78 / 99
第78話 ローゼ帝国の怪盗アルコ
しおりを挟む
「せーの♪」
最強の武器。
それが持つべき特徴は何か。少なくとも、このミェシィという少女が振るう大剣『海を割る剣』は、候補に挙がるだろう。ひと振りで、『街』を半壊させる威力がある。
三度、それが振るわれた。建物もその瓦礫も根こそぎ力づくで滅茶苦茶に、更地になった。
「……避けるの上手いねー♪」
額に手を当てて、キョロキョロと見渡す。恐らくサーガにもマルにも、この攻撃は当たらなかった。
「一撃放つごとに大量の砂塵が舞う。その剣の使用者は、自ら視界を遮ってしまうことになる。当たらなければ、それはもう致命的ですよ」
「そこかー♫」
破壊を免れた建物の屋上に、サーガが目立つように立っていた。ミェシィが大剣を構える。地面と屋上で距離があるが、この程度ならば『海を割る剣』の破壊の波は届く。
「せーの♫」
一瞬で、建物は粉々になった。だが寸前で、サーガが飛び上がったのを確認した。またミェシィがキョロキョロする。別の建物に、サーガは居た。
「身軽だねー♪」
「『怪盗アルコ』。一応、帝国首都では名が知られていたんですけどね。貴女は若いですし、知りませんか」
「知らなーい♬ 帝ーこくって、この剣の?」
「その通り。私はローゼ帝国出身なのですよ。サーガ・アルコ。実は生まれは貴族でした。エフィリス達には、内緒ですよ」
ミェシィの持つ『海を割る剣』は、ローゼ帝国から盗まれたものだ。その所持者と戦っていることに、サーガは数奇な運命を感じていた。
「せーの♪」
ズドン。また破壊される。だが、サーガはやはり躱していた。ミェシィの背後の建物の上に飛び移っていた。
「だからかなー? ずっと避けられてるね♬」
「それ、昔私が見付けたトレジャーですからねえ」
「ふーん♪ ……へっ?」
サーガは。
エフィリスが『雇った』と言っていた。エフィリスが、サーガの能力を必要としたのだ。それまでは別にチームではなかった。
「怪盗してましたがヘマをして捕まり、この身軽さを買われて帝国に強制的にトレジャーハンターをさせられていました。斥候としてね。その時のトレジャーです。エフィリスと出会う前ですから、彼も知らないことです。ああ、内緒でお願いしますね」
サーガも、傷だらけである。余裕そうに振る舞っているが、限界寸前だ。もう、そう何度も躱せないだろう。
「ふふーん。でも今はわたしに『適応』してるよ♫ 残念だったね♪」
「(やはり子供。既にもう、マルさんのことは頭から離れている。しかし、まだ引き付ける。完全に隙を見せるまで)」
いくら『適応』しているとは言え。あの剣は使い手も酷く消耗する。サーガはそれを知っているのだ。向こうも避けられると分かって乱発はできない筈。そもそも『一撃必殺』の剣だ。何度も振るうものではない。
「せーの♪」
だが、ミェシィは屈託の無い笑顔を崩さず剣を振るう。自身を省みない攻撃だ。破壊の規模も、徐々に小さくなっている。
「そろそろ疲れてきませんか?」
「なんのっ♫」
さらに追撃。サーガはなんとか直撃を防いだが、破片が背中に当たってしまった。
「……ぐっ」
だが、弱味は見せない。幸い背中なら隠せる。
「……ふぅ。まだまだ行けるよっ♪」
「(ようやく息が切れてきましたか)」
身体はガタガタである。このまま続けていれば、サーガの方が先に潰れるのは確実だ。攻撃をするより、避ける方が不利なのは当然である。1回でも避け損なうと即死するのだから。
「(マルはまだ、複雑な作戦は理解できない。シンプルに、私が囮になるしか無い。これしか無いんです)」
「よいしょっ♫ せーっのっ!」
ミェシィの動きも、段々と遅くなってくる。次の攻撃では威力が殆ど半分程度になった。
「……——!」
