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第84話 クリュー対オルヴァリオ
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世界には色んな人が居る、とは言え。
エヴァルタのように、100年以上生きていて20代の肉体のままの者も居て。
ならば。
古代。1万年前の旧人類には。『心』を原動力に、現実へ物理的な影響を及ぼすような『能力』が備わっていたとしたら。
手から、火が出た者も居たかもしれない。
液体金属を操る者も居たかもしれない。
局所的に地震を起こせたかもしれない。
そんな『能力』を、道具の中に押し込められたかもしれない。それらが科学的に、解明されていたのかもしれない。
当然、対象の精神を操る者だって居るだろう。宗教の祖としてはこれ以上ないほど完全な能力だ。どれだけでも拡大し得る。
逆に。
そんな精神の乗っ取りを、【心を浄化する】能力だって、あった筈だ。
サスリカの記録によると、『シロナ・イケガミ』は某国の姫だった。姫として、いずれ国と民族を率いていく群れのリーダーとして。
相応しい能力が備わっていたのだとしたら。
「…………猊下」
「ん、なんだ? クリューよ」
「これまで、猊下の『精神憑依』で操った者を、この氷塊の前に立たせたことは?」
「む? なんだその質問は。……操ることは殆どしないからな。どこで認識の齟齬や不都合が出るか分からん。乱用は避けているのだ」
「…………なるほど」
止まっていた、指が動く。
瞳の色が、元に戻っていく。
「(やはり好きだ。【心が浄化されて】いく。身体も軽くなってくる。胸が躍る。本当に美しい。安らぐ。君をもう一度見れて良かった。それだけで、無限に力が湧いてくる)」
まずは、その珠を。
「!?」
持つグロリオの手を撃ち抜いた。
「ぎゃっ! ぐおおっ! 手が! なっ! なん!? きさ貴様っ!!」
『ますたー!?』
「そのまま続けろ! サスリカっ!!」
『!』
「ぎゃぁ! がはっ! ぐぅ!」
急所は狙わない。腕と脚を撃ち抜いた。
「殺してやりたいが、拘束する。国際政府に突き出してやる」
「ぐぅう! オル、オルヴァリオ! やれ! もう殺して良いっ!」
「……!」
グロリオは倒れながら、オルヴァリオへ指示を出す。大剣を持ったオルヴァリオが頷いて、クリューの前に立ちはだかる。
「……オルヴァ」
「クリュー……」
ふたりは向かい合う。武器を向け合う。敵として。
——絶対に。万が一でも。何を間違っても。『あたし達に向けない』こと——
「……!」
銃を初めて手にした時。リディから習った時。彼女の言葉が、そこで甦った。
——『銃』っていうのはね。『そういう』武器なの。何かあってからじゃ『取り返しが付かない』のよ——
——ああ。リディにも、勿論オルヴァにも向けない。当然だろ——
「……っ!」
だが。奥歯を噛み締めた。
「……俺は容赦しない。銃は容赦できない。お前が動けなくなるまで、弾を撃ち込むぞ」
「……ああ。安心してくれ。俺も、お前を殺すことまではしない」
ふぅ、と息を吐いた。オルヴァリオが柄を握り締める音がした。
『ますたー! 加勢を』
「要らない。お前は『彼女』の解凍を続けてくれ。今、ここが正念場で時間との勝負だ。一気に片を付けて脱出する」
『…………ハイっ』
ふたりの武器は、特別な能力など無い。どちらもリディのコレクションだったものだ。よく手入れのされた、高級品ではあるが。オルヴァリオの剣は、『上級』に分類されるトレジャーではあるが。
現代科学を超える異能など無い、純粋な剣と、銃だ。
「!」
まだ距離がある。クリューから動いた。
「ちっ」
撃ち放たれた弾丸は、オルヴァリオの剣の腹で受けられ、弾かれた。
「(近付かれたら終わりだ。この距離を保つ!)」
さらに連射する。だがその全てを、オルヴァリオは剣で弾いて防いだ。
こんな剣捌きは初めて見る。バルセスでの時より、うんと強くなっているらしい。
「弾自体は速すぎて見えねえが、お前の視線と銃の向きと指の動きは見えるぜ。クリュー」
