GLACIER(グレイシア)

弓チョコ

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第68話 断崖線へ

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 ゴルザダ平原。中央大陸南東部に広がる広大な平原である。国境がいくつも引かれており、付近では度々紛争が起きている危険な地帯でもある。加えて猛獣も出現する。同じ未開地への土地でも、西方大陸にあったガルバ荒野とは全く異なる場所だ。

「ネヴァン商会の刺客を抜きにしても、普通に危険がある所だな。俺も初めて来たぜ」
「そうなのか。エフィリスは基本的に西方で活動しているんだな」
「まあ、殆どガルバだよ。あそこもまだまだ開拓されてねえ。戦争はねえが怪獣が出るからな。離れられねえんだよ」
「加えて、このゴルザダには『断崖線』がありますからね。新規開拓は難しく、少数の古参のハンターが『断崖越え』に挑戦しているくらいで、トレジャーハンター自体そこまで居ないのです」
「ねえ、『断崖線』って?」

 ここまでは、無事に来れた。何度も馬車を乗り継ぎ、乗り換え、追跡されないようにして。何度も服装を変えたりした。効果があるかは、分からないが。
 平原に着けば、もう乗合馬車は運行していなかった。自分達で馬車を買うか、移動商隊に乗せてもらうしか無い。目的の『断崖線』まで、まだ遠い。

「巨大な垂直の崖です。中央大陸南東部には、『もうひとつ大陸が乗っかっている』ように、遥か高く崖が続いています。公式な情報では、未だ誰も登り切れていません。その上に、また広大な世界が広がっていることは分かっていますが」
「……そうなんだ。どれだけ高いの?」
「分かっていません。雲の向こうまで続いていますから」

 サーガが知識として知っているだけで、一行にとっては全てが初体験の地である。エフィリスなどは先程からずっとにやにやしている。

「最近発明された、『気球』ってのがこれまでの最高度を更新したらしいが、駄目だった。でっかい風船で空を飛ぶ方法だがな、風が激しくなって耐え切れずコントロールが効かなくなっちまうらしい。結局、地道に登るしか無いらしいな。垂直の壁を」
「……楽しそうだな。エフィリス」
「そりゃなあ。俺は『トレジャーハンター』だぜ。未体験のわくわくって奴が止まらねえ。早く着かねえか。なあオルヴァリオ」
「……俺は」
「なんだ、楽しめよ。『一度裏切った俺は旅を楽しむ資格は無い』とか思ってんじゃねえぞ。それはもう終わったんだ。冒険を楽しめトレジャーハンター」
「…………いや。俺はその『断崖線』の上から来たから。わくわくは無いんだ……」
「あ、そっか……」

 エフィリスは、生粋のトレジャーハンターなのだ。未知の冒険ほど楽しいものは無い。恐らくはガルバ荒野を制覇しても、彼の冒険は終わらないだろう。
 今、急に意気消沈したが。

「わくわくも良いが、ここからは気を引き締めて行こう。いつどこで襲われるか分からないぞ」

 そこでクリューがそう言った。

「サスリカは、酷い事はされていないんだな」
「まあな。壊しちゃならねえし。そもそも機械人形相手に尋問も無駄だ。すぐに解かせるように『グレイシア』の近くに居る」
「目的が同じ場所にあるのはこっちにとっても助かるな」
「ねえクリュー」
「なんだ?」

 今から、ネヴァン商会の本拠地からサスリカを救い出し、『氷漬けの美女』を取り返す。だが、そもそもの問題にリディが気付いた。

「サスリカは良いとしてさ。その『グレイシア』は、あたし達だけじゃ到底運べない大きさと重さだけど。どうするの?」

 『氷漬けの美女』を取り返しても、移動できないのだ。彼女を覆う巨大な氷塊は、大人数人がかりでも持ち上がるかどうか。このメンバーでは仮に持ち上がったとしても、ネヴァンの追跡から逃れながらまた『断崖線』を降りなければならない。事実上不可能に近い。

「その場で解かすしか無いだろうな。本当は俺も落ち着いた所でやりたかったが、そうも言っていられない。意識が戻るか、動けるかも分からないが、氷塊より人間の方が運びやすいのは確かだ」
「……なるほどね。エフィリスはそれで良いの?」
「んん……。まあ、奴らの手にあり続けるよりゃマシか」

 逃走の為に、『氷漬けの美女』は『断崖線』の上で解かすことになった。
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