だが、サーガも足が限界だった。避け損なってかすってしまい、遂に倒れた。
「(……ここまでですか)」
「よーし♫ やっと当たったぁ! じゃあトドメだね♪」
ミェシィが近付いてくる。その大剣は、何も能力を使わずとも良い。普通に剣として使うだけで強力な凶器だ。
「じゃあねおじさん♫」
無慈悲な笑顔のまま、大剣が振り下ろされた。
「!」
瞬間に。
「——あれ?」
ミェシィの胸から、銃弾が貫通した。
「…………っ!!」
が、剣の勢いは止まらない。サーガを両断しようと、刃が彼の肩に食い込んだ。
最強の武器。
それが持つべき特徴は何か。少なくとも、このミェシィという少女が振るう大剣『海を割る剣』は、候補に挙がるだろう。ひと振りで、『街』を半壊させる威力がある。
三度、それが振るわれた。建物もその瓦礫も根こそぎ力づくで滅茶苦茶に、更地になった。
「……避けるの上手いねー♪」
額に手を当てて、キョロキョロと見渡す。恐らくサーガにもマルにも、この攻撃は当たらなかった。
「一撃放つごとに大量の砂塵が舞う。その剣の使用者は、自ら視界を遮ってしまうことになる。当たらなければ、それはもう致命的ですよ」
「そこかー♫」
破壊を免れた建物の屋上に、サーガが目立つように立っていた。ミェシィが大剣を構える。地面と屋上で距離があるが、この程度ならば『海を割る剣』の破壊の波は届く。
「せーの♫」
一瞬で、建物は粉々になった。だが寸前で、サーガが飛び上がったのを確認した。またミェシィがキョロキョロする。別の建物に、サーガは居た。
「身軽だねー♪」
「『怪盗アルコ』。一応、帝国首都では名が知られていたんですけどね。貴女は若いですし、知りませんか」
「知らなーい♬ 帝ーこくって、この剣の?」
「その通り。私はローゼ帝国出身なのですよ。サーガ・アルコ。実は生まれは貴族でした。エフィリス達には、内緒ですよ」
ミェシィの持つ『海を割る剣』は、ローゼ帝国から盗まれたものだ。その所持者と戦っていることに、サーガは数奇な運命を感じていた。
「せーの♪」
ズドン。また破壊される。だが、サーガはやはり躱していた。ミェシィの背後の建物の上に飛び移っていた。
「だからかなー? ずっと避けられてるね♬」
「それ、昔私が見付けたトレジャーですからねえ」
「ふーん♪ ……へっ?」
サーガは。
エフィリスが『雇った』と言っていた。エフィリスが、サーガの能力を必要としたのだ。それまでは別にチームではなかった。
「怪盗してましたがヘマをして捕まり、この身軽さを買われて帝国に強制的にトレジャーハンターをさせられていました。斥候としてね。その時のトレジャーです。エフィリスと出会う前ですから、彼も知らないことです。ああ、内緒でお願いしますね」
サーガも、傷だらけである。余裕そうに振る舞っているが、限界寸前だ。もう、そう何度も躱せないだろう。
「ふふーん。でも今はわたしに『適応』してるよ♫ 残念だったね♪」
「(やはり子供。既にもう、マルさんのことは頭から離れている。しかし、まだ引き付ける。完全に隙を見せるまで)」
いくら『適応』しているとは言え。あの剣は使い手も酷く消耗する。サーガはそれを知っているのだ。向こうも避けられると分かって乱発はできない筈。そもそも『一撃必殺』の剣だ。何度も振るうものではない。
「せーの♪」
だが、ミェシィは屈託の無い笑顔を崩さず剣を振るう。自身を省みない攻撃だ。破壊の規模も、徐々に小さくなっている。
「そろそろ疲れてきませんか?」
「なんのっ♫」
さらに追撃。サーガはなんとか直撃を防いだが、破片が背中に当たってしまった。
「……ぐっ」
だが、弱味は見せない。幸い背中なら隠せる。
「……ふぅ。まだまだ行けるよっ♪」
「(ようやく息が切れてきましたか)」