「……なるほど」
正面からでは当たらない。今度はオルヴァリオから、距離を詰めて来た。
「っ!」
エヴァルタのように、100年以上生きていて20代の肉体のままの者も居て。
ならば。
古代。1万年前の旧人類には。『心』を原動力に、現実へ物理的な影響を及ぼすような『能力』が備わっていたとしたら。
手から、火が出た者も居たかもしれない。
液体金属を操る者も居たかもしれない。
局所的に地震を起こせたかもしれない。
そんな『能力』を、道具の中に押し込められたかもしれない。それらが科学的に、解明されていたのかもしれない。
当然、対象の精神を操る者だって居るだろう。宗教の祖としてはこれ以上ないほど完全な能力だ。どれだけでも拡大し得る。
逆に。
そんな精神の乗っ取りを、【心を浄化する】能力だって、あった筈だ。
サスリカの記録によると、『シロナ・イケガミ』は某国の姫だった。姫として、いずれ国と民族を率いていく群れのリーダーとして。
相応しい能力が備わっていたのだとしたら。
「…………猊下」
「ん、なんだ? クリューよ」
「これまで、猊下の『精神憑依』で操った者を、この氷塊の前に立たせたことは?」
「む? なんだその質問は。……操ることは殆どしないからな。どこで認識の齟齬や不都合が出るか分からん。乱用は避けているのだ」
「…………なるほど」
止まっていた、指が動く。
瞳の色が、元に戻っていく。
「(やはり好きだ。【心が浄化されて】いく。身体も軽くなってくる。胸が躍る。本当に美しい。安らぐ。君をもう一度見れて良かった。それだけで、無限に力が湧いてくる)」
まずは、その珠を。
「!?」
持つグロリオの手を撃ち抜いた。
「ぎゃっ! ぐおおっ! 手が! なっ! なん!? きさ貴様っ!!」
『ますたー!?』
「そのまま続けろ! サスリカっ!!」
『!』
「ぎゃぁ! がはっ! ぐぅ!」
急所は狙わない。腕と脚を撃ち抜いた。
「殺してやりたいが、拘束する。国際政府に突き出してやる」
「ぐぅう! オル、オルヴァリオ! やれ! もう殺して良いっ!」
「……!」
グロリオは倒れながら、オルヴァリオへ指示を出す。大剣を持ったオルヴァリオが頷いて、クリューの前に立ちはだかる。
「……オルヴァ」
「クリュー……」
ふたりは向かい合う。武器を向け合う。敵として。
——絶対に。万が一でも。何を間違っても。『あたし達に向けない』こと——
「……!」
銃を初めて手にした時。リディから習った時。彼女の言葉が、そこで甦った。
——『銃』っていうのはね。『そういう』武器なの。何かあってからじゃ『取り返しが付かない』のよ——
——ああ。リディにも、勿論オルヴァにも向けない。当然だろ——
「……っ!」
だが。奥歯を噛み締めた。
「……俺は容赦しない。銃は容赦できない。お前が動けなくなるまで、弾を撃ち込むぞ」
「……ああ。安心してくれ。俺も、お前を殺すことまではしない」
ふぅ、と息を吐いた。オルヴァリオが柄を握り締める音がした。
『ますたー! 加勢を』
「要らない。お前は『彼女』の解凍を続けてくれ。今、ここが正念場で時間との勝負だ。一気に片を付けて脱出する」
『…………ハイっ』
ふたりの武器は、特別な能力など無い。どちらもリディのコレクションだったものだ。よく手入れのされた、高級品ではあるが。オルヴァリオの剣は、『上級』に分類されるトレジャーではあるが。
現代科学を超える異能など無い、純粋な剣と、銃だ。
「!」
まだ距離がある。クリューから動いた。
「ちっ」
撃ち放たれた弾丸は、オルヴァリオの剣の腹で受けられ、弾かれた。
「(近付かれたら終わりだ。この距離を保つ!)」
さらに連射する。だがその全てを、オルヴァリオは剣で弾いて防いだ。
こんな剣捌きは初めて見る。バルセスでの時より、うんと強くなっているらしい。
「弾自体は速すぎて見えねえが、お前の視線と銃の向きと指の動きは見えるぜ。クリュー」
「……なるほど」
正面からでは当たらない。今度はオルヴァリオから、距離を詰めて来た。
「っ!」
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