GLACIER(グレイシア)

弓チョコ

文字の大きさ
70 / 99

第70話 烈火の如く

しおりを挟む
「『昇降機』は下からも稼働させることができ、操作方法はオルヴァリオさんが。そして、登った先の目の前に奴らの根城である『古代都市』があります。そして、『直ちに上へ連絡する手段』は、ありません」

 オルヴァリオの話を受けて、サーガが作戦を考える。だが、必要が無ければ作戦は要らない。そもそも、力押しで成功が難しいから作戦を考える必要があるのだ。

「つまり?」
「ゴリ押し速攻。敵は全て切り伏せて『昇降機』を確保。そのまま上へ登り、古代都市へ侵入。『グレイシア』及びサスリカさんを救出。『グレイシア』を解かし、全員で離脱。後はなんとでも」
「ははっ!」

 冷静で聡明なサーガから、力押しのような作戦が出てきた。だがそれは、冷静に考えて最も有効的な手段であるのだ。忍び込むには人数が多く武器も大きい。さらにクリューチームは潜入のスキルも無い。騒ぎを起こせば退路の確保も困難だ。ならば正面から『戦争』を仕掛け、ゴリ押しでまかり通る。
 エフィリスが声を出して笑った。

「良いな! サーガお前分かってるじゃねえか! 阻む全てをねじ伏せて前へ! はっはっは! 良いぜ!」
「ちょっと危険過ぎない? 相手は未知の特級トレジャーの武器をいくつも持ってるのよ」

 リディが至極真当な意見を述べる。

「いや、俺もそれが良いと思う」
「オルヴァリオ?」
「奴らの武器は強力だけど、初見殺しなのは『雷の檻』くらいだ。あとはエフィリスの剣みたいな、『分かりやすい武器』しか無い」
「そうなの?」
「奴らは軍事力の強化より、とにかく『古代遺物』の蒐集を優先していたからな。そもそも居場所を突き止められないから、『直接戦闘』を想定していない」
「なるほど。情報アドバンテージのみで戦いに勝てると傲っているようですね」

 情報は重要だ。天地がひっくり返るほど大事である。それはこれまでの戦いで皆が充分に分かっている。だが。

「この前のドラゴン討伐とここまでの旅で、クリューさん達の実力は分かりましたので。充分行ける作戦です。もう、『慎重』は必要ありません。攻める時は、烈火の如く」
「そ、そうなの……? でも相手は大勢なんじゃ……」
「①昇降機。②『断崖線』着地点。③古代都市内部。④『グレイシア』。……何も大勢と、正面から全員相手にする状況にはなりません。『各所撃破』していけば、戦力の差は覆し得ます。敵の配置と全容が分かったのも、オルヴァリオさんのお陰ですね」

 状況は、刻一刻と変わっていく。それに対応できなくなった者から、脱落していく。

「おう。じゃ見せてやろうぜ。俺達の怒りをよ」
「……!」

 ここまで、最速で来た。オルヴァリオがネヴァン側のままだとして、交渉が成功しようが失敗しようが、そのままであるならもう少し時間が掛かるだろう。つまり、『グレイシア』を解かす為にクリューを連れてくるという任務の成否が報告される前に、ここまでやって来た。報告する役目の者も全て、マルが撃ち殺している。報告が遅いと気付くのは後日だ。今は完全に、油断している筈である。

 町では腹拵えや弾の補給など、諸々の最終調整を行い、その日の夜。町外れにある、商会の建物がある。崖に張った天幕で隠されている場所に、昇降機がある。表向きは普通の商会だ。ネヴァンの文字も無い。怪しまれないように定期的に人の出入りと、カモフラージュの取引が行われている。

「無関係な奴を巻き込む心配もねえって訳だ。さあ行くぜ。派手になァ!」

 エフィリスを先頭に。今回もマルは1キロ離れた狙撃地点から。彼女は今回は、建物から出てきた敵を逃がさず撃ち殺す役割だ。

「オルヴァ。大丈夫か」
「……ああ。しっかりやるさ。見ててくれ、クリュー。俺は挽回する」
「肩肘張っちゃって、全然大丈夫じゃないっつーのよ。あんたやっぱり人殺せないでしょ。無理しなくて良いわ」

 快晴の夜。視界を阻む物が何もない満天の星空に、誰も目を向けず。
 彼らは走り出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

氷結の夜明けの果て (R16)

ウルフィー-UG6
ファンタジー
Edge of the Frozen Dawn(エッジ・オブ・ザ・フローズン・ドーン) よくある異世界転生? 使い古されたテンプレート? ――そうかもしれない。 だが、これはダークファンタジーだ。 恐怖とは、姿を見せた瞬間よりも―― まだ見えぬまま、静かに忍び寄るもの。 穏やかな始まり。ほのかな優しさ。 だが、石の下には、眠る獣がいるかもしれない。 その時が来れば、闇は牙を剥く。 あらすじ 失われた魂――影に見つめられながら。 だが、英雄とは……本当に常に“光”のために戦う者なのか? 異国の大地で、記憶のないまま、見知らぬ身体で目を覚ます。 生き延びようとする本能だけが、彼を前へと突き動かす。 ――英雄か、災厄か。それを分けるのは、ただ一つの選択。 冷たく、謎めいた女戦士アリニアと共に、 彼は武器を鍛え、輝く都市を訪れ、古の森を抜け、忘れられた遺跡へと踏み込んでいく。 だが、栄光へと近づく一歩ごとに、 痛みが、迷いが、そして見えない傷が刻まれていく。 光の道を歩んでいるかのように見えて―― その背後で、影は静かに育ち続けていた。 ――これは、力と希望、そして自ら築き上げる運命の物語。 🔹 広大で容赦のない世界が、挑む者を待ち受ける。 🔹 試練と沈黙の中で絆を深めていく、二人の仲間。 🔹 「居場所」を探す旅路の果てに待つものとは――。 ヴェイルは進む。 その選択はやがて、一つの伝説を生み出すだろう。 それが光か、闇か。――決めるのは、あなた自身だ。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

処理中です...