身体はガタガタである。このまま続けていれば、サーガの方が先に潰れるのは確実だ。攻撃をするより、避ける方が不利なのは当然である。1回でも避け損なうと即死するのだから。
「(マルはまだ、複雑な作戦は理解できない。シンプルに、私が囮になるしか無い。これしか無いんです)」
「よいしょっ♫ せーっのっ!」
ミェシィの動きも、段々と遅くなってくる。次の攻撃では威力が殆ど半分程度になった。
「……——!」
だが、サーガも足が限界だった。避け損なってかすってしまい、遂に倒れた。
「(……ここまでですか)」
「よーし♫ やっと当たったぁ! じゃあトドメだね♪」
ミェシィが近付いてくる。その大剣は、何も能力を使わずとも良い。普通に剣として使うだけで強力な凶器だ。
「じゃあねおじさん♫」
無慈悲な笑顔のまま、大剣が振り下ろされた。
「!」
瞬間に。
「——あれ?」
ミェシィの胸から、銃弾が貫通した。
「…………っ!!」
が、剣の勢いは止まらない。サーガを両断しようと、刃が彼の肩に食い込んだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
氷結の夜明けの果て (R16)
ウルフィー-UG6
ファンタジー
Edge of the Frozen Dawn(エッジ・オブ・ザ・フローズン・ドーン)
よくある異世界転生?
使い古されたテンプレート?
――そうかもしれない。
だが、これはダークファンタジーだ。
恐怖とは、姿を見せた瞬間よりも――
まだ見えぬまま、静かに忍び寄るもの。
穏やかな始まり。ほのかな優しさ。
だが、石の下には、眠る獣がいるかもしれない。
その時が来れば、闇は牙を剥く。
あらすじ
失われた魂――影に見つめられながら。
だが、英雄とは……本当に常に“光”のために戦う者なのか?
異国の大地で、記憶のないまま、見知らぬ身体で目を覚ます。
生き延びようとする本能だけが、彼を前へと突き動かす。
――英雄か、災厄か。それを分けるのは、ただ一つの選択。
冷たく、謎めいた女戦士アリニアと共に、
彼は武器を鍛え、輝く都市を訪れ、古の森を抜け、忘れられた遺跡へと踏み込んでいく。
だが、栄光へと近づく一歩ごとに、
痛みが、迷いが、そして見えない傷が刻まれていく。
光の道を歩んでいるかのように見えて――
その背後で、影は静かに育ち続けていた。
――これは、力と希望、そして自ら築き上げる運命の物語。
🔹 広大で容赦のない世界が、挑む者を待ち受ける。
🔹 試練と沈黙の中で絆を深めていく、二人の仲間。
🔹 「居場所」を探す旅路の果てに待つものとは――。
ヴェイルは進む。
その選択はやがて、一つの伝説を生み出すだろう。
それが光か、闇か。――決めるのは、あなた自身だ。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります
はぶさん
ファンタジー
ブラック企業で心をすり減らし過労死した俺が、異世界で手にしたのは『ポイント』を貯めてあらゆるものと交換できるスキルだった。
「今度こそ、誰にも搾取されないスローライフを送る!」
そう誓い、辺境の村で農業を始めたはずが、飢饉に苦しむ人々を見過ごせない。前世の知識とポイントで交換した現代の調味料で「奇跡のプリン」を生み出し、村を救った功績は、やがて王都の知るところとなる。
これは、ポイント稼ぎに執着する元社畜が、温かい食卓を夢見るうちに、うっかり世界の謎と巨大な悪意に立ち向かってしまう物語。最強農民の異世界改革、ここに開幕!
毎日二話更新できるよう頑張ります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる