所じゃない」
「あたしは元々『そっち』の人間よ! もう良いからあっち行って!」
「……ふう」
けたたましく言い放ったリディに、ハッシュは溜め息を吐いた。そしてくるりと踵を返す。
「まあ、僕は干渉しないよ。君のやることにね。君が居なくてもこの屋敷は安泰だから。だけど父上はどうかな。君はあまりにも、死んだ母上に『似すぎている』から」
「!」
「君をいつか、『継母上』と呼ばなければならない事態にならなければ良いけど」
「死ね! って言っといて!」
「自分でどうぞ。ていうか部屋をコレクション用にいくつも使わせてもらっておいて、父上に逆らえるのかい?」
「死ね!」
「はっはっは……」
笑いながら、背中に罵声を受けながら。ハッシュは屋敷の中へと戻って行った。
「…………」
「…………」
残されたクリューとリディは、しばらく沈黙していた。リディは俯いたまま。
「!」
ズドン、と銃声が轟いた。リディは驚いて顔を上げる。
クリューが、試し撃ちをした所だった。
「クリュー」
「すまないが、今の俺には『氷漬けの美女』『ネヴァン商会』しか見えていない。リディには普段から感謝してる。リディの家のことは、求められれば協力しよう。だが、冷たく思うかもしれないが正直言うと『そこまで興味は無い』。トレジャーハンターを馬鹿にするあの男は少し不快だったが、だからと言って何をするつもりも無い。俺がトレジャーハンターやコレクターを素晴らしいと思う気持ちに少しの翳りも無い」
「……!」
ズドン。今度は別の銃で撃った。ひとつひとつ、取り回しや反動、狙いやすさなどが違う。クリューはふむと何度か頷きながら、リディに一度も目もくれずに銃を吟味している。
「オルヴァなら、リディの話を聞いてくれると思うぞ」
「え……」
色々あるのだろう。リディにも。自分がお嬢様であることを否定していたこともある。家族とうまくできていないのだろう。髪の色からして、血縁のある家族ではないのかもしれない。
だがクリューは。彼の思考はもっと『機能的』だった。銃の話を聞いて、より顕著になっているようだ。
「あいつは俺と違って優しいからな。仲間なんだから、何でも話したら良い。俺にしてくれても良いが、期待する答えはできないかもしれない。今の俺には銃しかない。もしこれを使ってリディの役に立てるならいくらでも撃つがな」
「…………クリュー」
だが。
彼の言葉は何故か、温かくリディの胸に流れた。飾りの無い、素っ気ない言葉だが。だからこそこの男の『本心』なのだと安心できる。そんな気がしたのだ。
「おーい。色々買ってきたぞー」
『ただいま戻りました』
そこへ。ふたりも戻ってきた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
氷結の夜明けの果て (R16)
ウルフィー-UG6
ファンタジー
Edge of the Frozen Dawn(エッジ・オブ・ザ・フローズン・ドーン)
よくある異世界転生?
使い古されたテンプレート?
――そうかもしれない。
だが、これはダークファンタジーだ。
恐怖とは、姿を見せた瞬間よりも――
まだ見えぬまま、静かに忍び寄るもの。
穏やかな始まり。ほのかな優しさ。
だが、石の下には、眠る獣がいるかもしれない。
その時が来れば、闇は牙を剥く。
あらすじ
失われた魂――影に見つめられながら。
だが、英雄とは……本当に常に“光”のために戦う者なのか?
異国の大地で、記憶のないまま、見知らぬ身体で目を覚ます。
生き延びようとする本能だけが、彼を前へと突き動かす。
――英雄か、災厄か。それを分けるのは、ただ一つの選択。
冷たく、謎めいた女戦士アリニアと共に、
彼は武器を鍛え、輝く都市を訪れ、古の森を抜け、忘れられた遺跡へと踏み込んでいく。
だが、栄光へと近づく一歩ごとに、
痛みが、迷いが、そして見えない傷が刻まれていく。
光の道を歩んでいるかのように見えて――
その背後で、影は静かに育ち続けていた。
――これは、力と希望、そして自ら築き上げる運命の物語。
🔹 広大で容赦のない世界が、挑む者を待ち受ける。
🔹 試練と沈黙の中で絆を深めていく、二人の仲間。
🔹 「居場所」を探す旅路の果てに待つものとは――。
ヴェイルは進む。
その選択はやがて、一つの伝説を生み出すだろう。
それが光か、闇か。――決めるのは、あなた自身だ。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります
はぶさん
ファンタジー
ブラック企業で心をすり減らし過労死した俺が、異世界で手にしたのは『ポイント』を貯めてあらゆるものと交換できるスキルだった。
「今度こそ、誰にも搾取されないスローライフを送る!」
そう誓い、辺境の村で農業を始めたはずが、飢饉に苦しむ人々を見過ごせない。前世の知識とポイントで交換した現代の調味料で「奇跡のプリン」を生み出し、村を救った功績は、やがて王都の知るところとなる。
これは、ポイント稼ぎに執着する元社畜が、温かい食卓を夢見るうちに、うっかり世界の謎と巨大な悪意に立ち向かってしまう物語。最強農民の異世界改革、ここに開幕!
毎日二話更新できるよう頑張ります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる